上 下
78 / 464

私の愛は狂暴です 15

しおりを挟む
ある日、『光の戦士達』がメンバー全員でレウス司教の元を訊ねてきた。
フローラはメンバーの様子を遠巻きに見ていたが、ライルとレーナについてあることに気が付いた。


(あの二人・・・多分本当にデキた・・・)


予めレーナ達について報告を受けて事情を知っていたフローラでさえ注視しなければわからないレベルだが、ライルとレーナの距離感が明らかに縮まっているのが見て取れた。たまに顔を会わせるフローラが気付くのだから、同じパーティーメンバーであるシュウ達が気付かないはずもない。そのせいだろうか・・・シュウとレーナの間には、どこかぎこちない空気が流れているように見えた。


(なんということでしょう。パーティークラッシュ目前ではないですか)


フローラは両手を頬に添え、歓喜で赤面しながら「はぅ~・・・」と声を洩らしプルプルと震えていた。
それを見ている教徒達が怪訝な目を向けているが気にも留めない。

フローラが蒔いた種は、期待通りの花を咲かせていた。
フローラがそうなるよう誘導したとはいえ、あくまでレーナがライルと不貞(?)したのは自分の意志によるものだ。だからフローラには達成感こそあれど、罪悪感など微塵も無かった。


(私のあの程度の横槍で浮気してしまう程度の気持ちなら、いずれレーナさんは不貞をして関係は破綻していたのでは?)


むしろそんな自己弁護すら考えていた。

フローラはライルが持つ『魅了』のスキルを知らない。よってライルとレーナの間に何があったかについて本当の意味では理解はしていないのだ。
だが、そんなことはどうでも良かった。フローラにとって大事なのは、シュウとレーナを遠ざけることに成功した・・・ただこの事実だけなのだから。

シュウとレーナのことは終わったことだ。
レーナがライルと男女の関係になり、そしてレーナの父であるレウス司教が、二人の婚姻を強く望む以上、シュウとレーナの復縁はあり得ないとフローラは考えている。

シュウを手に入れるにあたって目下最大の障害はほぼ消えたと言って良い。だが、フローラにとっての脅威はまだ残っていた。

それは『光の戦士達』に属している女性メンバー、剣士サーラと法術師アリエスだ。
フローラはこの二人がシュウに前から懸想していることに気付いていた。

一難去ってまた一難。レーナという障害が消えて得をするのは、フローラだけではなくライバルであるサーラ達でもあるのだ。


「・・・一応、けん制しておきますか」


フローラは小さく溜め息をついてから、とてとてとシュウ達の元へ近づいた。


「シュウ様~!」


そして甘ったるい声を出しながら、一直線へシュウへ向かって駆け寄っていく。
それに気付いたサーラとアリエスの表情が僅かに曇った。

ピタッ

聖神教会の規律として、恋人や伴侶を除き、みだりに異性に触れてはならないといったものがある。それほど守られているものではないが、聖女としての抜擢されることを目標としているフローラがこれをおいそれと破るわけにはいかない。だから触れたくてもシュウには触れない。

だが、その距離は相変わらず近い。お互いの吐息がかかりそうなほど近い。


「フローラ。あまりそう近づくというのも・・・外聞が悪くですね、その・・・」


以前はレーナとの関係もあってこれをやんわり咎めていたシュウだが、このときはレーナとのこともあるからかキレが悪かった。
シュウの言う通り本来なら触れないでいるとはいえ、いくらか外聞の悪い距離感だが、第5支部の教徒達は皆がフローラのことを応援しているので、スキャンダルどころかむしろ微笑ましいさえ思っていた。


「そのような寂しいことをおっしゃるのはやめてくださいませシュウ様。せっかく久しぶりにお会いできたのですもの。もっと近くでお話したいくらいです」


うっとりとした表情でシュウを見つめるフローラ。


「・・・これ以上近づいたら、普通に触れてしまいますよ・・・」


シュウはすっかり美少女に成長したフローラからの正面からのアピールに、昔と違いすっかり動揺するようになってしまっていた。


「・・・」


そんなシュウ達を見つめる様々な目があった。


(やはりフローラは僕に気があるのかな?あんな熱い視線で僕を見つめてきて・・・)


目の前にいるシュウに露骨にアピっているのに、何故かフローラが自分に熱い視線を送っているとアクロバティックな勘違いをするライル。


「・・・」


何か言いたげにしつつも、自分にそれを言う資格がないと思っているのか居心地悪そうに口を噤んでいるレーナ。


(この子・・・脅威だな・・・)


(可愛い後輩キャラなんて、私とキャラがかぶってるッス・・・!)


