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説教中
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「あ、あいつはヤバイ!本当にヤバイ!」
自分の仲間達の三分の二がやられたところで、ここでようやく万が一のための予備としてシュウ達から見えぬところに身を潜めていた山賊達は察した。
「どのように不意打ちをしたところで、自分達ではアレには敵わない」と。吹き矢で巨大なドラゴンを奇襲しようと構えるがごとき愚行である、と気が付いた。
「ここは退くぞ」
身を隠していた山賊達はシュウが自分達に気が付かないうちにこの場を去ることを決め、リーダーの指示を待つことなく逃走を開始した。
・・・が
「な、なんじゃあこりゃ!?」
逃走を開始した彼らを阻むものが現れた。
絶え間なくびっしりと、まるで辺り一帯を取り囲むように無数の光の柱のようなものが地面から高々と生えているのである。
「ぐわっ!」
光の柱に触れた山賊が、手に感じたあまりの激痛に悲鳴を上げる。
触れたその手は火傷の痕のように爛れていた。
「これは・・・結界の一種か!?」
行く手を阻むように立っているその柱が、自分達を逃がさぬようにしている『檻』であることに山賊達は気が付いた。
彼らの逃げ道を塞いでいるこの光の柱は、フローラが自分たちのいる場所周辺を囲うように展開している『セイント・ケージ』という魔法である。
目的は「シュウの獲物を逃がさないため」であり、懸念なく心行くまでシュウに『狩り』を楽しんでもらいたいというフローラの心遣いである。
高位の魔物ですら動きを封じるこの魔法は、並の人間・・・それもここにいる山賊などでは突破は絶対に不可能であった。
「う、うわああああ!?」
逃げようとしていた山賊達は半狂乱になった。
完全に逃げ場がなく、ただただ狩られるその瞬間を待つのみしかないという恐怖が山賊達全員に感染する。
「ほぉ、やはりフローラは気が利きますね。まさか私のために『交渉』のためのリングを展開してくれていたなんて」
セイントケージの前で嘆いている山賊達の元に、ニコニコと笑みを浮かべているシュウがついにやってきた。
「だからお前のやっていることは交渉じゃねぇ!」
不意打ちしようと草むらから飛び出し、戦斧を振り下ろそうとした山賊の攻撃も空しく空を切る。
まるで水のように流れる動きで山賊を攻撃を躱すと、これまた流れるような動きで山賊の腕を取り、そして折る。
「ぐあああああ!!」
緩流と激流が入り混じる、まさに水のような流れ。
起きていることは恐ろしいが、美しいとさえ思える完成された動きに、山賊達の目は釘付けになった。
「お前・・・これだけのことが出来るなんて一体何者なんだ!?ただの神官じゃねぇな!!?」
たった今腕を折られた山賊の腕はシュウのそれと倍以上ある太いものだった。それをまるで小枝のようにあっさりと折ったシュウに山賊達は戦慄する。
「フッ」
何を今さら、とシュウはフッと笑みを浮かべた。
「拳闘の始まりは僧侶とも言われているんですよ?神官が武に長けていてもおかしくはないでしょう」
尤も私はただの神官ではないし、今では追放されてすらいるが・・・と内心シュウは付け加える。
「そういう話をしてるんじゃねぇ!」
ツッコミを入れつつ、山賊達が後ずさる。
背後は結界。前はシュウ・・・山賊達は絶体絶命の危機だった。
「助けてくれ!」
命乞いをする山賊に対し、シュウはにこやかな笑みを浮かべながら言う。
「ご心配なく。命までは取りませんよ」
殺しはしないが、制裁は続けると暗に言っている。
「とはいえ自分達から襲ってきておいて、都合が悪くなれば命乞い。そんな調子の良い話が通るはずがないでしょう?世の中そんなに都合の良いようには出来てはおりません」
スッと前に出るシュウ。後ずさる山賊。山賊達の背中にフローラの結界が振れ、ジュッと肌が僅かに焼けた。
「悪かったよ許してくれ」
「いいえ。どうやら根が腐っておいでのようですから、ここは一つ私が神官らしく説教することとしましょう。体をもってね」
震える山賊達の懇願をシュウは一蹴する。
そうしてシュウが彼らに手を下そうとした、そのときだった。
「動くんじゃねぇぞ神官!」
シュウの背後・・・馬車のあったところからした声に、シュウは何事かと振り向いた。
「む・・・」
