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後悔中
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「そんなことが本当に可能なのか!?」
リーダーの男とメイド長はシュウに掴みかからんばかりの勢いで迫った。
「ぐぇぇ」
というか実際に掴みかかった。
首を絞められる形になったシュウは呻きながらどうにか二人を振り払う。
「可能性の話ですがね。ですが治療中は誰一人何があってもこの部屋には入らないことが条件です。貴方がたが退室し次第、結界を張らせていただきます」
「なっ・・・」
シュウに条件を突き付けられ、実際にフローラが張った結界を目の当たりにしたリーダーの男は目を見張った。
シュウ達が結界を張れば、自分達にはそれを打ち破ることはできない。つまりは守るべき相手であるルーシエがその間無防備になってしまうので、どうしてもその状況をつくるわけにはいかなかった。
「それは・・・ダメだ。信用するわけにはいかない」
現段階でシュウにはルーシエの裸体を晒してしまっている。これだけでも屈辱であるというのに、自分達の手を届かない状態にしておいてシュウがもし良からぬことをしようものなら、悔やんでも悔やみきれない。
そうした葛藤がシュウへNOで返事を突き返させた。
「まぁ、別に私たちはどっちだっていいんですけどね。何もするなと言われれば、望み通りしないだけです。後はお好きなようにどうぞ」
フローラは心底どうでも良さそうに言った。あまりに素っ気ない言いぶりにリーダーの男たちは口を絶句する。
かつては慈悲深いことで民には有名な彼女であったが、それはそうするべき相手だけに向けた顔だ。聖女の座を捨てた今では他人に良い顔をする必要はないし、自分達を襲ってきた上に、シュウのせっかくの申し出を断ってきた恩知らずに与える慈悲などないと考えていたのだ。
「帰ってさっさと憲兵に突き出しましょうシュウ様。これ以上時間を無駄にすることもないと思います」
シュウを害する者、侮辱する者はフローラにとっては敵でしかなく、僅かたりとも慈悲を与えてる相手ではない。フローラはシュウの腕を取って退室を促した。
リーダーの男たちが何か言いたげにしながらも俯き、シュウがそれを見てやれやれと肩を窄めたそのとき、それまでずっと黙って成り行きを見守っていたルーシエが口を開いた。
「私は・・・大丈夫・・・!」
一同がぎょっとしてルーシエに視線を向ける。
ルーシエは目を開き、震える唇で必死に言葉を紡いだ。
「治療・・・してください・・・!何があっても、私は気にしませんから・・・!」
毒により体力を消耗しているルーシエは、言葉を発することさえつらい状態である。だから普段彼女が発するのは最小限の言葉のみなのだが、このときばかりは自分の体に鞭を打って必死に己が心中を訴えていた。
「お嬢様!彼が信用できると決まったわけではありません!!ご覧ください、この開いているのか閉じているのかわからない細い目!こうした顔の男はいやらしい考えを持っていると古より決まっているのです!お嬢様を私たちから遠ざければ、きっとひどいことをされてしまうに決まっています!治療の報酬に何を要求されるかわかったものではありません!」
メイド長の言い分に流石にシュウも少し傷ついた。
「ほっといてくれませんか」
「でもエッチなのは確かですよね」
フローラがさりげなく言った言葉にもほんのり傷ついた。
「とにかく、ダメですお嬢様!他の方法を探しましょう!この男は私たちを騙そうとしているのです!」
ルーシエにメイド長が言うが、ルーシエは弱弱しく首を横に振る。
「嫌よ・・・私にも何となくわかるの。その人の言う通りこのままじゃ、もうそれほど長くは生きられないって。だったら・・・私は少しでも自分が助かる道を選びたい・・・!その人に賭けてみたい!」
「お嬢様・・・」
ルーシエの悲痛な言葉に、止めようとしたメイド長達は茫然とする。
自身の命が尽きようと察している主の言葉は、深く深く彼女らの心を抉った。自分の命を終わらせるくらいなら、可能性に賭けてみたい気持ちになるのも当然であると。
そしてその可能性を個人的な感情を優先して本人の断りなく断じようとしたことを恥じた。
「どうでもいいけどぉ~さっさと決めてくださいませんかぁ?」
面倒くさそうにフローラが言う。
これまで世間体のために不必要なほど様々な人間に愛想を振りまいてきた彼女は、柵を失ったいま敵と認定した人間にはとことん冷たい。
ルーシエはゆっくりとシュウに顔を向けると、ゆっくりと口を開き必死の形相で言った。
「お願い・・・します・・・!」
その言葉を聞いたシュウは満足そうに頷いたあと
「それでは私の好きに・・・いや、治療をやらせてもらいますね。ヘヘ・・・」
