96 / 464
追跡者達 勇者パーティー3
しおりを挟む
「うぅ・・・ひどい目にあった・・・」
マダム・テレサの屋敷を訪れた翌日、契約通り一晩テレサの夫の相手をしたライルは、ゲッソリとやせ細りプルプルと体を震わせながら、改めて屋敷の応接室にやってきた『光の戦士達』の面々の前に姿を現した。
顔は青白く、何やら足は内股で、何となく覇気がない。
メンバーはライルを見ただけで「あっ・・・(察し)」と昨晩何があったのかと理解してしまったほどだ。
「どうでしたか?」
こそっとライルにそう訊ねるアイラ。
無表情だが、どこか興味津々でウキウキしている様子であった。
「す、凄かった・・・危うく新たな世界の扉を開かれて戻って来られなくなりそうで・・・って、そんなことはどうでも良くてっ!!」
どこか恍惚な表情で答えたライルは、途中で何かを振り払うかのようにブンブンと力強く首を横に振り、キッとマダム・テレサを睨みつけた。
「これで約約通りにアイテムを譲って下さるのですよね!」
酷い目にはあったが、当初来た目的を果たせるのだから良いだろうとライルは考え、手を伸ばしてマダム・テレサにアイテムを強請る。
「えぇ、もちろんよ」
マダム・テレサは満足そうに微笑むと、傍に控える従者に目配せをする。
従者は小さな箱を持ってくると、それを丁寧に開封した。
「これは・・・」
箱の中から出てきたのは、羅針盤のようなものだった。
「説明は簡単。この羅針盤の下の収納スペースに探し人の身に着けているものだとか、関係のあるものを入れてその人を見つけたいと強く念ずる・・・そうすることでこの羅針盤は探し人のいる場所を指し示すことが出来るのよ」
「おおっ!」
これでようやくシュウを見つけ出すことが出来る。
屋敷で丸一日を無駄にしてしまったが、その遅れを取り戻せるだけの画期的なアイテムを入手出来たことでライルの苦労もひとしおであった。
「ただし」
しかしそんなホッとした表情を見せたライルに対して、マダム・テレサは意地悪そうな笑みを浮かべて言った。
「探し人に関する物は関連が深ければ深いほどその指し示す方向は正確になるだけど、浅ければ浅くなるほど示す方向は大雑把になるわ。例えば羅針盤に取り込むのが探し人の匂いのするものなら、日が経過して匂いが薄まれば薄まるほどどんどん方向も大雑把になるのよ」
「な、何だって・・・?」
シュウの場所がわかるのであれば、多少の時間の遅れなど問題はないと考えていたライルは、ここに来てまた時間との戦いが訪れてきてしまったことに戦慄した。
「シュウさんの物・・・何かあったか?」
ライルが思わずパーティーメンバーを見やると、皆難しそうな顔をして俯いている。
やがてアイラがはぁと小さく溜め息をついてから言った。
「拠点を探してみなければわかりませんが、シュウは元々私物はほとんど自室に持ち込んでいませんでした。数少ない残ったものも、勇者様が『もう戻ってこない人間のものなんて残しておいても意味はないから、さっさと処分してくれたまえよ』と言ったので、早々に処分してしまいましたし」
「げっ・・・」
こんなことになるなどとは想像していなかったとはいえ、ライルは自分の迂闊さを詰りたくなった。シュウを探すスグレモノが手に入ったかと思えば、それを使うために必要なものが残っていないのだ。
追放したシュウの痕跡をさっさと消そうとライルが考えていたとはいえ、普通は追放されたメンバーの私物をいつまでも放置してはおくまい。それでも拠点をひっくり返せば何かしら見つかるだろうかとライルは考えていたのだが・・・
「シュウ先輩の物か・・・随分前のもので良ければ、あるにはあるっス」
重苦しい雰囲気の中、おずおずと手を上げたのはアリエスだった。
「え?」
唖然とするライルを前に、アリエスは常に携帯している道具袋から何やら小物を取り出した。
「これはシュウ先輩に貰ったお守りで、これはシュウ先輩に貰ったハンカチ。これはシュウ先輩が使っていたタオル・・・えーとそれから・・・」
次から次へと袋から「どうやって収納していたんだ」という疑問が湧いて出てくるくらいシュウゆかりの物を取り出すアリエスを、メンバーの皆が怪訝な目で見ていた。
「お前どれだけシュウのこと好きだったんだよ」と。
