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襲撃中

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メイド長がシュウ達の部屋に侵入した目的は、シュウが捕縛しているスライムの速やかなる消滅だった。
彼女はある者の指示によって、スライムの存在を世に知らしめないようにしなければならず、シュウがスライムの存在を手紙なりなんなり外部に漏らす前に手を打つ必要があった。
それとは別に懸念していることももう一つあったこともあり、早速メイド長は行動に出た。
屋敷の男衆の証言からシュウが手練れであることを知ってはいたものの、薬で眠らせてさえしまえば大した脅威ではないし、スライムを始末するだけならすぐに終わらせることが出来ると思っていた。

だからこそ、シュウが実際は眠っておらず、それどころかこうして網を張られて待ち構えられていたという事実に、メイド長は驚愕のあまり思考が一瞬まとまらなかった。

---彼女はその隙をシュウに突かれた。


「ぐふっ!?」


瞬時に間合いを詰められたメイド長は魔法で応戦する暇など与えて貰えずに、強烈なボディブローを食らった。


「かはぁっ!?」


屋敷の誰もが知らぬことだったが、メイド長は優秀な魔術師だ。
通常なら打撃に対する防御魔法を展開することで、シュウのこの攻撃を防ぐことも十分可能だったが、防御を展開する暇すら与えてもらえず、挙句に腹をやられることで悶絶して行動不能になったメイド長は、もはやただサンドバッグのようにシュウの攻撃にさらされるしかなくなってしまう。


「げほっ、げほっ・・・」


咳き込んで魔法を使うどころか満足に体を動かすことも出来ず、メイド長の作戦は失敗。普通ならこのままシュウに捕まってしまう・・・そうなるはずだった。


バァン!


「大丈夫か!?」


そこへ部屋の扉が乱暴に開かれ、乱入者が現れた。
現れたのは男衆の中で現状唯一無傷である、山賊を取りまとめていたリーダーの男だった。
スライム処分のためのこの不意打ちは、メイド長とこのリーダーの男二人が組んで起こしたものであり、部屋の外で邪魔者が入って来ないか見張っていた男は、部屋の中の様子がおかしいことに気付き慌てて突入してきたのだった。


「くっ、貴様!」


メイド長が腹を抱えてうずくまっているのを見て、リーダーの男は作戦が失敗したことを瞬時に理解する。


「ほぉ、男女の密事に乱入するとは無粋な方だ。それとも貴方も混ざりたいのですか?私の後なら好きなようにしても結構ですよ」


シュウはリーダーの男の乱入に驚いた様子もなく、目線だけを向け微笑を浮かべながら冗談を言った。


「くっ・・・!」


シュウの余裕綽々な態度に歯噛みしそうになるが、リーダーの男はシュウに対して自分では到底歯が立たないことを知っている。
だから感情に任せて攻撃を仕掛けるなどということはしなかった。

その代わりに彼が用いたのは、黒ずんだ小さな玉だった。


「むっ」


シュウは一瞬でそれが何であるかを理解し、腕で自分の目を隠す。
リーダーの男は手に持った球を床に投げつけると、強烈な閃光がカッと部屋全体を包んだ。
彼が使ったのは冒険者がダンジョンなどで目晦ましのために魔物に対して使う、強力な閃光を放つアイテムである。シュウとてそれを直視すればただでは済まないので、防御姿勢を取った。


(これで倒せるなどとは思っていないが)


ただ目晦ましで終わるわけではなく、リーダーの男は次のアイテムを用意する。
軽く魔力を込めるだけで爆発魔法を発動することが出来る魔法の玉だ。これも冒険者相手に流通しているものだった。
シュウを倒せるとは思っていないが、追加の間晦ましとして躊躇いなくそれを使用する。


ドォォォォン


静寂な森の中にある屋敷に強烈な爆発音が轟いた。部屋そのものが壁もろとも吹き飛び、辺りが炎に包まれる。
襲撃者による決死の撤退であった。






-----



シュウとは違い、今の今まで普通に寝ていたフローラは・・・これだけのことがありながらもまだ寝ている。連日不眠だったので、ちょっとやそっとのことでは起きないのだ。
・・・とはいえ、いくらか図太すぎではあるが。


「やだ・・・シュウ様、のしかかってくるなんて恥ずかしいです・・・そんな体位・・・」


フローラは瓦礫に埋もれながらも、涎を垂らしながら呑気に寝言を言っていた。
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