158 / 464
煮え切らぬ終わり
しおりを挟む
「お、お嬢様!私達はっ・・・!」
アモンが消え、場に静粛が訪れると、我に返ったようにバフォメット達はルーシエの元に駆け寄った。
「今は何も言わなくていいわ。『箝口の制約』を自らの意志で破れば、貴方達の命がないのかもしれないのでしょう?それなら、私から質問する形をとって、貴方達から聞きたいことを聞くことにします。それなら、先ほどのアモンという者の言う通りなら、貴方達が死ぬことはないのだから」
「お、お嬢様・・・」
「こんな裏切った私達何かのためにお情けを・・・申し訳ありません」
バフォメット達はルーシエの前に跪いて頭を垂れる。
美しい主従の姿は、見る者の涙を誘っていた。一人を除いては。
「あの、取り込み中申し訳ありませんが」
シュウが横から真顔でスッと現れると、バフォメットもジャヒーも「ひいっ」と悲鳴を上げて後ずさる。
バフォメット達からすると、シュウは散々情け容赦なく自分達をいたぶった悪魔のような男なのだから当然だった。
「すみません許してください!何でもしますから!」
「も、もう殴らないで・・・!」
バフォメット達が平身低頭でシュウにそう訴えかけてくる。
まるで自分が悪いことをしてしまったみたいで、シュウはなんだか居心地が悪くなった。いくらか傷は再生しているようだが、バフォメットは生えていた角が一本折れ、ジャヒーは全身がボロボロの状態だ。
「シュウ様。バフォメット達といろいろあったことについてはお察しします。ですが、おっしゃりたいこともありますでしょうが、どうか彼らを許して差し上げるわけにはいきませんでしょうか?」
ルーシエがシュウの前に立ちはだかるようにしてそう言うと、バフォメット達は「お嬢様ぁ」と声を上げながら涙を流し始める。
ますますもってシュウが悪役であるかのような、微妙な流れになってしまっていた。
「別に彼らがもう何もしないというのなら、私は手を出しませんよ。大体、貴方が言えば私だって大人しくさせられてしまうでしょうから」
シュウは溜め息をつきながら、そう言って頭をかいた。
バフォメット達の監視役?とされるアモンには、既に機密に関わったシュウの存在については知られ、ついでに恨みまで買ってしまっている。無理にバフォメット達を始末したところで、もうとっくに面倒事を引き寄せてしまっているから後の祭りなのだ。
そのことを思えば、本音としては彼らのために自分の面倒ごとが起きたことは事実なので、そのことについて少しでも憂さ晴らしさせてもらいたいという気持ちはあるのだが・・・
「そうですか。ありがとうございますシュウ様」
シュウが手出ししないことを確認したルーシエは、恭しく礼をして礼の言葉を述べる。従者のために頭を下げる姿に、流石にシュウも食い下がる気が起きない。
「とんでもないことになってしまいましたよ?スライム。このやるせなさは貴方で解消させてもらってもいいですか?」
シュウは懐にしまっていたスライム入りの瓶を取り出し、虚ろな瞳で口角を上げながらそう呟いた。瓶の中のスライムが「ひぃっ!私は関係ないじゃないですか!」と叫んだような・・・そんな気がした。
「おーい!手が空いてる人は消火作業手伝ってくれ!!」
アモンの登場により、更に場が滅茶苦茶になっていたが、今現在屋敷は燃えている最中であったことを、ようやくその場にいた者達が思い出した。
「ほらほら、元は貴方達が付けた火でしょうが。さっさと消火してきなさい」
シュウがドカッとバフォメットの背中を蹴っ飛ばし、消火作業に加わるように促すと「は、はいぃぃぃ!」と大声を上げながら大慌てで火災現場へと走って行く。
「うおっ!?羊ぃ!!??」
「なんじゃこりゃ!」
「きゃあああ来ないでぇぇぇぇぇ!!」
バフォメットの魔人化を知らぬ消火作業班は、突如現れた羊頭の怪物が登場したことで阿鼻叫喚の巷と化していた。
アモンが消え、場に静粛が訪れると、我に返ったようにバフォメット達はルーシエの元に駆け寄った。
「今は何も言わなくていいわ。『箝口の制約』を自らの意志で破れば、貴方達の命がないのかもしれないのでしょう?それなら、私から質問する形をとって、貴方達から聞きたいことを聞くことにします。それなら、先ほどのアモンという者の言う通りなら、貴方達が死ぬことはないのだから」
「お、お嬢様・・・」
「こんな裏切った私達何かのためにお情けを・・・申し訳ありません」
バフォメット達はルーシエの前に跪いて頭を垂れる。
美しい主従の姿は、見る者の涙を誘っていた。一人を除いては。
「あの、取り込み中申し訳ありませんが」
シュウが横から真顔でスッと現れると、バフォメットもジャヒーも「ひいっ」と悲鳴を上げて後ずさる。
バフォメット達からすると、シュウは散々情け容赦なく自分達をいたぶった悪魔のような男なのだから当然だった。
「すみません許してください!何でもしますから!」
「も、もう殴らないで・・・!」
バフォメット達が平身低頭でシュウにそう訴えかけてくる。
まるで自分が悪いことをしてしまったみたいで、シュウはなんだか居心地が悪くなった。いくらか傷は再生しているようだが、バフォメットは生えていた角が一本折れ、ジャヒーは全身がボロボロの状態だ。
「シュウ様。バフォメット達といろいろあったことについてはお察しします。ですが、おっしゃりたいこともありますでしょうが、どうか彼らを許して差し上げるわけにはいきませんでしょうか?」
ルーシエがシュウの前に立ちはだかるようにしてそう言うと、バフォメット達は「お嬢様ぁ」と声を上げながら涙を流し始める。
ますますもってシュウが悪役であるかのような、微妙な流れになってしまっていた。
「別に彼らがもう何もしないというのなら、私は手を出しませんよ。大体、貴方が言えば私だって大人しくさせられてしまうでしょうから」
シュウは溜め息をつきながら、そう言って頭をかいた。
バフォメット達の監視役?とされるアモンには、既に機密に関わったシュウの存在については知られ、ついでに恨みまで買ってしまっている。無理にバフォメット達を始末したところで、もうとっくに面倒事を引き寄せてしまっているから後の祭りなのだ。
