追放の破戒僧は女難から逃げられない

はにわ

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私の愛は狂暴です 14

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フローラは聖女なるために研鑽するとともに、更にひとつ工作をしようとしていた。
それはシュウとレーナをうまく引き剥がすこと--である。

いかにフローラが聖女となり、同じ聖神教会に仕えるシュウを自由に出来る権限を手に入れたとしても、もしシュウとレーナが円満に仲を構築していてはまずかった。いかに強権を持っていたとしても、二人を仲を引き裂いてまでシュウを情婦に置くことは世間体的に難しいものになるし、何よりそれをやればシュウの怒りを買ってしまうことになり本末転倒だからだ。


「それは本当のくらいに考えましょ」


それでも選択肢には残しておく辺り、やはりフローラは狂っている。

勇者ライルの構成したパーティー『光の戦士達』は、シュウとフローラが属している聖神教会帝都第5支部のレウス司教の援助により成り立っていた。
だから支援者であるレウスの元には定期的にライルが顔を出すことになり、そのときにシュウとレーナを一緒に来ることが多かった。

シュウと会える数少ない機会ではあったが、それでもその機会全てをシュウとの時間に割くのではなく、あえてフローラは手を回してさりげなさを装ってレーナと話す時間を設けた。フローラが地道に築いた人脈を駆使することで、それは難なく実現することが可能だった。
フローラは何回かレーナと話をする中で、ついに個人的に話が出来るようになるまでには仲を深めることが出来た。
だが、あくまでそれは『目的のため』である。

事前にレーナのことについて調べ上げ、あれこれ彼女が浮名を流していたことは知っていたが、幸いにもシュウとの肉体関係は無いことをそれとなく知ることが出来た。
そしてシュウはあくまで滑り止めで、本命は勇者ライルであるというレーナの父レウスの企みも知った。


(なんだ。全然シュウ様を奪うことに問題など無さそうではないですか)


フローラはほくそ笑んだ。
あくまで政略結婚の域を出ないのであれば、別に聖女の強権を使ってシュウを奪ってしまっても構わないのだろう?と。

だが、念には念を・・・である。
偽りの関係がいずれ本物に昇華してしまう可能性があったし、実際にレーナはシュウのことを少しずつ気に入っていた。
これの対策としてフローラは布石を打つことにする。

勇者ライルのパーティー『光の戦士達』が名を上げ、人類の希望と称されるほどになる頃には、フローラは聖女候補としてその立場を固めていた。
推薦人も十分に集まり、聖魔法の実力も抜きん出たものになっており、既に聖女として大抜擢されるのは確定事項と言える。

ある日、フローラはレーナをお茶に誘い、こう言った。


「レーナ様は勇者ライル様とお近づきになられて羨ましい限りです」と。


ライルを別に男として見ていなかったはずのレーナの中で、彼の印象をいくらか変えるきっかけとなった言葉である。もちろん、フローラにとってこれは思ってもいない言葉だ。
勇者ライルは確かに容姿端麗とされているし、冒険者としての実力も申し分ないようだが、フローラにとっては完全にアウトオブ眼中だ。

だが、聖女候補として既に教会内で立場を確立し、回復魔法の御勤めなどに心砕いただけあって世間的にもすっかり大聖人扱いとなっているほどのフローラですら「ライルは強く意識している憧れの存在」とされる発言を聞いたレーナは、ライルを意識するようになる。
フローラはその後も事あるごとにレーナにそのように吹き込んでいった。

いずれレーナがライルと浮気し、シュウとの関係が破綻するように誘導していったのである。
そしてフローラの試みは長い時間を経て、ついに効果を表すことになった。
ライルをいくらかでも意識するようになったレーナが、ある日本当にライルと男女の関係になったのである。
フローラはこれを彼女が独自に作り上げたネットワークで知った。


「計画通り・・・!」


フローラはその報を聞いたとき、ニヤリと邪悪な笑みを浮かべた。
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