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哀れ先遣隊 その3

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「大変です。すぐに知らせないと・・・!」


小窓を閉めたメイドは、白金の騎士団がシュウ達の捜索をしていると思われているという事実を伝えようとすぐさま話し合いをしているバロウ達のいる部屋へ向かう。
その間は何があろうとも扉を開けてはいけないと使用人達は考え、万が一に備えて身構えていた。

しかし


ドォォォォン


それは一瞬のことだった。
元は貴族用の別荘ということで正面玄関の扉はそこそこ頑丈に作られているはずなのだが、その扉が鍵をかけたままだというのに力づくで打ち破られた。
「この屋敷に目標有り」そう判断した先遣隊は強硬捜査を決断したのだ。


「バカなっ!?」


全く想像していなかったわけではないが、まさかの事態に使用人達は唖然とする。
しかし無情にも彼らが驚いている間にも事態は動いていた。


「突入!」


先遣隊による突入。
頑強であるはずの扉は、先遣隊の騎士のタックル一つで打ち破られた。

強靭な肉体を持ちながら、最強と呼ばれる鎧を身に纏う白金を騎士の進撃はあらゆる障害をも無に帰してしまう。
ドラゴンの炎であろうが、魔獣の群れの突進だろうが、あらゆる障害を力づくで突破するだけの胆力と肉体を兼ね備えているのが白金の騎士団なのだ。彼らが突入を決断すれば、貴族用別荘の少しばかり頑丈な扉などで止められるはずもない。


「ひいっ」


そして、そんな白金の騎士を使用人達が抑えられるはずもない。
彼らは騎士の気迫に一瞬にして心を折られ、抵抗する素振りを一切見せることなく佇んでいた。
とはいえ、仮に騎士の前に立ちはだかったところで、秒で排除されてしまうだろう。


「俺はここを確保しておく。目標を見つけ次第合図を送るように」


先遣隊の隊長は玄関口で待機、他三人が散開して屋敷の捜索を開始した。
騎士の一人が呆然とする使用人達を無視してズンズンと突き進み、やがてバロウ達のいる部屋の前へ辿り着く。


「な、なんですか貴方達はっ!?」


「部屋に誰も通さないように」と言いつけられて部屋の前でぼうっとしていた使用人の男は、突如現れた白金の騎士に勇敢にも立ち塞がった。
腕が折れたままであるが、それでも屋敷で一番ガタイの良い男であり、白金の騎士を凌駕する体格をしていた。彼が本気で抵抗すれば並の冒険者程度ならいくらか時間稼ぎは出来そうなものだったが・・・


「失礼」


「あんっ」


だが、そんな彼ですら白金の騎士は片手で簡単に押しのけてしまう。使用人の巨体は甘い声とともにあっさりと弾き飛ばされてしまった。


(ここか・・・?)


屋敷で唯一部屋の前にガードが立っているこの部屋を見て、もしや目標であるシュウ達がいるのでは?と、この騎士は狙いをつけた。
扉のノブに手をかけるが、何故かノブはピクリとも動かない。だが、騎士はすぐに原因を理解した。


「結界魔法か」


しっかり目を凝らさないと見えなかったが、扉の表面全体をコーテイングするように結界魔法が張られていた。
薄く、強靭に、このような高度な結界を張られる人間は早々いるものではない。恐らくはフローラなのではないかと考えられ、ますますここにシュウ達がいるのではと騎士は確信した。


「やれやれ、思ったよりも早く終わりそうだな」


フローラ捜索が長引くことを懸念していた騎士は、早期解決が見えたこの状況でむしろ少しばかり嬉しそうに声を弾ませる。
そんな彼はおもむろに鞘から剣を抜き、そして大きく振りかぶると、それを思いっきり部屋の扉に振り下ろした。


パキーン


武器の表面に専用設計で練られた魔力を覆わせることで攻撃力を高め、いかなる結界をも打ち破ることに特化させた『結界壊し』と呼ばれる技を騎士は使い、フローラの展開させていた結界を破壊した。
白金の騎士はフローラが本気で展開させた結界ならば難しいが、時間をかけず発動させたような簡易的な結界であれば、それを打ち破る力くらいは持っている。


「おい!目標がここいるぞ!すぐに集まれ!」


結界まで展開していたのなら、ここにいるのは疑いようがない。そう確信した騎士は散開して捜索していた他の騎士二名を呼びつけ、体勢を整えてから突入を開始した。
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