シュウにアピっているフローラに不快感さを僅かに表情に現しているサーラ達。

そして、そんな彼らからよくわからないが凄まじい負の圧を感じているギャラリー達であった。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

実力を隠し「例え長男でも無能に家は継がせん。他家に養子に出す」と親父殿に言われたところまでは計算通りだったが、まさかハーレム生活になるとは

竹井ゴールド
ライト文芸
 日本国内トップ5に入る異能力者の名家、東条院。  その宗家本流の嫡子に生まれた東条院青夜は子供の頃に実母に「16歳までに東条院の家を出ないと命を落とす事になる」と予言され、無能を演じ続け、父親や後妻、異母弟や異母妹、親族や許嫁に馬鹿にされながらも、念願適って中学卒業の春休みに東条院家から田中家に養子に出された。  青夜は4月が誕生日なのでギリギリ16歳までに家を出た訳だが。  その後がよろしくない。  青夜を引き取った田中家の義父、一狼は53歳ながら若い妻を持ち、4人の娘の父親でもあったからだ。  妻、21歳、一狼の8人目の妻、愛。  長女、25歳、皇宮警察の異能力部隊所属、弥生。  次女、22歳、田中流空手道場の師範代、葉月。  三女、19歳、離婚したフランス系アメリカ人の3人目の妻が産んだハーフ、アンジェリカ。  四女、17歳、死別した4人目の妻が産んだ中国系ハーフ、シャンリー。  この5人とも青夜は家族となり、  ・・・何これ? 少し想定外なんだけど。  【2023/3/23、24hポイント26万4600pt突破】 【2023/7/11、累計ポイント550万pt突破】 【2023/6/5、お気に入り数2130突破】 【アルファポリスのみの投稿です】 【第6回ライト文芸大賞、22万7046pt、2位】 【2023/6/30、メールが来て出版申請、8/1、慰めメール】 【未完】

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない

月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。 人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。 2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事) 。 誰も俺に気付いてはくれない。そう。 2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。 もう、全部どうでもよく感じた。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

幼馴染と話し合って恋人になってみた→夫婦になってみた

久野真一
青春
 最近の俺はちょっとした悩みを抱えている。クラスメート曰く、  幼馴染である百合(ゆり)と仲が良すぎるせいで付き合ってるか気になるらしい。  堀川百合(ほりかわゆり)。美人で成績優秀、運動完璧だけど朝が弱くてゲーム好きな天才肌の女の子。  猫みたいに気まぐれだけど優しい一面もあるそんな女の子。  百合とはゲームや面白いことが好きなところが馬が合って仲の良い関係を続けている。    そんな百合は今年は隣のクラス。俺と付き合ってるのかよく勘ぐられるらしい。  男女が仲良くしてるからすぐ付き合ってるだの何だの勘ぐってくるのは困る。  とはいえ。百合は異性としても魅力的なわけで付き合ってみたいという気持ちもある。  そんなことを悩んでいたある日の下校途中。百合から 「修二は私と恋人になりたい?」  なんて聞かれた。考えた末の言葉らしい。  百合としても満更じゃないのなら恋人になるのを躊躇する理由もない。 「なれたらいいと思ってる」    少し曖昧な返事とともに恋人になった俺たち。  食べさせあいをしたり、キスやその先もしてみたり。  恋人になった後は今までよりもっと楽しい毎日。  そんな俺達は大学に入る時に籍を入れて学生夫婦としての生活も開始。  夜一緒に寝たり、一緒に大学の講義を受けたり、新婚旅行に行ったりと  新婚生活も満喫中。  これは俺と百合が恋人としてイチャイチャしたり、  新婚生活を楽しんだりする、甘くてほのぼのとする日常のお話。

落ち込んでいたら綺麗なお姉さんにナンパされてお持ち帰りされた話

水無瀬雨音
恋愛
実家の花屋で働く璃子。落ち込んでいたら綺麗なお姉さんに花束をプレゼントされ……? 恋の始まりの話。

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

処理中です...