マダム・テレサの屋敷を訪れた翌日、契約通り一晩テレサの夫の相手をしたライルは、ゲッソリとやせ細りプルプルと体を震わせながら、改めて屋敷の応接室にやってきた『光の戦士達』の面々の前に姿を現した。
顔は青白く、何やら足は内股で、何となく覇気がない。
メンバーはライルを見ただけで「あっ・・・(察し)」と昨晩何があったのかと理解してしまったほどだ。
「どうでしたか?」
こそっとライルにそう訊ねるアイラ。
無表情だが、どこか興味津々でウキウキしている様子であった。
「す、凄かった・・・危うく新たな世界の扉を開かれて戻って来られなくなりそうで・・・って、そんなことはどうでも良くてっ!!」
どこか恍惚な表情で答えたライルは、途中で何かを振り払うかのようにブンブンと力強く首を横に振り、キッとマダム・テレサを睨みつけた。
「これで約約通りにアイテムを譲って下さるのですよね!」
酷い目にはあったが、当初来た目的を果たせるのだから良いだろうとライルは考え、手を伸ばしてマダム・テレサにアイテムを強請る。
「えぇ、もちろんよ」
マダム・テレサは満足そうに微笑むと、傍に控える従者に目配せをする。
従者は小さな箱を持ってくると、それを丁寧に開封した。
「これは・・・」
箱の中から出てきたのは、羅針盤のようなものだった。
「説明は簡単。この羅針盤の下の収納スペースに探し人の身に着けているものだとか、関係のあるものを入れてその人を見つけたいと強く念ずる・・・そうすることでこの羅針盤は探し人のいる場所を指し示すことが出来るのよ」
「おおっ!」
これでようやくシュウを見つけ出すことが出来る。
屋敷で丸一日を無駄にしてしまったが、その遅れを取り戻せるだけの画期的なアイテムを入手出来たことでライルの苦労もひとしおであった。
「ただし」
しかしそんなホッとした表情を見せたライルに対して、マダム・テレサは意地悪そうな笑みを浮かべて言った。
「探し人に関する物は関連が深ければ深いほどその指し示す方向は正確になるだけど、浅ければ浅くなるほど示す方向は大雑把になるわ。例えば羅針盤に取り込むのが探し人の匂いのするものなら、日が経過して匂いが薄まれば薄まるほどどんどん方向も大雑把になるのよ」
「な、何だって・・・?」
シュウの場所がわかるのであれば、多少の時間の遅れなど問題はないと考えていたライルは、ここに来てまた時間との戦いが訪れてきてしまったことに戦慄した。
「シュウさんの物・・・何かあったか?」
ライルが思わずパーティーメンバーを見やると、皆難しそうな顔をして俯いている。
やがてアイラがはぁと小さく溜め息をついてから言った。
「拠点を探してみなければわかりませんが、シュウは元々私物はほとんど自室に持ち込んでいませんでした。数少ない残ったものも、勇者様が『もう戻ってこない人間のものなんて残しておいても意味はないから、さっさと処分してくれたまえよ』と言ったので、早々に処分してしまいましたし」
「げっ・・・」
こんなことになるなどとは想像していなかったとはいえ、ライルは自分の迂闊さを詰りたくなった。シュウを探すスグレモノが手に入ったかと思えば、それを使うために必要なものが残っていないのだ。
追放したシュウの痕跡をさっさと消そうとライルが考えていたとはいえ、普通は追放されたメンバーの私物をいつまでも放置してはおくまい。それでも拠点をひっくり返せば何かしら見つかるだろうかとライルは考えていたのだが・・・
「シュウ先輩の物か・・・随分前のもので良ければ、あるにはあるっス」
重苦しい雰囲気の中、おずおずと手を上げたのはアリエスだった。
「え?」
唖然とするライルを前に、アリエスは常に携帯している道具袋から何やら小物を取り出した。
「これはシュウ先輩に貰ったお守りで、これはシュウ先輩に貰ったハンカチ。これはシュウ先輩が使っていたタオル・・・えーとそれから・・・」
次から次へと袋から「どうやって収納していたんだ」という疑問が湧いて出てくるくらいシュウゆかりの物を取り出すアリエスを、メンバーの皆が怪訝な目で見ていた。
「お前どれだけシュウのこと好きだったんだよ」と。
10
お気に入りに追加
206
あなたにおすすめの小説
実力を隠し「例え長男でも無能に家は継がせん。他家に養子に出す」と親父殿に言われたところまでは計算通りだったが、まさかハーレム生活になるとは
竹井ゴールド
ライト文芸
