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取り残された者達

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一方、スライム騒動のあったバロウ達のいる屋敷では、シュウ達が逃げ出してからというもの、一瞬だけ怒涛の勢いで白金の騎士団が乗り込んできたが、すぐに騎士達も去ってしまい、辺りはがらんと静寂に包まれた。


「邪魔をしました。それでは失礼」


たった一言。それだけで白金の騎士団はバロウ達には興味を抱かず、颯爽と去っていく。
シュウ達は白金の騎士団にとってお尋ね者だが、それでも帝国が正式に発した指名手配ではない。だからシュウ達が完全に姿を眩ませた今となっては、彼らの身柄を匿っていたことになっているバロウ達も特にお咎めを受けることなく、屋敷は元の平穏を取り戻していた。

白金の騎士団はシュウ達の身柄を抑えたい一方で、他国の地であるこの場では可能な限りトラブルを起こさないよう気を遣ってもいる。シュウ達の追跡以外のことは極力しないようにしているのだ。

白金の騎士団は自分達を相手にしなかったが、彼らが来たことで他なる者・・・例えば自警団などが後からやってこないとも限らない。
今は平穏でいられるが、明日には今度は自分達が追われる立場になるかもしれないと考えると、バロウ達にはぼんやりしている暇などなかった。


「さて・・・」


シュウ達のことで思わぬドタバタがあった。
彼らがどうして追われているのかは気にかかるが、まずは彼らにはやらなければならないことがあった。

バロウもルーシエも病から立ち直った。となると、いつまでもリスクを背負ってまでこの屋敷にいる理由はない。これからの方針を速やかに決めないといけないのだ。


「帝都ではない、どこか人の多く町へ行こう」


バロウが大体の方針を打ち出した。
バロウは領地運営をうまくやっていたが、実は商才もあり、帝都ではそこそこの財を成している。
そこで他人と打ち解けることの出来る『カリスマ』の派生に当たると思われる能力を生かし、客商売を始めれば今いる使用人が路頭に迷わない程度の成功を収めることが出来るのではないか?とバロウは考えていた。
軍資金はバロウがコレクションしていたワインセラーを放出すれば、どうにかなるのではないか?と算段をつける。

ちなみに移動場所に帝都以外を選ぶのは、バロウが『戦争維持派』に狙われた以上、彼らの手が届きづらいところに行く必要があると思ったからである。

バロウは使用人が生活に困らないよう・・・いや、これまで苦労かけた分、それに報いるだけの生活を送らせてやりたかった。
それには財が必要だ。人の多い町では常に金が大きく動く。
手っ取り早く財を成すには、人の多い町で商売をして成功させるしかないだろうとバロウは考えた。

そして大事な娘ルーシエ。
ルーシエはシュウに懸想していることはわかったが、当の彼はお尋ね者・・・そして、既に(飛びきり危ない)恋人がいるようだ。だから彼女の恋は実らないし、実ったところで平穏な生活は送れないだろう。

娘の恋を応援してやりたい気持ちはあったが、新しい生活をすることでまた違う恋を見つけるだろう。バロウはルーシエにはシュウや自分の特殊な能力のことを忘れて、普通に平和に生きてもらいたいと考えていた。

バロウは皆のためと思い、具体的に今後の生活についての計画を練った。
だが、そんな彼とは別にルーシエも使用人達も、それぞれ思い思いに考えごとをしていた。
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