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追跡者達 レウス司教6
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「な、なんだかよくわからんが、とりあえず私への糾弾は・・・今のところは大丈夫なのか?」
レウスは招待客が全員帰ってから、それぞれの客人の様子を思い起こしながら呟いた。
フローラの公開処刑の代わりに馬の交尾の影像を見せてしまい、高額のギャラを払った甲斐もなく大失態を見せてしまったレウスであったが、ルドルフが唐突にして発狂したことにより何となく糾弾ムードが有耶無耶になったことで今回だけは助かった。
しかし、このままではいられない。
早めに次の手を打ち、今度こそシュウ達を始末しなければ、ルドルフはともかくとして他の招待客への示しがつかない。今回は何となく流れただけで、まだレウスの地位が危ういことには違いがないのである。
とはいえ既にギャラを払ったことと、レウスに恥をかかせたことで『光と影』のジャッカルは支払った金額以上の労力と人員を割くことを約束し、再びシュウ達の追跡へと取りかかっていた。
(『光と影』も今回はしくじったとはいえ、それでも帝国で超一流のエージェントだ。きっと次は朗報ももたらしてくれることだろう)
『光と影』、そしてついでにルドルフまでもが私兵を使ってでもシュウ達の追跡をしている。後は自分は何もせず待っているだけで良い結果が来るだろう・・・そう悠長に考えていたレウスの耳に、とんでもない報告が入ることになる。
「は?勇者ライルがシュウ達の追跡に出ただと・・・?そんな話は聞いていないぞ!!」
VIPの対応のために追い返した『光の戦士達』が、「シュウ達の追跡に出る」と言伝を神官に託したことを聞いたレウスは驚愕に震えた。
「そんな勝手なことをしおって・・・何か考えているのか!」
レウスが自分でライルから直接話を聞ける機会を蔑ろにしておいてこの言いざまは・・・と神官は呆れたが、指摘したところで逆上するだけなのでその言葉は飲み込んだ。
「しかし勇者ライルが逃亡者の追跡に加わるのです。これで逃亡者たちが捕まる可能性も上がりますし、悪いことではないのでは?」
神官の指摘に、レウスはカッと目を見開いて叫んだ。
「黙れ!他の誰が追跡に出てもどうでも良いが、勇者ライル達がそんなことにうつつを抜かしてはいかんのだ!!」
レウスは頭を抱える。
神官はそれを見ながら内心で「何を大袈裟な」と呆れていた。
「確かにそりゃわざわざ勇者様が出張ることでもないかもしれませんが・・・」
「そういうことではない。勇者ライルには一刻も早い魔王討伐を成しえてもらわねばならんのだよ!」
以前、まだシュウがパーティーにいた頃、ライルは直近の報告で『近いうちに魔王討伐計画に大きな進展があるかもしれない』とレウスに漏らしていた。例の計画のことであるが、それがシュウを追放したことにより実質実行不可能になったことをレウスはまだ知らない。
「まずい・・・まずいぞ。あの馬鹿勇者が帝都を離れ、魔王とは関係ないことに時間を使うことになるなどと『あの方々』に知れたら・・・まずいぞ・・・」
「司教様・・・?」
神官は首を傾げた。
確かに帝国で多大な期待を寄せられ、魔王討伐の唯一の希望とされている勇者ライルの本分はそのまんま『魔王討伐』であろう。他のことには目もくれるべきではないというのはわからなくもない。
しかし神官にはレウスの怯え方が異常に見えた。別にそこまで魔王退治を急ぐ理由があるのだろうか?と疑問を抱いてしまう。
「捜索隊を出し、ただちに『光の戦士達』に言伝をしろ!『ただちに帝都に戻り、魔王討伐に全力を尽くせ』と!!」
神官はキョトンとして「は?」と間抜けな声を洩らしたが、レウスの鬼気迫る形相を見てすぐに捜索隊の編成に取り掛かった。
「くぅ~~、公開処刑をしようしたらまさかの放送事故!勇者ライルは勝手なことをする!どいつもこいつも!どうしてこう何もかもうまくいかんのだ!!」
