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追跡者達 レウス司教5
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ホワイトキングは宿屋に手紙を託した後、自分が伴侶と定めた雌馬と森林奥でおたのしみしていた。
『光と影』の手の者はシュウ達がいると思ってホワイトキングのところまで来たものの、実際に目にしたのはおたのしみ中のホワイトキング達だけだったのである。
これには『光と影』の者達も唖然とし、影像はホワイトキングを写したままとなっていた。
部屋では二頭の馬の交尾の影像が流れ、嘶きが響き渡る。
パリン
映像を見ていたルドルフの眼鏡のレンズが独りでに割れる。手も触れていないのに不思議なこともあるものであるが、それはまるで今のルドルフの内心の感情を表したかのようであった。
待ち望んでいたフローラの殺害現場を拝めると思って映像を注視していたのに、実際に映し出されたのは馬の交尾なので衝撃を受けるのも仕方がない。
「一体なんだこれは!?」
我に返り、レウスはジャッカルの肩を掴んで叫ぶ。
「お、お待ちください。ターゲットは現場の近くにいるはずです。すぐに見つけてそちらに映像を切り替えます!」
それまで余裕ぶって芝居めいた態度さえ取っていたジャッカルは、流石にこのときばかりは顔面蒼白になって小声で何やら魔道具に向けて呟きだす。
ガリング現地にいる配下に通信により連絡を取っているわけだが、いかんせんガリングまで距離がある故に通信魔法でも実際に声が届くまでタイムラグが生ずる。
ジャッカルの声が現地にいる配下に届くまで、部屋にはホワイトキングの交尾の映像が流れ続けるのであった。
「ふざけるな!なんてものを見せてくれるんだ!!」
「早く映像を消せ!」
「話が違うじゃないか!何を映しているんだ!!」
「やりやがった!あの野郎やりやがった!」
「す、すごい・・・」
「ふ~ん、エッチじゃん」
「はぁ~、ユニコーンも馬と同じ交尾の仕方をするのですね」
「おい聖女たちはどこだ!?」
「聖女だ!聖女を出せ!」
「ぐ、具合が悪くなってきた・・・」
極一部映像に食い入るように見ている者以外のメンツは、皆顔を背けたり、真っ赤になって激怒したりと不快感を表していた。
(な、なんてことだ・・・)
レウスは一気に血の気が引いた。
醜態も醜態。これ以上のないほどの醜態だ。
一同に彼らを集め、フローラの公開処刑を行って留飲を下げさせるつもりが、現実は何故か馬の交尾を見せてしまい怒りを買っている。
一匹はホワイトキングだが、もう一匹は普通の馬のようだ・・・
だが映像を見るに他に回りに何かがいる気配がない。
「シュウ達め・・・まさか、裏をかいてホワイトキングを乗り捨てたというのか?」
口にしておきながら「そんなバカな」とレウスは首を横に振るが、ここでようやく帝都側の音声がガリング側に届いたのか、映像に変化があった。
馬の交尾から視点が外れ、周囲を見回すように映像が動くが、映るのはただただ森林の木々ばかりで生物らしきものは何も映らない。
そして現地の配下達のものと思われる音声が流れる。
『この近辺に馬以外の気配は何もありません。聖女達は森にいない可能性があります。どうやらホワイトキングとは行動を共にしていなかったようです』
「「「なんだと!?」」」
その場にいた一同は驚愕に声をハモらせる。
「そんなバカなことがあるか!よく探してみろ!!」
現実を認められないレウスは半狂乱になって叫ぶが、ジャッカルは首を横に振る。
「残念ですが、あそこにいる私の配下はいずれも追跡者としては一流です。魔力の残滓だけでなく、気配や匂いでもターゲットを追跡できる能力も持っています。その彼らが断言するのですから、あの場にはまずいないと考えて間違いないでしょう」
「なっ・・・」
怒りのあまり、口をパクパクさせるレウス。
ただ追跡して抹殺するだけでなく、それを映像にして保身のために利用してはどうかと提案してきたのはジャッカルだった。
失敗するはずはないし、出費に見合うだけの仕事はしてみせると自信満々に言っていたから、彼が提案する高額なオプションにレウスは乗ってみた。
だが、現実はシュウ達は見つからず、ただただ金をかけただけでついでに醜態まで晒してしまい、保身どころか凋落を決定づけさせてしまってさえいる。
