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避難中

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シュウとバフォメット達の騒動にバロウ達が巻き込まれている頃、バフォメットがアイテムにより起こした爆発音により睡眠から目覚めたルーシエは、使用人達に連れられて屋敷から避難しようとしていた。


「一体何が起こっているの!?」


爆発音に目が覚めたと思えば、慌ただしく使用人が血相を変えてやってきて、ルーシエは問答無用で避難させられた。
どうやら屋敷の隅の方・・・シュウ達が部屋の方で爆発が起きたというが、それ以上のことが何もわからないのだ。
ただ一つわかっているのは、爆発により火災が発生しており、屋敷にいるのは危険であるということだけであり、彼女付きの使用人達は現状確認よりとにかくルーシエの安全を優先した。


『シュウ様の馬鹿ーーっ!!不能者!男色家!スライム狂いーっ!!』


ルーシエは床に着く前、屋敷内に轟くフローラの叫びを耳にしたことを思い出す。


(男色家!?そんな・・・あの人はソッチの人だったの??それなら私は・・・ところで、不能者・・・?不能者とは何のことかしら・・・?朝になったらお父様に聞いてみよう)


当時はそんなことを考えていたルーシエだったが、印象に残るのはとにかくフローラがヒステリックだったという点。
連日の寝不足で精神が安定していなかったというのもあるのだろうが、元の性格からして結構危ない人なのではないかとルーシエは直感していた。


(あのフローラさんがヒステリーを起こしてあの爆発を起こしたのかも・・・!)


爆発の原因について、ルーシエは飛躍した推測をした。
感情が高ぶれば何をするかわからない・・・それがルーシエがフローラに抱いた印象で、そしてそれは遠からず当たっている。

そんなことを考えているルーシエは、一つの結論に至った。


「あんな危ない人、やっぱりシュウ様には相応しくない。男色家だというのなら、私が矯正してみせる・・・やはり私があの人のもとにいなくては」


仮住まいの屋敷が燃えている局面で、呑気にこんなことを考えるルーシエは案外にタフであった。


「え・・・?お、お嬢様・・・?今、なんと・・・?」


腕は折れたままであるが、それでもいないよりはマシだと護衛についている男の使用人が、ルーシエの独り言を聞いて唖然とした。
正当防衛?とはいえ、自分の腕を躊躇いも無く折った悪魔のようなシュウに、自分が仕えているルーシエが懸想していると思われる発言をしたと事実にショックを受けたのだ。


「お嬢様・・・まさか、あのシュウという男に懸想していらっしゃるのですか!?趣味が悪・・・あ、いえ、どうしてそんな・・・」


傍にいた侍女も驚愕し、信じられないといった風に言う。


「それは・・・」


使用人達の問いに、ルーシエが言葉を返そうとしたそのときだった。


『ウオオオオオオオオォォォォォォォォォォ!』


突如として、屋敷の方から空気を震わすような雄叫び轟いた。
これまでその場にいる誰もが聞いたことのないような、恐ろしい雄叫びだった。


「い、今のは一体・・・!?」


使用人達はあまりの恐ろしさに身が竦んでいたが、ルーシエだけは気丈に屋敷を睨みつける。


「屋敷で何かあったんだわ。こうしてはいられない・・・私はこれから屋敷に戻ります!」


「えっ!」


言うが早いか、ルーシエはすぐに屋敷に向かって駆けだした。
だが、これに対してすぐに我に返った使用人達は一斉にルーシエの進路を阻む。


「屋敷で何が起こっているか不明です!危険ですのでお下がりください!」


恐ろしい雄叫びは魔物のものである可能性が高いので、むざむざルーシエを行かせる気など使用人達には無かった。
だが、ルーシエは一歩も退く様子がない。


「退きなさい!」


「退きません!」


進もうとするルーシエに立ちふさがる使用人。
力づくで突破するなど不可能であるこの状況で、ルーシエは一つ深呼吸をすると、もう一度大きな声で叫んだ。


「退きなさいっ!!」


「っっ!?」


何があっても退かないぞと思っていたはずの使用人達は、そのあまりの気迫に圧されたのか、思わず道を譲ってしまっていた。


「えっ・・・?」


困惑するのは使用人達である。
ルーシエの命令とはいえ、通すわけには絶対に行かないと考えていたはずなのに、どうして?と。


「・・・!」


一度は退いてしまったが、今からでも止めようと思うも体は何故か動かない。

呆然とする使用人達の横をすり抜けるようにして、ルーシエは来た道を戻り駆けた。
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