追放の破戒僧は女難から逃げられない

はにわ

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追跡者達 拗らせ騎士スコーン2

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ヘンリーはスコーンの返事を待つことなく、言いたいことを言って即座にその場を離れようとした。

ガシッ


だが、ベッドで横になっていたはずのスコーンは、甲冑を着ているというのに恐ろしいほどの素早さでヘンリーに接近し、部屋から出ようとした彼の肩を逃がすまいとしっかり掴んだ。


「ひいっ!」


ヘンリーは思わず悲鳴を上げる。
(あぁ、そういえば団長は全く女っ気がなかったな。の人だったってことか。それなら納得だ)
そんなことを考えながら、このまま手籠めにされてしまうのかと諦めムードでいるヘンリーだったが、スコーンは次に思いがけない行動に出た。

ガバッ

「だ、団長・・・?」


なんと力いっぱい土下座し、床に頭を擦りつけ出したのだ。
これはヘンリーも面食らい、逃げ出すのをやめ、とりあえず話だけでも聞くことに決める。


「今ヘンリーにまで見捨てられたら、私はもうどうにかなってしまいそうなのである!話を聞いて欲しいのである!!」


懇願するスコーンに対し、流石に無碍にも出来なくなったヘンリーは腹をくくって話を聞いた。
まとめるとこうだ。

愛するフローラがシュウに攫われて(ただの駆け落ち)以来、フローラがシュウの毒牙の手にかかったことが悔しくて仕方が無かった。
しかし、どういうわけかフローラがシュウの毒牙にかかって既に純潔を散らされたことを考えると、悔しさと憎しみを感じる一方で何故か性的にたぎってしまう自分がいること気付いた。
それ以来、フローラが穢された事実を思い出したり、シュウとの絡みを想像するだけで胸が切なくなりつつも異様に興奮してしまい、どうにも心を持て余してしまうのだという。
そんな自分が良くわからなくなり、恐怖し、自分はおかしくなってしまったのかとずっと部屋で震えていたとスコーンは語った。


「私はどうしてしまったのだ!おかしくなってしまったのか!!フローラ様が探されたことを考えると、おちん〇んがおかしいのである!苦しいのである!」


スコーンが半泣きになりながら言い切るのを、ヘンリーは呆然としながら眺めていた。


「団長・・・それは寝取られが好きだという性癖の表れですね。断じて普通ではありませんが、世の中団長と同じ考えを持つ人は大勢います。ひとまずは団長のみが抱えている問題ではないのでご安心ください」


女っ気が無さ過ぎてめちゃくちゃ拗らせてるぞ・・・とヘンリーは呆れ返りそうになりながらも、どうにか言葉を紡いだ。


「な・・・なんだと?では別におかしいことではないということか?」


「断じて普通ではないと言っているではないですか。はっきり言って異常性癖ですが、一定数そういう人はいます。ですから、まぁ、とりあえず今はそこまで悩まなくてもいいと思います」


聖神教会の、否、帝国ないしの切り札ともいえる白金の騎士団の団長がまさか変態だなんて!
潔癖症の気があるヘンリーは、最初にスコーンがフローラに懸想していたという告白だけで「うわぁ」とげんなりしたが、その嫌悪感などその後のスコーンの性癖の暴露の衝撃で一瞬にして消し飛んでしまった。


「私だけの話ではない・・・か。だとしてもこの苦しみ、どうすれば解放されるのだろうか・・・」


スコーンは身を抱えるようにして蹲り、震え出す。
帝国最強の騎士と呼ばれた男とは思えぬ姿に、ヘンリーは眩暈がしそうになった。


「元聖女フローラが原因であると思うのなら、直接彼女に何とかしてもらえば良いじゃないっすかぁ?」


すっかり敬意を払う気に失われたスコーン相手に、ヘンリーは小指で耳穴をかきながらどうでも良さそうにそう言った。


「そうか・・・それだ!それである!」


「は?」


不幸なことに、スコーンはヘンリーがいい加減に言った言葉を真に受けた。


「もはやこの病は、フローラ様に直接お会いすることでしか克服できない気がするのである!」


「いや、更に拗らせることになりそうな気がしてならないのですが・・・」


「そうと決まれば出撃の準備なのである!」


ヘンリーの言葉も聞かず、スコーンは一人で盛り上がっている。ヘンリーはとんでもないことをしてしまったのではないかと冷や汗を滝のように流していた。


「聖女の身の危険は帝国の危機に直結するという名目でフローラ様を保護しに行くのである!直ちに遠征の準備をせよ!!フローラ様を見つけるのだ!」


「は、はぁ?」


皮肉にもヘンリーの適当な発言により、スコットは不必要なまでにやる気を出してしまった。それも自分の性癖による苦しみの解決のためである。
白金の騎士団は独自の判断により、帝都を出立しフローラ達の足取りを追うことになる。


「こんなことなら・・・引き籠ったままのが良かったよ・・・」


ヘンリーの呟きは、すっかりやる気を出して冷静さを欠いてしまっているスコーンの耳に入ることはなかった。
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