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制裁中

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「私が結界を解いたら、シュウ様のことを無事に放してくれますか?」


フローラの質問に、アポロは「ん~」と考える素振りを見せてから


「ちょっと暴れ過ぎちゃったからな。少しくらいは仲間の仕返しくらいはさせてもらうことになるな」


(やり過ぎてぶっ殺しちまう可能性が高いけどな)
内心そんなことを思いながら、アポロはそう答える。既に多くの仲間が大怪我を負っているのだから、シュウを無事で放免させるわけにはいかなかった。


「そうですか。それじゃあ駄目です」


アポロの答えを聞いたフローラは、きっぱりと要求を拒否した。


「は?」


「シュウ様に手ひどいことをするというのなら、この結界は解きません。あぁ、言っておきますが、ここで私を殺しても既に展開した結界は無くなりませんよ。貴方が20回餓死してもお釣りがくるほどの時間をかけないと自然消滅はしません。それくらい私の張る結界は丈夫で長持ちなのです!」


こんな状況なのに誇らしげに胸を張ってフローラは言った。
アポロは呆れたように、ナイフを突きつけたまま溜め息をつく。


「・・・お嬢さん、今の状況わかってる?人質に取られてるんだぞ?自分がどうなるか考えたことない?」


「わかっていますが、シュウ様に害をなすというのなら私はこの結界を解きません」


頑なに言う事を聞かないフローラに、ついにアポロは業を煮やした。


「お嬢さんもしかしてまだ・・・自分が何もされないと思ってるんじゃないかね?」


「と、言いますと?」


「危機感も、常識も、空気を読む力も、いろいろ足りてねぇってことだ。これからお嬢さんに何が足りないのか俺が体に教えてやるよ」


フローラには何もするつもりがなかったアポロだったが、趣向を変えて彼女が愛する男シュウの前で犯してやろうと決めた。シュウは仲間が縛り付けているし、何をしたところで暴れることはないだろうと考えてのことだった。

トラヌドッグは呆然自失としているし、フローラはか弱い女でしかない。誰の邪魔も入らない状況で美少女を手籠めにしてやる状況にアポロは興奮していた。
だからこそ、不穏な空気を感じ取ったリーダーが叫んだ声にも耳を貸さなかった。


「バカやめろ!」


リーダーが叫んだのは直感だった。
アポロが何をするのか察知してのことだったが、僅かに遅かった。


「汚い手で私に触らないでくださいっ!!!!」


自分の胸に触れようと伸ばされたアポロの手を取り、フローラはアポロの腕を横方向に540度ほどそのまま回転させた。


「は?」


メキメキ、ボキン・・・


骨が折れる音と、アポロの絶叫が響いたのが同時だった。


「おおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉ!?お、おがあぢぁ・・・ん・・・!」


アポロの折られた腕は、まるで折れかけの枯れ木のように、歪な形をしてかろうじて体にまだくっついているだけのような状態になった。
痛みと精神的衝撃で涙と鼻水で顔をぐしゃぐしゃにしたアポロは、パニックになって蹲っている。


「この世で私に触れて良いのはシュウ様だけです。シュウ様ではない下賤な男が私に触れないでくれますか?次に触れようとすればその程度ではすみませんよ」


断末魔の声を上げるアポロにフローラは蔑んだ目をして言った。罪悪感だの同情心だの、そのような心は全くないような絶対零度の表情だ。
もちろん、自分の大事な腕がボロ雑巾のようになって半狂乱のアポロにはそんなフローラの様子にも言葉にも気づく様子はない。


「うわぁ・・・」


シュウを含め、それを結界の外から眺めていた者達は皆してドン引きし、じりじりと後退った。

(次に触れれば、って・・・誰が触れるかよあんなキ〇ガイ女!)

ヤバイのはシュウだけで、結界魔法を張る以外はさしたる脅威ではないか弱い女の子だと思っていたフローラが、突然獰猛な魔獣に変化したことの衝撃で山賊達は今度こそ完全に戦意を喪失する。


「あ・・・すみません、つい嫌悪感のあまり身体強化魔法を強めに設定しちゃったみたいで♪」


シュウのドン引きした視線に気付いたフローラが、ペロッと舌を出して照れくさそうに言った。
フローラが使ったのは身体強化魔法。筋力を強化する補助魔法だが、聖女であったフローラの使うそれは並の冒険者の使うそれとは格段にレベルが違うものであり、彼女のような細腕の少女でも大男顔負けの怪力を出すことくらいワケないものであった。

こうしてシュウのみならず、フローラにさえ勝てないと確信した山賊達は投降したのであった。
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