レウスは顔を真っ赤にして地団太を踏んだ。
レウスは招待客が全員帰ってから、それぞれの客人の様子を思い起こしながら呟いた。
フローラの公開処刑の代わりに馬の交尾の影像を見せてしまい、高額のギャラを払った甲斐もなく大失態を見せてしまったレウスであったが、ルドルフが唐突にして発狂したことにより何となく糾弾ムードが有耶無耶になったことで今回だけは助かった。
しかし、このままではいられない。
早めに次の手を打ち、今度こそシュウ達を始末しなければ、ルドルフはともかくとして他の招待客への示しがつかない。今回は何となく流れただけで、まだレウスの地位が危ういことには違いがないのである。
とはいえ既にギャラを払ったことと、レウスに恥をかかせたことで『光と影』のジャッカルは支払った金額以上の労力と人員を割くことを約束し、再びシュウ達の追跡へと取りかかっていた。
(『光と影』も今回はしくじったとはいえ、それでも帝国で超一流のエージェントだ。きっと次は朗報ももたらしてくれることだろう)
『光と影』、そしてついでにルドルフまでもが私兵を使ってでもシュウ達の追跡をしている。後は自分は何もせず待っているだけで良い結果が来るだろう・・・そう悠長に考えていたレウスの耳に、とんでもない報告が入ることになる。
「は?勇者ライルがシュウ達の追跡に出ただと・・・?そんな話は聞いていないぞ!!」
VIPの対応のために追い返した『光の戦士達』が、「シュウ達の追跡に出る」と言伝を神官に託したことを聞いたレウスは驚愕に震えた。
「そんな勝手なことをしおって・・・何か考えているのか!」
レウスが自分でライルから直接話を聞ける機会を蔑ろにしておいてこの言いざまは・・・と神官は呆れたが、指摘したところで逆上するだけなのでその言葉は飲み込んだ。
「しかし勇者ライルが逃亡者の追跡に加わるのです。これで逃亡者たちが捕まる可能性も上がりますし、悪いことではないのでは?」
神官の指摘に、レウスはカッと目を見開いて叫んだ。
「黙れ!他の誰が追跡に出てもどうでも良いが、勇者ライル達がそんなことにうつつを抜かしてはいかんのだ!!」
レウスは頭を抱える。
神官はそれを見ながら内心で「何を大袈裟な」と呆れていた。
「確かにそりゃわざわざ勇者様が出張ることでもないかもしれませんが・・・」
「そういうことではない。勇者ライルには一刻も早い魔王討伐を成しえてもらわねばならんのだよ!」
以前、まだシュウがパーティーにいた頃、ライルは直近の報告で『近いうちに魔王討伐計画に大きな進展があるかもしれない』とレウスに漏らしていた。例の計画のことであるが、それがシュウを追放したことにより実質実行不可能になったことをレウスはまだ知らない。
「まずい・・・まずいぞ。あの馬鹿勇者が帝都を離れ、魔王とは関係ないことに時間を使うことになるなどと『あの方々』に知れたら・・・まずいぞ・・・」
「司教様・・・?」
神官は首を傾げた。
確かに帝国で多大な期待を寄せられ、魔王討伐の唯一の希望とされている勇者ライルの本分はそのまんま『魔王討伐』であろう。他のことには目もくれるべきではないというのはわからなくもない。
しかし神官にはレウスの怯え方が異常に見えた。別にそこまで魔王退治を急ぐ理由があるのだろうか?と疑問を抱いてしまう。
「捜索隊を出し、ただちに『光の戦士達』に言伝をしろ!『ただちに帝都に戻り、魔王討伐に全力を尽くせ』と!!」
神官はキョトンとして「は?」と間抜けな声を洩らしたが、レウスの鬼気迫る形相を見てすぐに捜索隊の編成に取り掛かった。
「くぅ~~、公開処刑をしようしたらまさかの放送事故!勇者ライルは勝手なことをする!どいつもこいつも!どうしてこう何もかもうまくいかんのだ!!」
レウスは顔を真っ赤にして地団太を踏んだ。
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