(ああっ、終わった・・・)
レウスは膝をつき、神が真っ白になったかと思うとなん十本かの毛髪がはらりと抜けて地面に落ちた。
『光と影』の手の者はシュウ達がいると思ってホワイトキングのところまで来たものの、実際に目にしたのはおたのしみ中のホワイトキング達だけだったのである。
これには『光と影』の者達も唖然とし、影像はホワイトキングを写したままとなっていた。
部屋では二頭の馬の交尾の影像が流れ、嘶きが響き渡る。
パリン
映像を見ていたルドルフの眼鏡のレンズが独りでに割れる。手も触れていないのに不思議なこともあるものであるが、それはまるで今のルドルフの内心の感情を表したかのようであった。
待ち望んでいたフローラの殺害現場を拝めると思って映像を注視していたのに、実際に映し出されたのは馬の交尾なので衝撃を受けるのも仕方がない。
「一体なんだこれは!?」
我に返り、レウスはジャッカルの肩を掴んで叫ぶ。
「お、お待ちください。ターゲットは現場の近くにいるはずです。すぐに見つけてそちらに映像を切り替えます!」
それまで余裕ぶって芝居めいた態度さえ取っていたジャッカルは、流石にこのときばかりは顔面蒼白になって小声で何やら魔道具に向けて呟きだす。
ガリング現地にいる配下に通信により連絡を取っているわけだが、いかんせんガリングまで距離がある故に通信魔法でも実際に声が届くまでタイムラグが生ずる。
ジャッカルの声が現地にいる配下に届くまで、部屋にはホワイトキングの交尾の映像が流れ続けるのであった。
「ふざけるな!なんてものを見せてくれるんだ!!」
「早く映像を消せ!」
「話が違うじゃないか!何を映しているんだ!!」
「やりやがった!あの野郎やりやがった!」
「す、すごい・・・」
「ふ~ん、エッチじゃん」
「はぁ~、ユニコーンも馬と同じ交尾の仕方をするのですね」
「おい聖女たちはどこだ!?」
「聖女だ!聖女を出せ!」
「ぐ、具合が悪くなってきた・・・」
極一部映像に食い入るように見ている者以外のメンツは、皆顔を背けたり、真っ赤になって激怒したりと不快感を表していた。
(な、なんてことだ・・・)
レウスは一気に血の気が引いた。
醜態も醜態。これ以上のないほどの醜態だ。
一同に彼らを集め、フローラの公開処刑を行って留飲を下げさせるつもりが、現実は何故か馬の交尾を見せてしまい怒りを買っている。
一匹はホワイトキングだが、もう一匹は普通の馬のようだ・・・
だが映像を見るに他に回りに何かがいる気配がない。
「シュウ達め・・・まさか、裏をかいてホワイトキングを乗り捨てたというのか?」
口にしておきながら「そんなバカな」とレウスは首を横に振るが、ここでようやく帝都側の音声がガリング側に届いたのか、映像に変化があった。
馬の交尾から視点が外れ、周囲を見回すように映像が動くが、映るのはただただ森林の木々ばかりで生物らしきものは何も映らない。
そして現地の配下達のものと思われる音声が流れる。
『この近辺に馬以外の気配は何もありません。聖女達は森にいない可能性があります。どうやらホワイトキングとは行動を共にしていなかったようです』
「「「なんだと!?」」」
その場にいた一同は驚愕に声をハモらせる。
「そんなバカなことがあるか!よく探してみろ!!」
現実を認められないレウスは半狂乱になって叫ぶが、ジャッカルは首を横に振る。
「残念ですが、あそこにいる私の配下はいずれも追跡者としては一流です。魔力の残滓だけでなく、気配や匂いでもターゲットを追跡できる能力も持っています。その彼らが断言するのですから、あの場にはまずいないと考えて間違いないでしょう」
「なっ・・・」
怒りのあまり、口をパクパクさせるレウス。
ただ追跡して抹殺するだけでなく、それを映像にして保身のために利用してはどうかと提案してきたのはジャッカルだった。
失敗するはずはないし、出費に見合うだけの仕事はしてみせると自信満々に言っていたから、彼が提案する高額なオプションにレウスは乗ってみた。
だが、現実はシュウ達は見つからず、ただただ金をかけただけでついでに醜態まで晒してしまい、保身どころか凋落を決定づけさせてしまってさえいる。
(ああっ、終わった・・・)
レウスは膝をつき、神が真っ白になったかと思うとなん十本かの毛髪がはらりと抜けて地面に落ちた。
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