そのことを思えば、本音としては彼らのために自分の面倒ごとが起きたことは事実なので、そのことについて少しでも憂さ晴らしさせてもらいたいという気持ちはあるのだが・・・
「そうですか。ありがとうございますシュウ様」
シュウが手出ししないことを確認したルーシエは、恭しく礼をして礼の言葉を述べる。従者のために頭を下げる姿に、流石にシュウも食い下がる気が起きない。
「とんでもないことになってしまいましたよ?スライム。このやるせなさは貴方で解消させてもらってもいいですか?」
シュウは懐にしまっていたスライム入りの瓶を取り出し、虚ろな瞳で口角を上げながらそう呟いた。瓶の中のスライムが「ひぃっ!私は関係ないじゃないですか!」と叫んだような・・・そんな気がした。
「おーい!手が空いてる人は消火作業手伝ってくれ!!」
アモンの登場により、更に場が滅茶苦茶になっていたが、今現在屋敷は燃えている最中であったことを、ようやくその場にいた者達が思い出した。
「ほらほら、元は貴方達が付けた火でしょうが。さっさと消火してきなさい」
シュウがドカッとバフォメットの背中を蹴っ飛ばし、消火作業に加わるように促すと「は、はいぃぃぃ!」と大声を上げながら大慌てで火災現場へと走って行く。
「うおっ!?羊ぃ!!??」
「なんじゃこりゃ!」
「きゃあああ来ないでぇぇぇぇぇ!!」
バフォメットの魔人化を知らぬ消火作業班は、突如現れた羊頭の怪物が登場したことで阿鼻叫喚の巷と化していた。
0
お気に入りに追加
206
あなたにおすすめの小説
実力を隠し「例え長男でも無能に家は継がせん。他家に養子に出す」と親父殿に言われたところまでは計算通りだったが、まさかハーレム生活になるとは
竹井ゴールド
ライト文芸
日本国内トップ5に入る異能力者の名家、東条院。
その宗家本流の嫡子に生まれた東条院青夜は子供の頃に実母に「16歳までに東条院の家を出ないと命を落とす事になる」と予言され、無能を演じ続け、父親や後妻、異母弟や異母妹、親族や許嫁に馬鹿にされながらも、念願適って中学卒業の春休みに東条院家から田中家に養子に出された。
青夜は4月が誕生日なのでギリギリ16歳までに家を出た訳だが。
その後がよろしくない。
青夜を引き取った田中家の義父、一狼は53歳ながら若い妻を持ち、4人の娘の父親でもあったからだ。
妻、21歳、一狼の8人目の妻、愛。
長女、25歳、皇宮警察の異能力部隊所属、弥生。
次女、22歳、田中流空手道場の師範代、葉月。
三女、19歳、離婚したフランス系アメリカ人の3人目の妻が産んだハーフ、アンジェリカ。
四女、17歳、死別した4人目の妻が産んだ中国系ハーフ、シャンリー。
この5人とも青夜は家族となり、
・・・何これ? 少し想定外なんだけど。
【2023/3/23、24hポイント26万4600pt突破】
【2023/7/11、累計ポイント550万pt突破】
【2023/6/5、お気に入り数2130突破】
【アルファポリスのみの投稿です】
【第6回ライト文芸大賞、22万7046pt、2位】
【2023/6/30、メールが来て出版申請、8/1、慰めメール】
【未完】
病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない
月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。
人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。
2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事)
。
誰も俺に気付いてはくれない。そう。
2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。
もう、全部どうでもよく感じた。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
幼馴染と話し合って恋人になってみた→夫婦になってみた
久野真一
青春
最近の俺はちょっとした悩みを抱えている。クラスメート曰く、
幼馴染である百合(ゆり)と仲が良すぎるせいで付き合ってるか気になるらしい。
堀川百合(ほりかわゆり)。美人で成績優秀、運動完璧だけど朝が弱くてゲーム好きな天才肌の女の子。
猫みたいに気まぐれだけど優しい一面もあるそんな女の子。
百合とはゲームや面白いことが好きなところが馬が合って仲の良い関係を続けている。
そんな百合は今年は隣のクラス。俺と付き合ってるのかよく勘ぐられるらしい。
男女が仲良くしてるからすぐ付き合ってるだの何だの勘ぐってくるのは困る。
とはいえ。百合は異性としても魅力的なわけで付き合ってみたいという気持ちもある。
そんなことを悩んでいたある日の下校途中。百合から
「修二は私と恋人になりたい?」
なんて聞かれた。考えた末の言葉らしい。
百合としても満更じゃないのなら恋人になるのを躊躇する理由もない。
「なれたらいいと思ってる」
少し曖昧な返事とともに恋人になった俺たち。
食べさせあいをしたり、キスやその先もしてみたり。
恋人になった後は今までよりもっと楽しい毎日。
そんな俺達は大学に入る時に籍を入れて学生夫婦としての生活も開始。
夜一緒に寝たり、一緒に大学の講義を受けたり、新婚旅行に行ったりと
新婚生活も満喫中。
これは俺と百合が恋人としてイチャイチャしたり、
新婚生活を楽しんだりする、甘くてほのぼのとする日常のお話。
美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった
ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます!
僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか?
『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる