156 / 452
滑稽なるアモン
しおりを挟む
「き、貴様ぁぁぁ~~」
シュウにぶん殴られ床を転げ回ったアモンは、すぐに身を起こすと怨嗟を声を上げながら睨みつける。
「ひっ!謝ったじゃないですか・・・」
居抜かれたシュウはあまりの威圧感に思わずビビってしまうが
「アモンさん!大人しくしてください!!」
「あ、はい」
ルーシエに言われると、反射的にアモンはビクッと体を震わせながら大人しくなった。
「ば・・・馬鹿な・・・!」
ルーシエに言うことに従うつもりなど全くない。それなのに体は言うことを自分の言うことを聞かずに、ルーシエに言われるがままになっている現状に理解が追い付かないアモンは、僅かにだが狼狽えたような表情を見せた。
(これは・・・想像以上に恐ろしいものかもしれない)
シュウはルーシエに逆らえずにいるアモンを見て、背筋に冷たい水が流れたような気分になる。
アモンはこれまでシュウが出会ってきたどの魔族よりも強力であり、魔人化したバフォメット達とて到底比較にならない脅威であった。だが、そんなアモンですら強制的に従えてしまうルーシエを見て、「この人誰でも従えてしまうのではないだろうか」と考えたのだ。
実際にルーシエの能力を体験しただけになおの事だった。
「何故だ・・・!何故俺の体は動かないんだ・・・!」
アモンは歯ぎしりしながら、必死に体を動かそうのしているようだが、それでも悔しそうに僅かに表情を歪めるばかりで体は動かせないようだった。
「あっ」
ふと見ると、アモンの綺麗な顔に火傷のような跡がついているのをシュウは発見した。その箇所はシュウが殴った左頬であるが、全力で拳に込めた聖の力が毒となり、アモンの肌を侵蝕して爛れさせている。
「おのれぇぇぇ!俺にここまでの恥を晒させるとは、ただでは済まさんぞ貴様!散々いたぶって地獄の苦しみを味わわせてから、最後に手足を一つ一つもいで泣き喚かせた後にたっぷり時間をかけて殺してやる!」
小者くさいアモンの怨嗟の言葉に、シュウは背筋がゾッとした。
「私のせいではないのですけど!?」と叫びたいところだが、まさかいたいけな少女であるルーシエを差し出して「彼女が全面的に悪いのです。恨むなら彼女をどうぞ」などとカッコ悪いことを言えるはずもない。
「アモンさん。大人しくしてください。余計なことを言うのも禁止です」
「あ、はい」
怨嗟の言葉を投げかけていたアモンは、ルーシエにそう言われただけでスッと憑き物が落ちたかのように大人しくなる。
目が先ほどのジャヒーのように焦点がどこか曖昧になり、どこか自我を持たぬ人形にようになった。
が、アモンはそこでハッと一瞬で我に返り、慌てたように首をブンブンと力いっぱい横に振って意識を保つ。
「はぁっ!あ、危なかった!意識を持っていかれるところだった!」
息も荒く、アモンはルーシエの支配から逃れた。しかし
「いいからまずは落ち着いてください!」
「あ、はい」
再度ルーシエが言うと、アモンは再び目の焦点が合わなくなり・・・
「って、もういい!」
またも強引に意識を取り戻したアモンは、今度はその場から飛びのいて一気にルーシエから距離を取った。
「ざっこ」
「なんだあれ、馬鹿じゃねーの?」
それを見ていた使用人達はアモンを嘲笑する。
ルーシエを前に、一人で何やら滑稽なことをやっているので無理もない。
「・・・プッ・・・ククッ」
バフォメットも顔を背けながら「笑っちゃいけないんだけど笑っちゃう」と言わんばかりに噴き出している。
嘲笑の的になっているアモンは、怒りでプルプル震えながらも、それでもどうにか抑え込んだのか、「フッ」と笑みを浮かべ、気丈に大物ぶった態度を取り繕ってみせた。今更であるが。
「なるほど、どういうことかわかったぞ」
ルーシエに視線を向けながら、アモンは言った。
「お前は高位の魔族か、もしくは神族だな?」
シュウにぶん殴られ床を転げ回ったアモンは、すぐに身を起こすと怨嗟を声を上げながら睨みつける。
「ひっ!謝ったじゃないですか・・・」
居抜かれたシュウはあまりの威圧感に思わずビビってしまうが
「アモンさん!大人しくしてください!!」
「あ、はい」
ルーシエに言われると、反射的にアモンはビクッと体を震わせながら大人しくなった。
「ば・・・馬鹿な・・・!」
ルーシエに言うことに従うつもりなど全くない。それなのに体は言うことを自分の言うことを聞かずに、ルーシエに言われるがままになっている現状に理解が追い付かないアモンは、僅かにだが狼狽えたような表情を見せた。
(これは・・・想像以上に恐ろしいものかもしれない)
シュウはルーシエに逆らえずにいるアモンを見て、背筋に冷たい水が流れたような気分になる。
アモンはこれまでシュウが出会ってきたどの魔族よりも強力であり、魔人化したバフォメット達とて到底比較にならない脅威であった。だが、そんなアモンですら強制的に従えてしまうルーシエを見て、「この人誰でも従えてしまうのではないだろうか」と考えたのだ。
