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追跡者達 勇者パーティー5

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「体毛・・・って・・・え、毛を?まさか持ってるの・・・?」


唖然としながらもライルはどうにか口を紡ぎ、サーラに問う。
聞いてはいるが、ライルの内心は正直なところ聞き間違えであってほしかった。


「シュウの毛髪・・・持ってるんだ。私の生まれ故郷のおまじないでは、好きな人間の毛髪を集めてお守りを作ると、願いが叶ってその相手の人と一緒になれるっていうのがあって・・・」


ばつが悪そうにそう言うサーラを前に、ライルは深呼吸をして気を落ち着かせた。


「おまじない・・・おまじないかぁ・・・おまじないなら、まぁ多少は仕方がないかなぁ。そういうのは地域柄があるしねぇ」


「東方の国に、そういったまじないがあるところもあるようです」


白目を剝きながらどうにか自身を納得させようとするライルに、横からアイラがフォローを入れた。


「なんにせよ、これで人探しの羅針盤の確度が上がるのであれば良いではないでしょうか」


「そうか。そうだな」


アイラの言葉にどうにかライルは自分を取り戻す。


(毛髪を集めるくらいシュウのことが好きなのかぁ・・・果たして僕のことでサーラの心を上書きできるのだろうか・・・?ふぅ、タフな戦いになりそうだ)


そして見当違いな悩みを勝手に一人で抱くのであった。


「それじゃ、その毛髪を羅針盤の中に入れてみなさい。これで羅針盤の精度がかなり上がるはずだから」


占い業界に長年おり、様々な顧客や同業者を見ているマダム・テレサからすれば、想い人の体毛を集めたりする人間など吐いて捨てるほど見てきたこともあり、特に気にするでもなく話を進める。
そしてマダム・テレサの言う通りに、サーラはシュウの毛髪が入っていると思われる小袋を羅針盤の収納スペースに入れた。


ピタッ


すると先ほどとは違い、羅針盤の針は不安定に動くことなく、ピタリと一定の方向を指すようになった。


「あら、かなり正確になったわね。流石に本人の毛髪を入れればこうなるわね」


『音声案内を開始します。現在いる悪趣味な屋敷を玄関から出ましたら、正面にある交差点を右へ。そのまましばらく道なりです』


音声案内も先ほどよりずっと正確な指示に変わった。
ライル達『光の戦士達』の面々は思わずガッツポーズをとる。


「ヨシッ!これでシュウさんを見つけ出すことができるっ」


一時はどうなることかと思ったが、愛に狂った女二人のおかげでどうにかシュウ追跡の目途がついたことで、ライルは胸をなでおろす。
体を張ってひどい目にあったというのに、シュウを効率よく探すことが出来ないというのではあまりにやりきれないからだ。現状、とりあえずのところは体を張った甲斐があったと言えた。


「あぁ、ちょっと待ちなさい。まだ言っていなかったことがあるの。羅針盤は貴方にあげるけどね・・・でも定期的に私が直接力を注がないといずれ動かなくなるわ。その羅針盤は私の念で動いているのよ。餌と同じね」


「えっ」


「激しく使えば使うだけ念はすぐ切れることになるわ。そのときはまたここまで持ってきなさい。ただし、そのたびに私のダーリンと共に夜を過ごしてもらう・・・これが協力のもう一つの条件よ」


「ええーっ!?」


苦労して羅針盤を手に入れ、もうこの変態占い師と縁が切れると思ったのに、なおも縛り付けられるという事実を突きつけられて、ライルはたまらず悲鳴を上げた。


「「どうぞどうぞ」」


サーラ達はライルに代わり、勝手に返事をする。
彼女らにしてみればライルは愛するシュウの宿敵なので、ライルの困ることは基本何でも歓迎である。


「探し人の場所がわかるといっても、結局は時間との闘いなのよ。こうしている間にも相手は帝都から離れているわ。羅針盤は普通に使っている分には数週間は持つけど、積極的に使い続けているとあっという間に力は尽きるわ。もうここに戻ってくることが嫌だったら、そうならないよううまく使うことね」


理不尽に感じ、怒りに任せて羅針盤を思わず突き返そうかと思ったライルだったが、それこそまさに昨晩の苦労が一瞬にして水の泡になるのでグッとその感情を飲み込んだ。


(シュウさん・・・これもそれも何もかも全てシュウさんのせいだ・・・!)


なんだかんだ不安要素は残しつつも、『光の戦士達』はシュウ達のいるところを目指して追跡を開始することが出来た。
しかしライルの見当違いの逆恨みで、彼はますますシュウへの憎悪を深めていくことになる。
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