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治療中 4
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「ふむ・・・ほほぅ・・・体中を逃げ回ろうとしていますね。何年も居心地の良い体に住めていたのに、突然立ち退きを要求されては慌てもするでしょう。これからは私が貴方の居場所を用意してあげますよ?子猫ちゃん・・・」
ルーシエの体に中にいるであろうスライムにブツブツと語り掛ける様は、傍からするとただのヤバイやつかバカなのだが、実際のところシュウは語り掛けている間にも高度な聖魔法を駆使し続けていた。
人体を傷つけないよう調整した聖魔力の塊を、スライムをチクチクと刺すようにして追い掛け回す。
その都度ルーシエの体内に張り巡らせてある聖魔法のセンサーによって移動したスライムの核の位置を特定し、徐々にシュウが狙うコースへと誘導している。
直接見えない物に対して、針の穴を通すような魔力のコントロールで逃げ纏うものを追い立てる・・・
どのような医者、回復術師にも出来ぬ芸当であった。
過剰なまでに回復術師として研鑽し、貪欲に知識を求め続けたシュウだからこそ可能な治療法だ。
「・・・ひっ、ひいぃぃ・・・」
何やら体の中で蠢くような感触があり、ルーシエは気持ち悪さに思わず声を洩らす。
「あぁ、もう少しですよ。あと少しの辛抱です」
高度な技術を駆使しながらも、ルーシエを気遣ってそう言うシュウ。
「ま、まだそのスライムというのを滅することはできないのですか?」
体に走る気持ち悪さから逃れたくてルーシエはシュウに訊ねる。一刻も早くシュウに何とかしてもらいたくてのことであったが・・・
「滅しません。そんなもったいないことしませんよ」
シュウは何故かペロリと舌なめずりをしながらそう答えた。
「えっ」
「このスライムは捕まえて、じっくりねっとり解剖分析して可愛がるのです。もうすぐそのときがやってきます。あぁ、待ち遠しい・・・(ゾクゾク)」
シュウはうっとりしながらそう言い、口からよだれを出していた。
シュウはスライムを追い立てるために先ほどから奮闘している。
スライムを見つけて核を聖魔法で潰すだけならとっくに終わっているが、敢て生け捕りにするとシュウは決めていた。
高度な聖魔法を神経を研ぎ澄ませながら使い続けるなど常人なら耐えられぬほどの重労働だが、異様なまでの知的探求心がシュウを突き動かしている。
シュウは早くスライムのことを知りたくて知りたくて仕方が無かった。
「可愛がるって・・・私は早く楽に・・・」
「あ、そろそろ出てきます」
ルーシエが抗議の声を上げようとしたところでシュウが言うと、突然ルーシエは強烈な吐き気をもよおしてきた。
「口から出ます」
と、シュウが言うが早いか、ルーシエの口から握り拳半分ほどの液体が飛び出した。
「げほっ、げほげほ・・・」
ルーシエが咳き込んでいると、シュウが満面の笑みを浮かべながらある物を手に持って彼女の前に持ってくる。
それは部屋に置いてあった聖神教会の幸運の壺であった。
「先ほどのスライムをこの壺の中に閉じ込めてあります。しっかり検査しないと確定はしませんが、恐らくもう貴方の体が毒に蝕まれることはないでしょう」
シュウはルーシエの体の中に巣くっていたスライムを、聖神教会の壺の中に閉じ込めていた。
一応教会が幸運の壺として売っているだけあって、雰囲気作りのために申し訳程度の聖魔法による浄化を行われている壺である。小さな魔物の類を封印することくらいには使える物であった。
「えっ・・・」
ルーシエは自分が何を言われたのか、すぐには理解できなかった。
「私は・・・もう毒に悩まされることはないの・・・?」
いろいろあった気がするが、実のところ治療が実際に始まってから30分もしていない。
「さぁ始めるぞ」で始まり、わたわたしている間に「もう貴方の体は治りました」では、即座に状況を理解しきれないのは無理も無かった。
