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私の愛は狂暴です 19
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「ええっ?ま、まさか本当に『Fプラン』を実行するんですか!?」
帝都でも有力の新聞社の記者である二十代の男性記者ラッツは、聖神教会のフローラの部屋に呼び出されたかと思うと、唐突に『Fプラン』の実行をすると伝えられ、正しく腰を抜かすほど仰天してから大袈裟に声を上げた。
「そうです。失礼ながらも急遽貴方をここにお呼び出しした理由はそれです」
フローラは目を伏せ申し訳なさそうな顔をしながらそう言った。
シュウと密会の約束を取り付けた後、フローラはすぐさまラッツを聖神教会の自分の部屋へ呼び出したのだ。『Fプラン』実行はは迅速に、かつ極秘に進めていかねばならぬこと。聖神教会の聖女の自室こそが誰一人として侵入も盗聴も出来ぬ安全に会話が出来る場所なので、不躾ではあると思ったがやまれずラッツを呼び出したのだ。
「いや・・・確かに『いずれあるかもしれない』と言われた可能性の一つとして聞いていたプランではありましたが、まさか本当にあるなんて・・・信じられない思いです」
ラッツはまだ困惑しているといった様子で、目の前に出された紅茶を手に取ろうとするもその手が震えている。
「ラッツさんにすぐにお越し頂けたのは僥倖でした。これより『Fプラン』を実行します。私は今日にでも聖女であることを辞め、シュウ様と駆け落ちします」
ドンッと効果音が聞こえそうなほど堂々と言ってのけたフローラを見て、ラッツは「あぁ、いよいよ本気なんだな」と溜め息をつき、頭を抱えたくなった。
このラッツはフローラが特別懇意にしており、聖女になるにあたって大きく貢献してきた人物である。
フローラが聖女になった要因の一つとして帝都民の人望が厚いというのがあるが、彼女が被災地へ訪問したり、危険な騎士団の遠征に随伴したりと人一倍慈善活動に力を入れていたことを筆を通して人々に発信していた。
フローラの記事は帝都民にも好評であり、聖女ともなった彼女とパイプを持つ彼は新聞社でも期待の星とされていた。
ラッツ個人としても、記者として蜜にフローラと接するうちに心から応援するようになったし、自分より年下でありながらも誰よりも高い能力を持ちながら、頑張り屋である彼女がどこまで伝説の存在として昇り詰める存在になるのか楽しみだった。
しかし、そんなフローラは今日を限りに聖女を辞めるという。これにラッツは深い落胆を感じた。ラッツはフローラがシュウに懸想していることを知っている。だからこそ「仕方がない」と頭では理解できているが、すぐには気持ちの整理が出来なかった。
だがそんなラッツは、フローラの『Fプラン』に実行に必要不可欠な人材だ。新聞を通してフローラ達の行動を正当化してもらわないといけないからである。
だからフローラはどうにかラッツを協力を得ようと、頭を深く下げた。
「善き聖女になるというご期待に添えず申し訳ありません。誠に勝手な話ではありますが、どうか私の願いを聞き入れては頂けませんでしょうか?」
「い、いやっ、その、頭を上げてください!」
辞めるつもりであるとはいえ、フローラは聖女である。そんな彼女に頭を下げられてはたまらない。
それにラッツはフローラの決意が生半可なものではないことも知っていた。若くして普段人の為、教会のために献身している彼女の強い願いを、どうして無碍にすることなど出来ようか。
「少々驚きましたが、協力はさせてもらいますよ。何でも書きましょう。どんな演技でもいたしましょう」
「ありがとうございます」
ラッツの返答を聞いて、フローラは嬉しそうに微笑んで礼を言う。
(あぁ、この笑顔を見るのも最後になるのかな)
ラッツはフローラの微笑みを見ながらそう思った。ラッツがフローラに入れ込んだきっかけは彼女のその笑顔だったのだ。見納めとなると寂しい気持ちになる。
「それにしても駆け落ちですか・・・その意中の彼は果報者ですね。フローラ様とこれほど強く想い合っていられるとは」
ようやく気を落ち着けたラッツは、今度は手を震わせることなく紅茶のカップを手に取った。
しかしそれを言われたフローラは一瞬きょとんとした表情になって硬直してから、今度はバツが悪そうな顔をして言いづらそうにもごもごしながらも、しばらくしてやっと口を開いた。
「想い合う・・・というのは、その、予定の話といいますか、今現在ではまだ片思いの段階でして・・・」
「え?」
ラッツは耳を疑った。
紅茶を飲もうとした手が止まる。
「いえ、その気になれば想い合えるところまですぐに持っていくことは出来るんですよ?!けど、まぁ、その辺はおいおいというか・・・」
「えっ・・・その駆け落ちのお相手は・・・まだ片思いということですか?向こうの意思は・・・?」
「ま、まぁ、その辺はいいじゃないですか!なんとか勢いで乗り気ってみせますから!あ、いい仕事お願いしますね!お礼の方も弾ませていただきますから・・・」
当然の疑問を呈すラッツに、フローラは勢いで有耶無耶にしようと必死になった。
ラッツはそんなフローラを見て言いようのない違和感を感じる。
(世間を騒がせるような駆け落ちに想い人を一方的に巻き込んで、事後承諾させる?しかもまだ片思い・・・?あれ・・・?この子、もしかして結構ヤバい子・・・?)