邪悪な笑みを浮かべ、舌なめずりをしながらそう言うシュウに「あれ?もしかして選択を間違えた?」とルーシエは少しだけ後悔した。
リーダーの男とメイド長はシュウに掴みかからんばかりの勢いで迫った。
「ぐぇぇ」
というか実際に掴みかかった。
首を絞められる形になったシュウは呻きながらどうにか二人を振り払う。
「可能性の話ですがね。ですが治療中は誰一人何があってもこの部屋には入らないことが条件です。貴方がたが退室し次第、結界を張らせていただきます」
「なっ・・・」
シュウに条件を突き付けられ、実際にフローラが張った結界を目の当たりにしたリーダーの男は目を見張った。
シュウ達が結界を張れば、自分達にはそれを打ち破ることはできない。つまりは守るべき相手であるルーシエがその間無防備になってしまうので、どうしてもその状況をつくるわけにはいかなかった。
「それは・・・ダメだ。信用するわけにはいかない」
現段階でシュウにはルーシエの裸体を晒してしまっている。これだけでも屈辱であるというのに、自分達の手を届かない状態にしておいてシュウがもし良からぬことをしようものなら、悔やんでも悔やみきれない。
そうした葛藤がシュウへNOで返事を突き返させた。
「まぁ、別に私たちはどっちだっていいんですけどね。何もするなと言われれば、望み通りしないだけです。後はお好きなようにどうぞ」
フローラは心底どうでも良さそうに言った。あまりに素っ気ない言いぶりにリーダーの男たちは口を絶句する。
かつては慈悲深いことで民には有名な彼女であったが、それはそうするべき相手だけに向けた顔だ。聖女の座を捨てた今では他人に良い顔をする必要はないし、自分達を襲ってきた上に、シュウのせっかくの申し出を断ってきた恩知らずに与える慈悲などないと考えていたのだ。
「帰ってさっさと憲兵に突き出しましょうシュウ様。これ以上時間を無駄にすることもないと思います」
シュウを害する者、侮辱する者はフローラにとっては敵でしかなく、僅かたりとも慈悲を与えてる相手ではない。フローラはシュウの腕を取って退室を促した。
リーダーの男たちが何か言いたげにしながらも俯き、シュウがそれを見てやれやれと肩を窄めたそのとき、それまでずっと黙って成り行きを見守っていたルーシエが口を開いた。
「私は・・・大丈夫・・・!」
一同がぎょっとしてルーシエに視線を向ける。
ルーシエは目を開き、震える唇で必死に言葉を紡いだ。
「治療・・・してください・・・!何があっても、私は気にしませんから・・・!」
毒により体力を消耗しているルーシエは、言葉を発することさえつらい状態である。だから普段彼女が発するのは最小限の言葉のみなのだが、このときばかりは自分の体に鞭を打って必死に己が心中を訴えていた。
「お嬢様!彼が信用できると決まったわけではありません!!ご覧ください、この開いているのか閉じているのかわからない細い目!こうした顔の男はいやらしい考えを持っていると古より決まっているのです!お嬢様を私たちから遠ざければ、きっとひどいことをされてしまうに決まっています!治療の報酬に何を要求されるかわかったものではありません!」
メイド長の言い分に流石にシュウも少し傷ついた。
「ほっといてくれませんか」
「でもエッチなのは確かですよね」
フローラがさりげなく言った言葉にもほんのり傷ついた。
「とにかく、ダメですお嬢様!他の方法を探しましょう!この男は私たちを騙そうとしているのです!」
ルーシエにメイド長が言うが、ルーシエは弱弱しく首を横に振る。
「嫌よ・・・私にも何となくわかるの。その人の言う通りこのままじゃ、もうそれほど長くは生きられないって。だったら・・・私は少しでも自分が助かる道を選びたい・・・!その人に賭けてみたい!」
「お嬢様・・・」
ルーシエの悲痛な言葉に、止めようとしたメイド長達は茫然とする。
自身の命が尽きようと察している主の言葉は、深く深く彼女らの心を抉った。自分の命を終わらせるくらいなら、可能性に賭けてみたい気持ちになるのも当然であると。
そしてその可能性を個人的な感情を優先して本人の断りなく断じようとしたことを恥じた。
「どうでもいいけどぉ~さっさと決めてくださいませんかぁ?」
面倒くさそうにフローラが言う。
これまで世間体のために不必要なほど様々な人間に愛想を振りまいてきた彼女は、柵を失ったいま敵と認定した人間にはとことん冷たい。
ルーシエはゆっくりとシュウに顔を向けると、ゆっくりと口を開き必死の形相で言った。
「お願い・・・します・・・!」
その言葉を聞いたシュウは満足そうに頷いたあと
「それでは私の好きに・・・いや、治療をやらせてもらいますね。ヘヘ・・・」
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