実際にルーシエの能力を体験しただけになおの事だった。
「何故だ・・・!何故俺の体は動かないんだ・・・!」
アモンは歯ぎしりしながら、必死に体を動かそうのしているようだが、それでも悔しそうに僅かに表情を歪めるばかりで体は動かせないようだった。
「あっ」
ふと見ると、アモンの綺麗な顔に火傷のような跡がついているのをシュウは発見した。その箇所はシュウが殴った左頬であるが、全力で拳に込めた聖の力が毒となり、アモンの肌を侵蝕して爛れさせている。
「おのれぇぇぇ!俺にここまでの恥を晒させるとは、ただでは済まさんぞ貴様!散々いたぶって地獄の苦しみを味わわせてから、最後に手足を一つ一つもいで泣き喚かせた後にたっぷり時間をかけて殺してやる!」
小者くさいアモンの怨嗟の言葉に、シュウは背筋がゾッとした。
「私のせいではないのですけど!?」と叫びたいところだが、まさかいたいけな少女であるルーシエを差し出して「彼女が全面的に悪いのです。恨むなら彼女をどうぞ」などとカッコ悪いことを言えるはずもない。
「アモンさん。大人しくしてください。余計なことを言うのも禁止です」
「あ、はい」
怨嗟の言葉を投げかけていたアモンは、ルーシエにそう言われただけでスッと憑き物が落ちたかのように大人しくなる。
目が先ほどのジャヒーのように焦点がどこか曖昧になり、どこか自我を持たぬ人形にようになった。
が、アモンはそこでハッと一瞬で我に返り、慌てたように首をブンブンと力いっぱい横に振って意識を保つ。
「はぁっ!あ、危なかった!意識を持っていかれるところだった!」
息も荒く、アモンはルーシエの支配から逃れた。しかし
「いいからまずは落ち着いてください!」
「あ、はい」
再度ルーシエが言うと、アモンは再び目の焦点が合わなくなり・・・
「って、もういい!」
またも強引に意識を取り戻したアモンは、今度はその場から飛びのいて一気にルーシエから距離を取った。
「ざっこ」
「なんだあれ、馬鹿じゃねーの?」
それを見ていた使用人達はアモンを嘲笑する。
ルーシエを前に、一人で何やら滑稽なことをやっているので無理もない。
「・・・プッ・・・ククッ」
バフォメットも顔を背けながら「笑っちゃいけないんだけど笑っちゃう」と言わんばかりに噴き出している。
嘲笑の的になっているアモンは、怒りでプルプル震えながらも、それでもどうにか抑え込んだのか、「フッ」と笑みを浮かべ、気丈に大物ぶった態度を取り繕ってみせた。今更であるが。
「なるほど、どういうことかわかったぞ」
ルーシエに視線を向けながら、アモンは言った。
「お前は高位の魔族か、もしくは神族だな?」
0
お気に入りに追加
201
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
大好きな彼女を学校一のイケメンに寝取られた。そしたら陰キャの僕が突然モテ始めた件について
ねんごろ
恋愛
僕の大好きな彼女が寝取られた。学校一のイケメンに……
しかし、それはまだ始まりに過ぎなかったのだ。
NTRは始まりでしか、なかったのだ……
[完結済み]男女比1対99の貞操観念が逆転した世界での日常が狂いまくっている件
森 拓也
キャラ文芸
俺、緒方 悟(おがた さとる)は意識を取り戻したら男女比1対99の貞操観念が逆転した世界にいた。そこでは男が稀少であり、何よりも尊重されていて、俺も例外ではなかった。
学校の中も、男子生徒が数人しかいないからまるで雰囲気が違う。廊下を歩いてても、女子たちの声だけが聞こえてくる。まるで別の世界みたいに。
そんな中でも俺の周りには優しいな女子たちがたくさんいる。特に、幼馴染の美羽はずっと俺のことを気にかけてくれているみたいで……
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
【R18】僕の筆おろし日記(高校生の僕は親友の家で彼の母親と倫ならぬ禁断の行為を…初体験の相手は美しい人妻だった)
幻田恋人
恋愛
夏休みも終盤に入って、僕は親友の家で一緒に宿題をする事になった。
でも、その家には僕が以前から大人の女性として憧れていた親友の母親で、とても魅力的な人妻の小百合がいた。
親友のいない家の中で僕と小百合の二人だけの時間が始まる。
童貞の僕は小百合の美しさに圧倒され、次第に彼女との濃厚な大人の関係に陥っていく。
許されるはずのない、男子高校生の僕と親友の母親との倫を外れた禁断の愛欲の行為が親友の家で展開されていく…
僕はもう我慢の限界を超えてしまった… 早く小百合さんの中に…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる