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「お、おいジャヒー!お前どうしてそれを・・・」
いつの間にか意識を取り戻したと思われるバフォメットが、慌てた様子でジャヒーの名を呼ぶ。
(えっ!じゃあ本当に・・・?)
バフォメットの様子から、シュウはジャヒーがルーシエに答えた内容が嘘ではないということを確信する。
(そんなバカな・・・!?)
あれだけ渋っていた質問に対し、あっさり答えてしまったことが信じられなかった。
「箝口の制約・・・だっけ?なんか違ったみたいだな・・・」
「普通に質問に答えてるもんな」
「あの人、なんか知ったかで確信めいて言ってたけど、外しちゃったね・・・」
「ダサ・・・」
「おい、あまり可哀想な目で見てやるなよ。本人だって惨めでならないだろうからさ・・・」
周囲にいる使用人達から、シュウは何やら憐れむやら小馬鹿にするやら様々な視線を向けられる。
シュウは羞恥で顔を真っ赤にしながら、プルプルと震えていた。
「その可能性があると言っただけでしょう!」
シュウは半泣きでそう叫んだが、それでも内心では「あれぇ?間違いないと思ったんだけどなぁ」と釈然としていない。
「それじゃあ、次の質問よ」
周囲の混乱を余所に、ルーシエは落ち着いた様子で淡々と次の質問に入る。
彼女が言葉を発すると一瞬にして周囲は黙り込み、一言一句漏らすまいと耳を傾けた。
そんな中、一人だけジャヒーに喋らすまいと、バフォメットだけが必死の形相で叫んだ。
「やめろジャヒー!箝口の制約でお前は」
「静かにしてバフォメット!」
しかし、バフォメットが叫ぶやいなや、ルーシエが即座に彼を黙らせる。
しん・・・
バフォメットはルーシエの言う通り、あっさりと貝のように口を閉ざす。
(やはり彼女に何かあるんだ!)
シュウは血相を変えてジャヒーの発言を止めようとしたバフォメットが黙らされたのを見て、バフォメットにも自分と同じように何かしらの強制力が働いたのだということを確信した。
バフォメットはルーシエに命じられてから、一言も発することなく黙っている。
何か言いたいのかプルプル震えている様を見るに、どうやら話したくても話せない状態・・・シュウと似たような状況にあるようだった。
(恐らくこうしている間にも、彼は言葉を発しようとしてそれが出来ないことに困惑しているはず・・・そしてジャヒーが口を簡単に割ってしまうのも、間違いなくそれが影響している・・・!彼女は言霊使い以上の何かを持っているのだ!)
ルーシエはシュウも知らない能力のようなもので人の行動を制限していることが想像出来たが、一先ずの所はそれについては一切シュウは口にしないことにした。
押しても引いても割らなかった口をルーシエが割ってくれるのなら、とりあえずは水を差さずに黙って見ていようと考えた。
「それで、ジャヒー。実験というのはどういうこと?」
スライムの実験とやらに直接自分が長い間苦しめられてきた。それについて問うのは、そこそこの精神力を要するはずである。だがルーシエはあくまで淡々と問うている。
彼女はシュウや周囲が思うよりずっと肝が据わっていた。
スライムによって地獄を見続けてきたことで、何か吹っ切れたものがあるのかもしれない。
「あのスライムは、人為的に作り出された存在です。人間に憑りつき、気付かれないほどに弱い毒で徐々に弱らせ、体調不良を起こさせる。医者や回復術師が診ても原因はわからず、『謎の病気』としか診断されない・・・そういった毒スライムを目指して作られました」
ジャヒーの言葉にシュウは息を飲む。
衝撃的な内容であるにも関わらず、ルーシエは冷静に話を聞いていた。
「そう。それは何のために?普通の毒持ちのスライムではいけないの?」
「最終的には狙った人間だけを気付かれぬうちに地上から殲滅するために、と開発者は言っておりました」
「開発者は誰?」
「魔族からは魔王軍科学研究所の所員と、人間からは帝国貴族の連盟で作り出された研究施設から研究員が派遣されまして、彼らの合作です」
「あら・・・結構おおごとになっているのね」
おおごとのおおごと、機密も機密。
箝口の制約という大がかりな口封じを仕掛けてでも口外してはならない話を、ルーシエはいとも簡単に聞きだしてしまった。
いつの間にか意識を取り戻したと思われるバフォメットが、慌てた様子でジャヒーの名を呼ぶ。
(えっ!じゃあ本当に・・・?)