見ると馬車の御者だった男が、フローラにナイフを突きつけているのが目に入った。
「人質だ!それ以上動くならこの女の顔にナイフをぶっ刺すぜ!!」
自分の仲間達の三分の二がやられたところで、ここでようやく万が一のための予備としてシュウ達から見えぬところに身を潜めていた山賊達は察した。
「どのように不意打ちをしたところで、自分達ではアレには敵わない」と。吹き矢で巨大なドラゴンを奇襲しようと構えるがごとき愚行である、と気が付いた。
「ここは退くぞ」
身を隠していた山賊達はシュウが自分達に気が付かないうちにこの場を去ることを決め、リーダーの指示を待つことなく逃走を開始した。
・・・が
「な、なんじゃあこりゃ!?」
逃走を開始した彼らを阻むものが現れた。
絶え間なくびっしりと、まるで辺り一帯を取り囲むように無数の光の柱のようなものが地面から高々と生えているのである。
「ぐわっ!」
光の柱に触れた山賊が、手に感じたあまりの激痛に悲鳴を上げる。
触れたその手は火傷の痕のように爛れていた。
「これは・・・結界の一種か!?」
行く手を阻むように立っているその柱が、自分達を逃がさぬようにしている『檻』であることに山賊達は気が付いた。
彼らの逃げ道を塞いでいるこの光の柱は、フローラが自分たちのいる場所周辺を囲うように展開している『セイント・ケージ』という魔法である。
目的は「シュウの獲物を逃がさないため」であり、懸念なく心行くまでシュウに『狩り』を楽しんでもらいたいというフローラの心遣いである。
高位の魔物ですら動きを封じるこの魔法は、並の人間・・・それもここにいる山賊などでは突破は絶対に不可能であった。
「う、うわああああ!?」
逃げようとしていた山賊達は半狂乱になった。
完全に逃げ場がなく、ただただ狩られるその瞬間を待つのみしかないという恐怖が山賊達全員に感染する。
「ほぉ、やはりフローラは気が利きますね。まさか私のために『交渉』のためのリングを展開してくれていたなんて」
セイントケージの前で嘆いている山賊達の元に、ニコニコと笑みを浮かべているシュウがついにやってきた。
「だからお前のやっていることは交渉じゃねぇ!」
不意打ちしようと草むらから飛び出し、戦斧を振り下ろそうとした山賊の攻撃も空しく空を切る。
まるで水のように流れる動きで山賊を攻撃を躱すと、これまた流れるような動きで山賊の腕を取り、そして折る。
「ぐあああああ!!」
緩流と激流が入り混じる、まさに水のような流れ。
起きていることは恐ろしいが、美しいとさえ思える完成された動きに、山賊達の目は釘付けになった。
「お前・・・これだけのことが出来るなんて一体何者なんだ!?ただの神官じゃねぇな!!?」
たった今腕を折られた山賊の腕はシュウのそれと倍以上ある太いものだった。それをまるで小枝のようにあっさりと折ったシュウに山賊達は戦慄する。
「フッ」
何を今さら、とシュウはフッと笑みを浮かべた。
「拳闘の始まりは僧侶とも言われているんですよ?神官が武に長けていてもおかしくはないでしょう」
尤も私はただの神官ではないし、今では追放されてすらいるが・・・と内心シュウは付け加える。
「そういう話をしてるんじゃねぇ!」
ツッコミを入れつつ、山賊達が後ずさる。
背後は結界。前はシュウ・・・山賊達は絶体絶命の危機だった。
「助けてくれ!」
命乞いをする山賊に対し、シュウはにこやかな笑みを浮かべながら言う。
「ご心配なく。命までは取りませんよ」
殺しはしないが、制裁は続けると暗に言っている。
「とはいえ自分達から襲ってきておいて、都合が悪くなれば命乞い。そんな調子の良い話が通るはずがないでしょう?世の中そんなに都合の良いようには出来てはおりません」
スッと前に出るシュウ。後ずさる山賊。山賊達の背中にフローラの結界が振れ、ジュッと肌が僅かに焼けた。
「悪かったよ許してくれ」
「いいえ。どうやら根が腐っておいでのようですから、ここは一つ私が神官らしく説教することとしましょう。体をもってね」
震える山賊達の懇願をシュウは一蹴する。
そうしてシュウが彼らに手を下そうとした、そのときだった。
「動くんじゃねぇぞ神官!」
シュウの背後・・・馬車のあったところからした声に、シュウは何事かと振り向いた。
「む・・・」
見ると馬車の御者だった男が、フローラにナイフを突きつけているのが目に入った。
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