「毒の原因と思われるものを除去出来たと思われます。恐らくは大丈夫かと」
シュウが再度そう言うと、ルーシエは安堵で張り詰めていた緊張が一気にほぐれたせいか、フッと意識を失った。
ルーシエの体に中にいるであろうスライムにブツブツと語り掛ける様は、傍からするとただのヤバイやつかバカなのだが、実際のところシュウは語り掛けている間にも高度な聖魔法を駆使し続けていた。
人体を傷つけないよう調整した聖魔力の塊を、スライムをチクチクと刺すようにして追い掛け回す。
その都度ルーシエの体内に張り巡らせてある聖魔法のセンサーによって移動したスライムの核の位置を特定し、徐々にシュウが狙うコースへと誘導している。
直接見えない物に対して、針の穴を通すような魔力のコントロールで逃げ纏うものを追い立てる・・・
どのような医者、回復術師にも出来ぬ芸当であった。
過剰なまでに回復術師として研鑽し、貪欲に知識を求め続けたシュウだからこそ可能な治療法だ。
「・・・ひっ、ひいぃぃ・・・」
何やら体の中で蠢くような感触があり、ルーシエは気持ち悪さに思わず声を洩らす。
「あぁ、もう少しですよ。あと少しの辛抱です」
高度な技術を駆使しながらも、ルーシエを気遣ってそう言うシュウ。
「ま、まだそのスライムというのを滅することはできないのですか?」
体に走る気持ち悪さから逃れたくてルーシエはシュウに訊ねる。一刻も早くシュウに何とかしてもらいたくてのことであったが・・・
「滅しません。そんなもったいないことしませんよ」
シュウは何故かペロリと舌なめずりをしながらそう答えた。
「えっ」
「このスライムは捕まえて、じっくりねっとり解剖分析して可愛がるのです。もうすぐそのときがやってきます。あぁ、待ち遠しい・・・(ゾクゾク)」
シュウはうっとりしながらそう言い、口からよだれを出していた。
シュウはスライムを追い立てるために先ほどから奮闘している。
スライムを見つけて核を聖魔法で潰すだけならとっくに終わっているが、敢て生け捕りにするとシュウは決めていた。
高度な聖魔法を神経を研ぎ澄ませながら使い続けるなど常人なら耐えられぬほどの重労働だが、異様なまでの知的探求心がシュウを突き動かしている。
シュウは早くスライムのことを知りたくて知りたくて仕方が無かった。
「可愛がるって・・・私は早く楽に・・・」
「あ、そろそろ出てきます」
ルーシエが抗議の声を上げようとしたところでシュウが言うと、突然ルーシエは強烈な吐き気をもよおしてきた。
「口から出ます」
と、シュウが言うが早いか、ルーシエの口から握り拳半分ほどの液体が飛び出した。
「げほっ、げほげほ・・・」
ルーシエが咳き込んでいると、シュウが満面の笑みを浮かべながらある物を手に持って彼女の前に持ってくる。
それは部屋に置いてあった聖神教会の幸運の壺であった。
「先ほどのスライムをこの壺の中に閉じ込めてあります。しっかり検査しないと確定はしませんが、恐らくもう貴方の体が毒に蝕まれることはないでしょう」
シュウはルーシエの体の中に巣くっていたスライムを、聖神教会の壺の中に閉じ込めていた。
一応教会が幸運の壺として売っているだけあって、雰囲気作りのために申し訳程度の聖魔法による浄化を行われている壺である。小さな魔物の類を封印することくらいには使える物であった。
「えっ・・・」
ルーシエは自分が何を言われたのか、すぐには理解できなかった。
「私は・・・もう毒に悩まされることはないの・・・?」
いろいろあった気がするが、実のところ治療が実際に始まってから30分もしていない。
「さぁ始めるぞ」で始まり、わたわたしている間に「もう貴方の体は治りました」では、即座に状況を理解しきれないのは無理も無かった。
「毒の原因と思われるものを除去出来たと思われます。恐らくは大丈夫かと」
シュウが再度そう言うと、ルーシエは安堵で張り詰めていた緊張が一気にほぐれたせいか、フッと意識を失った。
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