バフォメットの様子から、シュウはジャヒーがルーシエに答えた内容が嘘ではないということを確信する。
(そんなバカな・・・!?)
あれだけ渋っていた質問に対し、あっさり答えてしまったことが信じられなかった。
「箝口の制約・・・だっけ?なんか違ったみたいだな・・・」
「普通に質問に答えてるもんな」
「あの人、なんか知ったかで確信めいて言ってたけど、外しちゃったね・・・」
「ダサ・・・」
「おい、あまり可哀想な目で見てやるなよ。本人だって惨めでならないだろうからさ・・・」
周囲にいる使用人達から、シュウは何やら憐れむやら小馬鹿にするやら様々な視線を向けられる。
シュウは羞恥で顔を真っ赤にしながら、プルプルと震えていた。
「その可能性があると言っただけでしょう!」
シュウは半泣きでそう叫んだが、それでも内心では「あれぇ?間違いないと思ったんだけどなぁ」と釈然としていない。
「それじゃあ、次の質問よ」
周囲の混乱を余所に、ルーシエは落ち着いた様子で淡々と次の質問に入る。
彼女が言葉を発すると一瞬にして周囲は黙り込み、一言一句漏らすまいと耳を傾けた。
そんな中、一人だけジャヒーに喋らすまいと、バフォメットだけが必死の形相で叫んだ。
「やめろジャヒー!箝口の制約でお前は」
「静かにしてバフォメット!」
しかし、バフォメットが叫ぶやいなや、ルーシエが即座に彼を黙らせる。
しん・・・
バフォメットはルーシエの言う通り、あっさりと貝のように口を閉ざす。
(やはり彼女に何かあるんだ!)
シュウは血相を変えてジャヒーの発言を止めようとしたバフォメットが黙らされたのを見て、バフォメットにも自分と同じように何かしらの強制力が働いたのだということを確信した。
バフォメットはルーシエに命じられてから、一言も発することなく黙っている。
何か言いたいのかプルプル震えている様を見るに、どうやら話したくても話せない状態・・・シュウと似たような状況にあるようだった。
(恐らくこうしている間にも、彼は言葉を発しようとしてそれが出来ないことに困惑しているはず・・・そしてジャヒーが口を簡単に割ってしまうのも、間違いなくそれが影響している・・・!彼女は言霊使い以上の何かを持っているのだ!)
ルーシエはシュウも知らない能力のようなもので人の行動を制限していることが想像出来たが、一先ずの所はそれについては一切シュウは口にしないことにした。
押しても引いても割らなかった口をルーシエが割ってくれるのなら、とりあえずは水を差さずに黙って見ていようと考えた。
「それで、ジャヒー。実験というのはどういうこと?」
スライムの実験とやらに直接自分が長い間苦しめられてきた。それについて問うのは、そこそこの精神力を要するはずである。だがルーシエはあくまで淡々と問うている。
彼女はシュウや周囲が思うよりずっと肝が据わっていた。
スライムによって地獄を見続けてきたことで、何か吹っ切れたものがあるのかもしれない。
「あのスライムは、人為的に作り出された存在です。人間に憑りつき、気付かれないほどに弱い毒で徐々に弱らせ、体調不良を起こさせる。医者や回復術師が診ても原因はわからず、『謎の病気』としか診断されない・・・そういった毒スライムを目指して作られました」
ジャヒーの言葉にシュウは息を飲む。
衝撃的な内容であるにも関わらず、ルーシエは冷静に話を聞いていた。
「そう。それは何のために?普通の毒持ちのスライムではいけないの?」
「最終的には狙った人間だけを気付かれぬうちに地上から殲滅するために、と開発者は言っておりました」
「開発者は誰?」
「魔族からは魔王軍科学研究所の所員と、人間からは帝国貴族の連盟で作り出された研究施設から研究員が派遣されまして、彼らの合作です」
「あら・・・結構おおごとになっているのね」
おおごとのおおごと、機密も機密。
箝口の制約という大がかりな口封じを仕掛けてでも口外してはならない話を、ルーシエはいとも簡単に聞きだしてしまった。
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