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交渉中
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「山賊!?まさか・・・」
トラヌドッグは顔面を蒼白にして、馬車の外を覗きこんだ。
すると御者が言った通り、彼の視界には山賊と思わしき男達が武器を持って馬車を取り囲んでいるのが見えた。
「なんてこった・・・」
トラヌドッグは力なく膝をつき項垂れた。
「この辺りは憲兵の巡回が多いから、治安が良いはずなのに・・・それに見るからに金の無さそうな商人を装った・・・なのに何故この馬車を狙ったんだ」
トラヌドッグの所有しているこの馬車は、パッと見は「とりあえず動く」程度にしか見えないボロいものだ。継ぎ接ぎだらけだし型も古い。
山賊は金目のものをたくさん積んでそうな馬車を狙うので、逆に彼らが襲ってこないようなボロい見た目にあえて演出していたのだ。
実際はボロくて金がないように見えるだけで補強もしっかりしてあるし、普通の商用の馬車よりはむしろしっかり作られていると言っていいが、パッと外から見ただけではそんなことには気付かない。
だからこそ、トラヌドッグは自分の馬車に山賊が狙いをつけたのは計算外であったし、不思議でならなかった。
「どれ・・・」
トラヌドッグを尻目にシュウも先ほどのトラヌドッグと同じように外を覗き、目視で山賊の数を数える。
「ふむ・・・目視できるだけでも15人。そのうち騎馬が3。後どれだけ隠れているかはわかりませんが、どのみちこのまま突っ切るのは難しいでしょうね」
シュウが冷静に現状を分析すると、トラヌドッグが深く長い溜息をついた。
「やれやれ仕方がない。こうなってはいくらか金で交渉して、何とか終わりにしてもらうようにしよう。この場所は憲兵の巡回ルートに入っているから、奴らとてそんなに時間はかけたくないはずだ」
「交渉で引いてくれるでしょうか?」
「試してみるより仕方あるまい。勝算もないわけじゃないしな。お前さん方は心配せずここで待っていてくれればいい。巻き込んですまなかったな」
心配してくるシュウに対してトラヌドッグは安心させるように言うと、馬車を降りて「話がしたい」と山賊達に交渉を持ち掛けた。
トラヌドッグの馬車にはそこそこの荷物が積んであるが、パッと見で金になりそうなものは高級ポーションだ。だが、これは見た目はただの水のように偽装してあるため、それさえバレなければ持っていかれることはない。薬草も一緒に積んではあるが、安価な代物であるので高級ポーションに比べれば遥かに被害額は下がる。
大した金にならない荷物を時間をかけて持っていくよりも、抵抗せずさっさと最初にいくらか金を出した貰ったほうが山賊からしてもリスクがない・・・そう考えてくれるかもしれないとトラヌドッグは期待を寄せる。
「だめだ」
そうして交渉しようとしたトラヌドッグに、襲撃してきた山賊のリーダーと思わしき男はにべもなく告げた。
「荷物に高級ポーションがあるだろう?それを貰っていく」
「ええっ!?」
トラヌドッグは顔面を蒼白させたじろいた。
(どうして荷物のことを知っている?)
図星を突かれ、目が泳ぎ、どうしていいか狼狽えていると、ふといつの間にか自分の隣に馬車から降りたシュウが立っていることにトラヌドッグは気付いた。
「あ、アンタ・・・!危ないから馬車に戻っているんだ!」
こんな局面だというのに自分のことを心配してくれるトラヌドッグに、シュウはフッと笑みを向けた。
「後は私が交渉を代わりましょう。貴方は馬車に戻っていてください」
シュウがそう言うと、同じくいつの間にか馬車から降りて来ていたフローラにトラヌドッグは馬車のところまで体を引かれた。
「大丈夫ですよ。シュウ様はこう言ったことに慣れているのです」
「はえ?」
フローラに小声で耳打ちされたトラヌドッグは、訳が分からないまま馬車の中まで戻った。シュウはそれを見届けると
「フローラ。それではお願いします」
そう言って手で合図をする。
その瞬間、馬車とその周辺は魔法による結界によって囲われた。結界の外にいるのはシュウと山賊達だけである。
「なっ、お前ら何をするつもりだ!」
フローラが展開した結界は強力なものであり、生半可な実力の冒険者では打ち破るほどの出来ないレベルのものだった。
無論、山賊達には手を足も出ない代物であり、一目でそうとわかるほどの強力な結界を目の当たりにした山賊達に動揺が広がる。
シュウはそんな山賊達の前に出て、指をボキボキ鳴らしながら言った。
「これからは私が交渉を代わりましょう。そちらがご満足いただけるまで私の暴力を提供します」
山賊達は「それのどこが交渉だ」と思いながら全身に悪寒が走ったのを自覚する。
