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追跡者達 レウス司教2

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一般人に馴染みの無い魔法に、影像魔法というものがある。
静止画を撮る写真という魔法を介せずして誰にでも使える機械は存在するが、動画を撮影する機械はまだ発明されていない。
影像魔法は効果な魔道具を駆使することで、遠くの地にリアルタイムの影像を送り、共有することが出来るというものである。
当然、一般に出回っていないだけの高価な魔道具を使用するだけに、かかるコストは莫大だ。皇族の結婚式などを他国の王族が鑑賞するときに程度にしか使われる機会はない。

『光と影』のエージェントがレウスに勧めたのは、この映像魔法によってシュウ達の殺害現場をレウスに見せるというものだ。
もちろん非常に効果なオプションとなるが、レウスは躊躇いなくそのオプションの実行を命じた。
自分に屈辱を味わわせた人間の死は、やはり自分の目で見ておきたいという歪んだ願望あってのことだが、『光と影』のエージェントはレウスのその気質を見抜いて提案した。


「ただ見るだけでは芸がないな」


レウスはせっかくだからとこのオプションを最大限活用しようと考えた。
それは同じようにシュウとフローラ・・・専らフローラに恨みを抱いている者達にも影像を見せるというものである。

レウスはフローラが聖女でいたとき、彼女の縁談を取りまとめる権限がありながらも、通常の聖女の縁談よりも時間をかけてその相手を吟味していた。より聖神教会に利益をもたらす者を選びたいと考えるが当然であるが、膨大な候補の中から十名ほどに絞りに絞ったところで、先日の駆け落ちが発生して全ての縁談が破談となった。

これによってフローラに恨みを抱いたのはレウスだけではない。
フローラとの縁談が結べることで利権を獲得出来たはずの者、純粋にフローラに恋慕っていた者、フローラを愛玩にしたくて堪らなかった者・・・フローラとの縁談に強い執着を見せていた者は、彼女が駆け落ちという身勝手なことをして自分達の期待を裏切ったことに深い恨みを抱えていた。

レウスは同類を見抜く目に長けており、シュウとフローラの殺害の影像を見たいと考えている人間を呼び寄せ、公開することにしたのである。
これによって縁談の候補者達の溜飲を下げ、また候補者達と「秘密の共有」をすることで、レウスは縁談により作られるコネクションで築かれるはずだった利益の損失を最低限に抑えられるという一石二鳥の案であった。

そしてレウスの招待に応じ、数人の元フローラの婚約者、またはその関係者が聖神教会第5支部のレウスの部屋へ集結した。
帝国の貴族、大商人の息子、果ては皇族もいるというそうそうたる面々である。
皆、シュウ達の公開処刑を拝みたい歪んだ願望を持つ者達であった。


招待客全員が来たことを確認したレウスは、さぁこれからだというときに側近から勇者ライル来訪の報告を受ける。


「今更何しに来た!?今はあやつのことなどは放っておけ!」


けんもほろろにライルを追い返す。
いつもなら手厚くもてなすところだが、ライルなどより優先すべき客が来ているこのときばかりはそうもいかなかった。

それに元はと言えばライルがシュウを追放したことで、フローラは彼と駆け落ちしてしまったといっても良いのである。ライルはレウスにとって出世の可能性をもたらしてくれる存在であるが、同時にフローラという貴重な手札を失わせた原因でもあるのだ。
それにシュウを追放したことについて本人から何の説明も受けていないのも許せるものではなかった。

怒り心頭の今のレウスには、当面ライルを受け入れる心の余裕は無さそうだ。
レウスとライルの間に亀裂が入った瞬間である。
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