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診察中 2
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シュウは診察する際、邪魔だから一人を残して人払いしろと注文をつけた。
山賊サイドからすると受け入れがたい要求だが、それでもどうしても受け入れなければならない状況である。
ならせめてシュウがよからぬことをしようとしても阻止できるようにと、いまだ無傷でもあるリーダーの男が部屋に残ることになっていた。
しかしリーダーの男は「全裸にしろ」と言ったシュウの注文には応じかねてしまい、しかたなしに同性であるメイド長も同席することになる。
面倒なことだとシュウは内心思いつつも、彼らからすれば命より大事な己が主を守るために懸命になっているその姿勢を馬鹿にするような発言だけはしなかった。
リーダーの男が見えないようにとそっぽを向き、メイド長がルーシエの服を慎重に脱がしてついに患者であるルーシエは全裸となる。
「変なことしてみやがれ。殺してやる」
「変な目で見たら抉ってやる」
「シュウ様。エッチな目で見たらタダじゃすみませんよ」
部屋の外では満身創痍ながらも武器を持って殺気だった山賊達、ナイフなど手頃なもので武装しているメイド達が耐久しているという異様な状況の中での診察であるが、胆の据わったシュウはなんてことないばかりにマイペースのままである。ちなみにこっそりフローラもピリピリしていた。
そして・・・ルーシエの先ほどまで服で見えなかった肌の部分が露になると、そこで見たものにシュウは驚きの声を洩らす。
「これは…」
「毒…ですね」
フローラがぽつりと漏らす。
ルーシエの体は至るところが黒紫色に染まっていた。痣とは違う、強い毒に侵されているときの特徴だった。
毒は冒険者ならしばしば見かけたり経験することもあるし、冒険者だったシュウや聖女として何度となく治療したことのあるフローラからすれば完全に見馴れたものだ。
このときシュウ達が見たのはこれまで見たこともないほど身体に深く侵食した、とても強い毒に見受けられた。
「この病は数年前から突然に発症しました。当時は毒消しアイテムでほぼ完治したように見えたのですが、数日後に再び同じ症状になる・・・の繰り返しです。そのうちに毒消しもあまり効かなくなり、毒の再発も速度がどんどん上がっていったのです」
「ふむ、聞いたことのないものですね。解毒にはいろいろ方法を試しましたか?」
「あらゆる毒消しを何度も試しましたが、全く効果がありません。高度な魔法で消しても消してもすぐに毒が身体に回るのです」
ルーシエの裸体を見まいと体を壁に向けているリーダーの男が、その体勢のままシュウの質問に答える。
「なるほど。これは根治に骨が折れそうな毒ですね…」
シュウはまじまじと患部を見つめて言う。
このときばかりはシュウも裸体そのものには目が行かずに、真面目に患部だけを注視していた。
「何の毒かは不明。有名な医者も回復術師も匙を投げました。ポーションを使って体力を回復させ続け、衰弱死を防ぐことしか我々にはできませんでした……ですが、毒の侵食が進み、いよいよポーションでの回復が追い付かなくなりそうなのが近況なのです」
悔しそうに肩を震わせながらリーダーの男が言うと、シュウはまじまじと患部を見つめた後、そっとルーシエの心臓部分に手を当てた。
「あっ!」
それを見ていたメイド長が思わず怒りで声を上げる。「無礼な」と食ってかかろうとするも…
「静かに」
胸に手を当てたまま、シュウはそう言ってメイド長を制する。
シュウから静かな圧が発せられ、メイド長は思わず口を閉ざした。
ルーシエ本人は僅かに恥ずかしそうに表情を歪めながらも、抵抗する気力も体力もないのか黙ったままでいる。
「ふーむ…」
しばらく手を置いたまま唸っていたが、やがて手を放すとシュウはあっさりと言った。
「心臓の鼓動からするに、恐らくこのままなら長くはないでしょう」
「「なっ…!」」
リーダーの男とメイド長が同時に声を上げる。
「今ここでどうにかしなければ、恐らく来月まで生きていられるかどうか」
続くシュウの言葉に寝たきりの体勢のままルーシエが目を見開く。
無気力そうにしていた彼女も、実際に死が間近に迫っていると聞いて流石に反応らしい反応を見せた。
「どうしてそんなことがわかる!」
たまらずリーダーの男が食って掛かった。
「私は元神官であり元冒険者です。人の治療に携わると同時に、人の死にもたくさん触れてきました。だからわかります」
苦笑いしながらそう言うシュウからは、なんとも言えない説得力を感じるオーラが感じられ、リーダーの男は思わず口を噤んだ。
メイド長と二人して顔を見合わせ、俯いている。二人の間に流れる空気には「絶望」の文字があった。
「しかし、この患者は恐らく治らぬこともない・・・というのも経験則で何となくですがわかります。私に任せていただけたら・・・ですが」