そう考えるとラッツの全身から冷や汗が噴出した。
帝都でも有力の新聞社の記者である二十代の男性記者ラッツは、聖神教会のフローラの部屋に呼び出されたかと思うと、唐突に『Fプラン』の実行をすると伝えられ、正しく腰を抜かすほど仰天してから大袈裟に声を上げた。
「そうです。失礼ながらも急遽貴方をここにお呼び出しした理由はそれです」
フローラは目を伏せ申し訳なさそうな顔をしながらそう言った。
シュウと密会の約束を取り付けた後、フローラはすぐさまラッツを聖神教会の自分の部屋へ呼び出したのだ。『Fプラン』実行はは迅速に、かつ極秘に進めていかねばならぬこと。聖神教会の聖女の自室こそが誰一人として侵入も盗聴も出来ぬ安全に会話が出来る場所なので、不躾ではあると思ったがやまれずラッツを呼び出したのだ。
「いや・・・確かに『いずれあるかもしれない』と言われた可能性の一つとして聞いていたプランではありましたが、まさか本当にあるなんて・・・信じられない思いです」
ラッツはまだ困惑しているといった様子で、目の前に出された紅茶を手に取ろうとするもその手が震えている。
「ラッツさんにすぐにお越し頂けたのは僥倖でした。これより『Fプラン』を実行します。私は今日にでも聖女であることを辞め、シュウ様と駆け落ちします」
ドンッと効果音が聞こえそうなほど堂々と言ってのけたフローラを見て、ラッツは「あぁ、いよいよ本気なんだな」と溜め息をつき、頭を抱えたくなった。
このラッツはフローラが特別懇意にしており、聖女になるにあたって大きく貢献してきた人物である。
フローラが聖女になった要因の一つとして帝都民の人望が厚いというのがあるが、彼女が被災地へ訪問したり、危険な騎士団の遠征に随伴したりと人一倍慈善活動に力を入れていたことを筆を通して人々に発信していた。
フローラの記事は帝都民にも好評であり、聖女ともなった彼女とパイプを持つ彼は新聞社でも期待の星とされていた。
ラッツ個人としても、記者として蜜にフローラと接するうちに心から応援するようになったし、自分より年下でありながらも誰よりも高い能力を持ちながら、頑張り屋である彼女がどこまで伝説の存在として昇り詰める存在になるのか楽しみだった。
しかし、そんなフローラは今日を限りに聖女を辞めるという。これにラッツは深い落胆を感じた。ラッツはフローラがシュウに懸想していることを知っている。だからこそ「仕方がない」と頭では理解できているが、すぐには気持ちの整理が出来なかった。
だがそんなラッツは、フローラの『Fプラン』に実行に必要不可欠な人材だ。新聞を通してフローラ達の行動を正当化してもらわないといけないからである。
だからフローラはどうにかラッツを協力を得ようと、頭を深く下げた。
「善き聖女になるというご期待に添えず申し訳ありません。誠に勝手な話ではありますが、どうか私の願いを聞き入れては頂けませんでしょうか?」
「い、いやっ、その、頭を上げてください!」
辞めるつもりであるとはいえ、フローラは聖女である。そんな彼女に頭を下げられてはたまらない。
それにラッツはフローラの決意が生半可なものではないことも知っていた。若くして普段人の為、教会のために献身している彼女の強い願いを、どうして無碍にすることなど出来ようか。
「少々驚きましたが、協力はさせてもらいますよ。何でも書きましょう。どんな演技でもいたしましょう」
「ありがとうございます」
ラッツの返答を聞いて、フローラは嬉しそうに微笑んで礼を言う。
(あぁ、この笑顔を見るのも最後になるのかな)
ラッツはフローラの微笑みを見ながらそう思った。ラッツがフローラに入れ込んだきっかけは彼女のその笑顔だったのだ。見納めとなると寂しい気持ちになる。
「それにしても駆け落ちですか・・・その意中の彼は果報者ですね。フローラ様とこれほど強く想い合っていられるとは」
ようやく気を落ち着けたラッツは、今度は手を震わせることなく紅茶のカップを手に取った。
しかしそれを言われたフローラは一瞬きょとんとした表情になって硬直してから、今度はバツが悪そうな顔をして言いづらそうにもごもごしながらも、しばらくしてやっと口を開いた。
「想い合う・・・というのは、その、予定の話といいますか、今現在ではまだ片思いの段階でして・・・」
「え?」
ラッツは耳を疑った。
紅茶を飲もうとした手が止まる。
「いえ、その気になれば想い合えるところまですぐに持っていくことは出来るんですよ?!けど、まぁ、その辺はおいおいというか・・・」
「えっ・・・その駆け落ちのお相手は・・・まだ片思いということですか?向こうの意思は・・・?」
「ま、まぁ、その辺はいいじゃないですか!なんとか勢いで乗り気ってみせますから!あ、いい仕事お願いしますね!お礼の方も弾ませていただきますから・・・」
当然の疑問を呈すラッツに、フローラは勢いで有耶無耶にしようと必死になった。
ラッツはそんなフローラを見て言いようのない違和感を感じる。
(世間を騒がせるような駆け落ちに想い人を一方的に巻き込んで、事後承諾させる?しかもまだ片思い・・・?あれ・・・?この子、もしかして結構ヤバい子・・・?)
そう考えるとラッツの全身から冷や汗が噴出した。
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