シュウが身の毛もよだつほどの邪悪な笑みを浮かべているのを見たからだ。
トラヌドッグは顔面を蒼白にして、馬車の外を覗きこんだ。
すると御者が言った通り、彼の視界には山賊と思わしき男達が武器を持って馬車を取り囲んでいるのが見えた。
「なんてこった・・・」
トラヌドッグは力なく膝をつき項垂れた。
「この辺りは憲兵の巡回が多いから、治安が良いはずなのに・・・それに見るからに金の無さそうな商人を装った・・・なのに何故この馬車を狙ったんだ」
トラヌドッグの所有しているこの馬車は、パッと見は「とりあえず動く」程度にしか見えないボロいものだ。継ぎ接ぎだらけだし型も古い。
山賊は金目のものをたくさん積んでそうな馬車を狙うので、逆に彼らが襲ってこないようなボロい見た目にあえて演出していたのだ。
実際はボロくて金がないように見えるだけで補強もしっかりしてあるし、普通の商用の馬車よりはむしろしっかり作られていると言っていいが、パッと外から見ただけではそんなことには気付かない。
だからこそ、トラヌドッグは自分の馬車に山賊が狙いをつけたのは計算外であったし、不思議でならなかった。
「どれ・・・」
トラヌドッグを尻目にシュウも先ほどのトラヌドッグと同じように外を覗き、目視で山賊の数を数える。
「ふむ・・・目視できるだけでも15人。そのうち騎馬が3。後どれだけ隠れているかはわかりませんが、どのみちこのまま突っ切るのは難しいでしょうね」
シュウが冷静に現状を分析すると、トラヌドッグが深く長い溜息をついた。
「やれやれ仕方がない。こうなってはいくらか金で交渉して、何とか終わりにしてもらうようにしよう。この場所は憲兵の巡回ルートに入っているから、奴らとてそんなに時間はかけたくないはずだ」
「交渉で引いてくれるでしょうか?」
「試してみるより仕方あるまい。勝算もないわけじゃないしな。お前さん方は心配せずここで待っていてくれればいい。巻き込んですまなかったな」
心配してくるシュウに対してトラヌドッグは安心させるように言うと、馬車を降りて「話がしたい」と山賊達に交渉を持ち掛けた。
トラヌドッグの馬車にはそこそこの荷物が積んであるが、パッと見で金になりそうなものは高級ポーションだ。だが、これは見た目はただの水のように偽装してあるため、それさえバレなければ持っていかれることはない。薬草も一緒に積んではあるが、安価な代物であるので高級ポーションに比べれば遥かに被害額は下がる。
大した金にならない荷物を時間をかけて持っていくよりも、抵抗せずさっさと最初にいくらか金を出した貰ったほうが山賊からしてもリスクがない・・・そう考えてくれるかもしれないとトラヌドッグは期待を寄せる。
「だめだ」
そうして交渉しようとしたトラヌドッグに、襲撃してきた山賊のリーダーと思わしき男はにべもなく告げた。
「荷物に高級ポーションがあるだろう?それを貰っていく」
「ええっ!?」
トラヌドッグは顔面を蒼白させたじろいた。
(どうして荷物のことを知っている?)
図星を突かれ、目が泳ぎ、どうしていいか狼狽えていると、ふといつの間にか自分の隣に馬車から降りたシュウが立っていることにトラヌドッグは気付いた。
「あ、アンタ・・・!危ないから馬車に戻っているんだ!」
こんな局面だというのに自分のことを心配してくれるトラヌドッグに、シュウはフッと笑みを向けた。
「後は私が交渉を代わりましょう。貴方は馬車に戻っていてください」
シュウがそう言うと、同じくいつの間にか馬車から降りて来ていたフローラにトラヌドッグは馬車のところまで体を引かれた。
「大丈夫ですよ。シュウ様はこう言ったことに慣れているのです」
「はえ?」
フローラに小声で耳打ちされたトラヌドッグは、訳が分からないまま馬車の中まで戻った。シュウはそれを見届けると
「フローラ。それではお願いします」
そう言って手で合図をする。
その瞬間、馬車とその周辺は魔法による結界によって囲われた。結界の外にいるのはシュウと山賊達だけである。
「なっ、お前ら何をするつもりだ!」
フローラが展開した結界は強力なものであり、生半可な実力の冒険者では打ち破るほどの出来ないレベルのものだった。
無論、山賊達には手を足も出ない代物であり、一目でそうとわかるほどの強力な結界を目の当たりにした山賊達に動揺が広がる。
シュウはそんな山賊達の前に出て、指をボキボキ鳴らしながら言った。
「これからは私が交渉を代わりましょう。そちらがご満足いただけるまで私の暴力を提供します」
山賊達は「それのどこが交渉だ」と思いながら全身に悪寒が走ったのを自覚する。
シュウが身の毛もよだつほどの邪悪な笑みを浮かべているのを見たからだ。
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