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哀れ白金の騎士 その3

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「お・・・あが・・・?」


フローラは肉体強化魔法によって自身の筋力を強化し、騎士の腕を捩じ上げ・・・いや、ねじ切らんばかりに破壊する。
かつてフローラの胸を触ろうとしたアポロがやられたように、彼女に手を添えられた白金の騎士の腕はひしゃげてしまっていた。
あまりに壮絶な出来事に、当のやられた騎士も何が起きたのか理解が及んでいない。


「のぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!?」


懸想していた女性に手を添えられてときめいていたら、次の瞬間には自分の腕が無惨にボロクズになっていた・・・精神的ショックと、なにより物理的な痛みで騎士は地獄の底から響くような叫びを上げる。
百戦錬磨の白金の騎士とて、流石にこのような状況には耐性が無かった。


「よいしょ」


そしてフローラはそのまま激痛に震えている騎士を抱え、難なく馬車から投げ落とす。

ぽいっ


ズシャッ


投げ落とされた騎士は走行中の馬車から投げ落とされ、激しく地面に体を打ち付けた。それを見てフローラは当面は追っては来られないだろうとホッと胸を撫でおろす。


「シュウ様!関節技なら普通に効きますよ!」


唖然としているシュウ達に対し、フローラは満面の笑顔になってそう言った。


「それは決して関節技ではないような・・・」


呆れて言いながらも、シュウは目の前に騎士に意識を戻す。
一方で、その騎士もシュウの攻撃によって飛ばされたかけた意識を取り戻したようだった。


「死ね!」


白金の騎士らしからぬ物言いとしながら、持っていた短刀でシュウの脳天を突き刺そうとするのをシュウが受け止める。


「むっ・・・!」


組みあってわかる白金の騎士の圧倒的な筋力。
滅多に動かないことで有用性と実力が帝国民から疑問視されている白金の騎士団だが、それでも過酷な訓練により身に着けた筋力は本物だった。
だが、今の騎士の力の根源は訓練によるそれだけではない。


「お前さえ死ねば!お前さえ死ねば団長は、俺達は元の生活に・・・!!」


目を血走せながら異常なまでの執念を見せ、どうにか自分に刃を突き立てようとする騎士を見て、そのあまりの強烈なヘイトにシュウは唖然とする。
シュウに対する恨みつらみがこの騎士の力の原動力の多くを占めていた。


(なんという執念!まさかここまでとは)


団長というのはスコーンのことか?これだけ執拗に恨みを買うとは、あれに一体何が起きたというのだ?と気にはなるが、だからといってむざむざ突き刺されるわけにもいかない。
シュウは力押しで迫る騎士の手首を取り、ねじり上げる。


「ぐっ・・・!」


そのまま絡みつき、一気に腕を捕ってシュウは関節をキメた。


「ぐ、ぐぐっ・・・」


シュウの技から逃げることも出来ず、やがて泡を吹いて失神する騎士。
無敵の鎧をもってしても関節技を防ぐことは不可能だった。


「やりましたね、シュウ様!」


勝負がついてホッとしたフローラが破顔した。
これで騎士を馬車から投げ落とせば一旦は追跡者を一掃できるので瞬間的余裕が生じるのだが、シュウはそうしなかった。


「フローラ。この騎士を魔法で眠らせてください。意思の無い今でしたら、魔法防御も効かずに術にハマることでしょうから」


「え、はい、わかりました」


魔力に余裕のあるフローラに頼み、シュウは騎士を魔法で眠らせた。
フローラの魔法は強力だ。意識を失って魔法防御の働かない騎士は、深い深い眠りにつくことになった。何をされても起きることはない。

それからシュウは眠りについた騎士の鎧を慎重に脱がしていった。


「シュウ様・・・そんな身に着けているものを脱がして、まさかこんなところで男性の方とおたのしみを・・・?そんなことでしたら、私がシュウ様のお相手を・・・」


「違います」


あらぬ勘違いをしているフローラの前で、シュウは淡々と騎士の鎧を剥いでいく。
多少手こずったが、数分後には騎士の鎧は全て剥がされた。


「この鎧をどうするんですか?」


「またやりあうことがあるかもしれませんから、それまでに鎧について研究するのです。もしかしたら弱点くらいはあるかもしれません」


フローラの質問にそう答えると、シュウは生身になった騎士を荷室から外へ投げ捨てる。


ポイッ


グシャッ


捨てたときに当たり所が悪いのか嫌な音がしてシュウは微妙な気持ちになったが、自分の命を狙おうとした相手なので仕方がないと言い聞かせた。
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