日本国内トップ5に入る異能力者の名家、東条院。
その宗家本流の嫡子に生まれた東条院青夜は子供の頃に実母に「16歳までに東条院の家を出ないと命を落とす事になる」と予言され、無能を演じ続け、父親や後妻、異母弟や異母妹、親族や許嫁に馬鹿にされながらも、念願適って中学卒業の春休みに東条院家から田中家に養子に出された。
青夜は4月が誕生日なのでギリギリ16歳までに家を出た訳だが。
その後がよろしくない。
青夜を引き取った田中家の義父、一狼は53歳ながら若い妻を持ち、4人の娘の父親でもあったからだ。
妻、21歳、一狼の8人目の妻、愛。
長女、25歳、皇宮警察の異能力部隊所属、弥生。
次女、22歳、田中流空手道場の師範代、葉月。
三女、19歳、離婚したフランス系アメリカ人の3人目の妻が産んだハーフ、アンジェリカ。
四女、17歳、死別した4人目の妻が産んだ中国系ハーフ、シャンリー。
この5人とも青夜は家族となり、
・・・何これ? 少し想定外なんだけど。
【2023/3/23、24hポイント26万4600pt突破】
【2023/7/11、累計ポイント550万pt突破】
【2023/6/5、お気に入り数2130突破】
【アルファポリスのみの投稿です】
【第6回ライト文芸大賞、22万7046pt、2位】
【2023/6/30、メールが来て出版申請、8/1、慰めメール】
【未完】
病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない
月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。
人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。
2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事)
。
誰も俺に気付いてはくれない。そう。
2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。
もう、全部どうでもよく感じた。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
幼馴染と話し合って恋人になってみた→夫婦になってみた
久野真一
青春
最近の俺はちょっとした悩みを抱えている。クラスメート曰く、
幼馴染である百合(ゆり)と仲が良すぎるせいで付き合ってるか気になるらしい。
堀川百合(ほりかわゆり)。美人で成績優秀、運動完璧だけど朝が弱くてゲーム好きな天才肌の女の子。
猫みたいに気まぐれだけど優しい一面もあるそんな女の子。
百合とはゲームや面白いことが好きなところが馬が合って仲の良い関係を続けている。
そんな百合は今年は隣のクラス。俺と付き合ってるのかよく勘ぐられるらしい。
男女が仲良くしてるからすぐ付き合ってるだの何だの勘ぐってくるのは困る。
とはいえ。百合は異性としても魅力的なわけで付き合ってみたいという気持ちもある。
そんなことを悩んでいたある日の下校途中。百合から
「修二は私と恋人になりたい?」
なんて聞かれた。考えた末の言葉らしい。
百合としても満更じゃないのなら恋人になるのを躊躇する理由もない。
「なれたらいいと思ってる」
少し曖昧な返事とともに恋人になった俺たち。
食べさせあいをしたり、キスやその先もしてみたり。
恋人になった後は今までよりもっと楽しい毎日。
そんな俺達は大学に入る時に籍を入れて学生夫婦としての生活も開始。
夜一緒に寝たり、一緒に大学の講義を受けたり、新婚旅行に行ったりと
新婚生活も満喫中。
これは俺と百合が恋人としてイチャイチャしたり、
新婚生活を楽しんだりする、甘くてほのぼのとする日常のお話。
美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった
ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます!
僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか?
『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる