追放の破戒僧は女難から逃げられない

はにわ

文字の大きさ
上 下
90 / 479

色香には勝てなかったよ

しおりを挟む
「シュウ様?一体どうされたのですか?」


封筒を手に取って何とも言えないような顔をしているシュウをフローラは不思議に思った。


「ええと、『ホワイトゥール・キンケード・グレイ7世』・・・だそうです。誰か知っていますか?」


「・・・あぁ!」


知らないだろうな・・・と思いながらシュウが問うと、フローラはポンと手を叩き納得したようなリアクションをした。


「ホワイトキングの本名ですよ」


「えっ!?あの馬の!!?」


聞いたこともない長ったらしい名前で一体どこの貴族かと思えば、まさかの武骨な白馬の本名であると知り、シュウは愕然とする。


「名前が長いから呼びやすいように私が略してみたんです。ホワイトティー・キンケドゥ・グレンダイザー7世・・・略してホワイトキングです。丁度あの子は白いし、悪くないと思いませんか?」


「あの、さっきと本名違ってますよフローラ?!本当に覚えているんですか!?それに白馬だからホワイトキングって名前にしたわけじゃなくて?・・・って、それよりもあの馬が手紙を書いてよこしたということですか?」


「なんて書いてあるか読んでみますね」


フローラは手紙を手に取ると、最初は顔を赤らめていたが、そのうちに顔を真っ青にして呆然としだした。
手に持っていた手紙がはらりと床に落ちても、彼女はそれに意識を向けることはなく硬直したままであった。


「フローラ・・・?」


フローラの様子が気になったシュウは、彼女が落とした手紙を拾い上げる。
一体何が書いてあるのか?ドキドキしながらシュウは中身に目を通した。


「やだ・・・とっても達筆じゃないですか。一体蹄でどうやって書いたのやら・・・って・・・」


一通り手紙に目を通したシュウは、読み終えるとフローラと同じように呆然とする。


「な・・・まさか・・・」


手紙の内容はこうであった。

宿屋に泊まったシュウ達と別れて近場の森の中で夜を明かそうと思ったホワイトキングは、そこで自分好みの野生の雌馬と偶然出会った。
はっちゃけて雌馬としてしまい、すっかり雌馬に情が移ってしまったホワイトキングは責任を取って森でその雌馬と暮らすことにしたのだという。

つまり、もう逃避行にはホワイトキングは同行できなくなりましたよということで手紙は締めくくられていたのである。


「はあああああ!?」


楽観的といえるシュウもフローラも、流石にこの事態には唖然とせざるを得なかった。まだ逃避行を初めて間もないうちからのんきに宿屋で一泊したのも、ホワイトキングの快足に頼っていたところがあったからだ。
しかし、そのホワイトキングの足を逃亡に使うことができなくなった以上、シュウ達の間に流れていた過度なレベルの楽観的な空気は一気に消し飛ぶことになってしまった。


「ユニコーンじゃなかったんですかあの馬は!?色香に惑わされてしまうなど情けない!」


シュウは自分のことを棚に上げて怒り、手にもっていた手紙をべしっと床にたたきつける。


「あわわわわわわわわ」


余裕そうにしていたフローラも、今回ばかりは流石にこの事態に舌を巻いてテンパった。
便利な移動手段が色情に狂ってしまったがために、二人の逃避行にのっけから暗雲が立ち込めてしまったのである。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

高身長お姉さん達に囲まれてると思ったらここは貞操逆転世界でした。〜どうやら元の世界には帰れないので、今を謳歌しようと思います〜

水国 水
恋愛
ある日、阿宮 海(あみや かい)はバイト先から自転車で家へ帰っていた。 その時、快晴で雲一つ無い空が急変し、突如、周囲に濃い霧に包まれる。 危険を感じた阿宮は自転車を押して帰ることにした。そして徒歩で歩き、喉も乾いてきた時、運良く喫茶店の看板を発見する。 彼は霧が晴れるまでそこで休憩しようと思い、扉を開く。そこには女性の店員が一人居るだけだった。 初めは男装だと考えていた女性の店員、阿宮と会話していくうちに彼が男性だということに気がついた。そして同時に阿宮も世界の常識がおかしいことに気がつく。 そして話していくうちに貞操逆転世界へ転移してしまったことを知る。 警察へ連れて行かれ、戸籍がないことも発覚し、家もない状況。先が不安ではあるが、戻れないだろうと考え新たな世界で生きていくことを決意した。 これはひょんなことから貞操逆転世界に転移してしまった阿宮が高身長女子と関わり、関係を深めながら貞操逆転世界を謳歌する話。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

うちの冷蔵庫がダンジョンになった

空志戸レミ
ファンタジー
一二三大賞3:コミカライズ賞受賞 ある日の事、突然世界中にモンスターの跋扈するダンジョンが現れたことで人々は戦慄。 そんななかしがないサラリーマンの住むアパートに置かれた古びた2ドア冷蔵庫もまた、なぜかダンジョンと繋がってしまう。部屋の借主である男は酷く困惑しつつもその魔性に惹かれ、このひとりしか知らないダンジョンの攻略に乗り出すのだった…。

誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!

ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく  高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。  高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。  しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。  召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。 ※カクヨムでも連載しています

貞操観念逆転世界におけるニートの日常

猫丸
恋愛
男女比1:100。 女性の価値が著しく低下した世界へやってきた【大鳥奏】という一人の少年。 夢のような世界で彼が望んだのは、ラブコメでも、ハーレムでもなく、男の希少性を利用した引き籠り生活だった。 ネトゲは楽しいし、一人は気楽だし、学校行かなくてもいいとか最高だし。 しかし、男女の比率が大きく偏った逆転世界は、そんな彼を放っておくはずもなく…… 『カナデさんってもしかして男なんじゃ……?』 『ないでしょw』 『ないと思うけど……え、マジ?』 これは貞操観念逆転世界にやってきた大鳥奏という少年が世界との関わりを断ち自宅からほとんど出ない物語。 貞操観念逆転世界のハーレム主人公を拒んだ一人のネットゲーマーの引き籠り譚である。

処理中です...