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哀れ白金の騎士 その4
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団長スコーンの暴走にすっかり嫌気がしている白金の騎士団員達は、シュウ達さえ捕まえればこの悪夢も終わると信じ、追跡した騎馬隊の信号弾が最後に打ちあがった方角へ全力へ向かっていた。
その数、会わせて30余り。
30余りの騎馬隊が血眼でシュウ達を追っていた。
走りにくい森の中を下手をすれば大事故になりかねないというのに、クレイジーとも言える速度で馬を走らせたお陰で、最後に信号弾が打ち上げられてからそう時間を置かずに見通しの良い平原まで駆け抜けた。
「お前達も来たか!」
違う隊の騎馬も同じタイミングで森から姿を現した。鎧に木の葉や枝をつけたまま走っているその姿は、普段は白く輝く美しい鎧を着ていることから高潔なイメージを持たせていた白金の騎士ですら小汚く見せている。
だが彼らはそんなことは気にしない。
皆がシュウ達を捕まえるために本気も本気になっており、その執念の賜物により通常では考えられないほどの早い時間で合流を果たしてみせた。
「信号弾があれから上がらないということは、追跡していた連中はやられたということかな」
「だが、それほど時間が経過したわけじゃない。なんとか追いついてみせるさ」
「そうだな、そしてシュウを捕まえ・・・いや、殺す!」
「そうだ殺す!生かしておけば団長がまた何をするかわかったものじゃない!」
テンションが上がっているせいか、唐突に思考が過激になる騎馬隊達。
信号弾がそれまで上がっていた方角からシュウ達の逃走方向を推測し、そこへ向かって全力で駆けていく。
「このまま行けば遠からず追い付くだろう。だが、地図を見るとうまく包囲できそうな場所がこの先にあるようだ。そこを使って万が一にも漏らしがないように仕掛けようじゃないか」
「計算では・・・目標の馬車を先回りすることが出来るはずだ」
「よし、それでいい。今度こそ間違いなく・・・」
「シュウを殺すぞ!」
騎士達は拳をガツンとぶつけ合って、作戦の打ち合わせを終える。
いつの間にかほんのちょっぴりだけ目的が変わっていた。
白金の騎士団騎馬隊30余り・・・
帝国の切り札であり、世界でも最強と称される彼らは、今たった二人の人間のために死力を尽くしていた。
国の存亡を脅かす強大な魔物すら退ける存在が、たった一人の男のために血眼になっている。
捕まえても良し、逃げられてもそれはそれで妄想が捗るから良し、のスコーンよりも実は執着は強いかもしれない。
一旦脅威は去ったと胸を撫でおろしているシュウには、今自分の知らぬところで恐ろしくヘイトを買っていることを知らない。
ぞぞぞぞぞぞっ
「うっ・・・!」
「どうしました?シュウ様」
「も、猛烈に悪寒が・・・」
その頃シュウは、突然襲った体を震わせるほどの強烈な悪寒に戸惑っていた。
恐らく帝国からの追跡はされない・・・
されたとしてもどうにか躱せる程度のものだろう・・・
フローラのそんな甘い目論見は、脆くも崩れていたのであった。
その数、会わせて30余り。
30余りの騎馬隊が血眼でシュウ達を追っていた。
走りにくい森の中を下手をすれば大事故になりかねないというのに、クレイジーとも言える速度で馬を走らせたお陰で、最後に信号弾が打ち上げられてからそう時間を置かずに見通しの良い平原まで駆け抜けた。
「お前達も来たか!」
違う隊の騎馬も同じタイミングで森から姿を現した。鎧に木の葉や枝をつけたまま走っているその姿は、普段は白く輝く美しい鎧を着ていることから高潔なイメージを持たせていた白金の騎士ですら小汚く見せている。
だが彼らはそんなことは気にしない。
皆がシュウ達を捕まえるために本気も本気になっており、その執念の賜物により通常では考えられないほどの早い時間で合流を果たしてみせた。
「信号弾があれから上がらないということは、追跡していた連中はやられたということかな」
「だが、それほど時間が経過したわけじゃない。なんとか追いついてみせるさ」
「そうだな、そしてシュウを捕まえ・・・いや、殺す!」
「そうだ殺す!生かしておけば団長がまた何をするかわかったものじゃない!」
テンションが上がっているせいか、唐突に思考が過激になる騎馬隊達。
信号弾がそれまで上がっていた方角からシュウ達の逃走方向を推測し、そこへ向かって全力で駆けていく。
「このまま行けば遠からず追い付くだろう。だが、地図を見るとうまく包囲できそうな場所がこの先にあるようだ。そこを使って万が一にも漏らしがないように仕掛けようじゃないか」
「計算では・・・目標の馬車を先回りすることが出来るはずだ」
「よし、それでいい。今度こそ間違いなく・・・」
「シュウを殺すぞ!」
騎士達は拳をガツンとぶつけ合って、作戦の打ち合わせを終える。
いつの間にかほんのちょっぴりだけ目的が変わっていた。
白金の騎士団騎馬隊30余り・・・
帝国の切り札であり、世界でも最強と称される彼らは、今たった二人の人間のために死力を尽くしていた。
国の存亡を脅かす強大な魔物すら退ける存在が、たった一人の男のために血眼になっている。
捕まえても良し、逃げられてもそれはそれで妄想が捗るから良し、のスコーンよりも実は執着は強いかもしれない。
一旦脅威は去ったと胸を撫でおろしているシュウには、今自分の知らぬところで恐ろしくヘイトを買っていることを知らない。
ぞぞぞぞぞぞっ
「うっ・・・!」
「どうしました?シュウ様」
「も、猛烈に悪寒が・・・」
その頃シュウは、突然襲った体を震わせるほどの強烈な悪寒に戸惑っていた。
恐らく帝国からの追跡はされない・・・
されたとしてもどうにか躱せる程度のものだろう・・・
フローラのそんな甘い目論見は、脆くも崩れていたのであった。
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