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私の愛は狂暴です 20

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新聞記者のラッツと話がついた後、フローラは続々と部屋に集まってくる人間に矢継ぎ早に指示を出す。


「シュウ様の負っている債務に見落としがないが、もう一度チェックしてください」


「債権者にシュウ様が夜に例の店に来ることを伝えるように。ただ、取り立てに関しては私からの合図があってからということを厳命してください」


「シュウ様の使っている宿屋が判明しましたか?結構。一応私の置手紙は翌日まで発見されないようにしますが、宿屋への聖騎士の捜索は翌日までは入らないように念のため手を回しておいてください」


「翌日です。翌日になったら帝都各所に私とシュウ様の駆け落ちについての噂を流すようにお願いしますね。あくまで自然に広がるように、うまくやってください」


聖神教会神官、聖騎士、情報屋まで、フローラの手のかかっているものが何人も入れ替わり立ち代わりでやってくる。すべて『Fプラン』実行のために必要な者達だ。
シュウとは夜に酒場で会う約束になっているが、フローラにはそれまで無駄にする時間など一分とてなかった。
元々が壮大な計画であるうえに、あまりに急なタイミングで実行することを余儀なくされてしまったので仕方がなかった。


「まったく、勇者ライルというのは想像以上に愚か者だったんですね。けどまぁ、お陰でライバルを出し抜ける可能性が高くなりましたから、そこだけは感謝しても良いかもしれません」


シュウと同じパーティーだったサーラとアリエスは、何らかの事情があったのかもしれないがシュウの追放に同意したという。ならば追放したばかりの今夜のうちにシュウを連れ戻したり、抜け駆けするようなことはしないはずだとフローラは考える。
となると、シュウを強引にでもモノに出来る最大のチャンスは今だとフローラは確信していた。
結果としてフローラの読みは的中し、サーラ達を完全に出し抜くことに成功するのだが、まだそれを知らぬフローラはとにかく一秒でも惜しむように出来ること全てをやり遂げようとしていた。


「シュウには『光の戦士達』からと、司教レウスより多額の手切れ金が渡されているそうです」


情報屋が自分が仕入れた情報をフローラに伝えると、彼女は眉をしかめて考え込んだ。


「手切れ金ですか・・・普通こういうのって『その装備はパーティーのものだから置いていけ』とか『これまでの迷惑料替わりにこの金は没収だ』などと言って、むしろ追剥ぎして追い出すものじゃないんですか?勇者ライルも司教もどうしてこんなときに限って律儀なのか・・・」


はぁとフローラはため息をつく。


「最近では冒険者ギルドのお達しにより、冒険者パーティー内でそういった追剥ぎ行為を禁止しているみたいですよ。勇者がシュウに金を渡したのは、あくまで世間体を気にしてのことか・・・それともほかに事情があったのかまではわかってませんがね」


「あら、とはいえシュウ様の婚約内定者だったレーナを寝取っておきながら、金を渡して世間体に配慮・・・ですか?勇者ライルも大したモラリストだこと・・・」


勇者ライルを侮蔑する発言をするフローラだが、情報屋は内心「アンタもこれから大概のことするじゃねーか」と思っていた。


「債権者には連絡しましたが、もしかすると足りないかもしれませんね・・・あまり行きたい場所ではありませんが、ダメ押しする必要があるかも・・・」


しばし考え込んだフローラは、お忍び用のローブを手に取ると、それを羽織って出かける準備をした。


「これから少し出かけてきます。申し訳ありませんが、それまで私の不在についてはうまく隠しておいてもらえますか?」


神官達が困惑しながら頷くと、フローラは認識阻害の魔法を使いながら部屋を出て行った。
客人がいるからと部屋の外に待機させた侍女や護衛騎士には気づかれず、フローラはあるところを目指して速足で向かう。


「娼館か・・・二度と行きたいところじゃなかったんですけど」


フローラが向かった先は、シュウが常連として通っていた娼館だった。
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