だがシュウはそんな二人を見ながらニヤリと笑みを浮かべ、そう続けたのだった。
山賊サイドからすると受け入れがたい要求だが、それでもどうしても受け入れなければならない状況である。
ならせめてシュウがよからぬことをしようとしても阻止できるようにと、いまだ無傷でもあるリーダーの男が部屋に残ることになっていた。
しかしリーダーの男は「全裸にしろ」と言ったシュウの注文には応じかねてしまい、しかたなしに同性であるメイド長も同席することになる。
面倒なことだとシュウは内心思いつつも、彼らからすれば命より大事な己が主を守るために懸命になっているその姿勢を馬鹿にするような発言だけはしなかった。
リーダーの男が見えないようにとそっぽを向き、メイド長がルーシエの服を慎重に脱がしてついに患者であるルーシエは全裸となる。
「変なことしてみやがれ。殺してやる」
「変な目で見たら抉ってやる」
「シュウ様。エッチな目で見たらタダじゃすみませんよ」
部屋の外では満身創痍ながらも武器を持って殺気だった山賊達、ナイフなど手頃なもので武装しているメイド達が耐久しているという異様な状況の中での診察であるが、胆の据わったシュウはなんてことないばかりにマイペースのままである。ちなみにこっそりフローラもピリピリしていた。
そして・・・ルーシエの先ほどまで服で見えなかった肌の部分が露になると、そこで見たものにシュウは驚きの声を洩らす。
「これは…」
「毒…ですね」
フローラがぽつりと漏らす。
ルーシエの体は至るところが黒紫色に染まっていた。痣とは違う、強い毒に侵されているときの特徴だった。
毒は冒険者ならしばしば見かけたり経験することもあるし、冒険者だったシュウや聖女として何度となく治療したことのあるフローラからすれば完全に見馴れたものだ。
このときシュウ達が見たのはこれまで見たこともないほど身体に深く侵食した、とても強い毒に見受けられた。
「この病は数年前から突然に発症しました。当時は毒消しアイテムでほぼ完治したように見えたのですが、数日後に再び同じ症状になる・・・の繰り返しです。そのうちに毒消しもあまり効かなくなり、毒の再発も速度がどんどん上がっていったのです」
「ふむ、聞いたことのないものですね。解毒にはいろいろ方法を試しましたか?」
「あらゆる毒消しを何度も試しましたが、全く効果がありません。高度な魔法で消しても消してもすぐに毒が身体に回るのです」
ルーシエの裸体を見まいと体を壁に向けているリーダーの男が、その体勢のままシュウの質問に答える。
「なるほど。これは根治に骨が折れそうな毒ですね…」
シュウはまじまじと患部を見つめて言う。
このときばかりはシュウも裸体そのものには目が行かずに、真面目に患部だけを注視していた。
「何の毒かは不明。有名な医者も回復術師も匙を投げました。ポーションを使って体力を回復させ続け、衰弱死を防ぐことしか我々にはできませんでした……ですが、毒の侵食が進み、いよいよポーションでの回復が追い付かなくなりそうなのが近況なのです」
悔しそうに肩を震わせながらリーダーの男が言うと、シュウはまじまじと患部を見つめた後、そっとルーシエの心臓部分に手を当てた。
「あっ!」
それを見ていたメイド長が思わず怒りで声を上げる。「無礼な」と食ってかかろうとするも…
「静かに」
胸に手を当てたまま、シュウはそう言ってメイド長を制する。
シュウから静かな圧が発せられ、メイド長は思わず口を閉ざした。
ルーシエ本人は僅かに恥ずかしそうに表情を歪めながらも、抵抗する気力も体力もないのか黙ったままでいる。
「ふーむ…」
しばらく手を置いたまま唸っていたが、やがて手を放すとシュウはあっさりと言った。
「心臓の鼓動からするに、恐らくこのままなら長くはないでしょう」
「「なっ…!」」
リーダーの男とメイド長が同時に声を上げる。
「今ここでどうにかしなければ、恐らく来月まで生きていられるかどうか」
続くシュウの言葉に寝たきりの体勢のままルーシエが目を見開く。
無気力そうにしていた彼女も、実際に死が間近に迫っていると聞いて流石に反応らしい反応を見せた。
「どうしてそんなことがわかる!」
たまらずリーダーの男が食って掛かった。
「私は元神官であり元冒険者です。人の治療に携わると同時に、人の死にもたくさん触れてきました。だからわかります」
苦笑いしながらそう言うシュウからは、なんとも言えない説得力を感じるオーラが感じられ、リーダーの男は思わず口を噤んだ。
メイド長と二人して顔を見合わせ、俯いている。二人の間に流れる空気には「絶望」の文字があった。
「しかし、この患者は恐らく治らぬこともない・・・というのも経験則で何となくですがわかります。私に任せていただけたら・・・ですが」
だがシュウはそんな二人を見ながらニヤリと笑みを浮かべ、そう続けたのだった。
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