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私の愛は狂暴です 12
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一瞬とも、何年ともわからぬ時間をフローラは悩み続けた。
起きているのかいないのか、混濁した意識の中で彼女の耳に誰かの声が入ってくる。
ああ・・・彼の声だ。
待ちわびていた声。誰のそれよりも聞いていたい声。
フローラの意識はその声に引き寄せられるように覚醒した。
「フローラ・・・どうして・・・どうしてこのようなことをっ!」
意識が覚醒したフローラの耳に入って来たのは男の叫び。
目に飛び込んできたのは、ぐったりしている女と、それを抱きかかえている男・・・シュウの姿だ。
シュウに糾弾されていたのはフローラだった。
「フローラ・・・どうして・・・?」
どうして?
・・・ああ、そうか思い出した。
自分はシュウに糾弾されるだけのことをやったのだと、いくらかの間をもってようやくフローラは理解した。
シュウが抱きかかえている女・・・レーナの体からは多量の血が流れている。
フローラが聖魔法の攻撃によるものであった。
「どうして?ふふ、おかしなことを聞くのですねシュウ様」
腹を抱え、ケラケラと本当に可笑しそうにフローラは笑う。
「そんなの、シュウ様が私のものにならないこの世界が悪いんじゃないですか」
狂喜を笑みを浮かべながら言うフローラに、シュウは怒りのあまり叫びながら突撃して---
「あぁ、ダメダメ。そういうのナシ。例え妄想でもシュウ様に殺されるなんて駄目ゼッタイ」
先ほどまでの世界が一瞬にして消え失せ、場面は教会の礼拝堂に切り替わる。
シュウもレーナもこの場にはいない。いるのは数人の教徒と、手を組んで膝を折り、祈る姿勢を取っているフローラだけだ。
先ほどまでの光景は、全てフローラの妄想だ。
前日にシュウの同僚の神官に話を聞いてから、ずっと部屋でフローラは泣き明かした。泣いて泣いて泣いて、これでもかと言うほどに泣き通したら、今度は妄想をして鬱憤を晴らす方向にシフトした。
シュウを失った悲しみから闇落ちし、シュウの恋人となったレーナを自ら手にかけるといった妄想をしていたが、少しだけフローラの考えている理想の世界とかけ離れた方向へ進もうとしていたので一旦その妄想は打ち切り、今度はまた新しく違う妄想を開始する。
妄想しても現実は1ミリも変わらない。
わかってはいるが、わかるわけにはいかん。人は時として無意味とされる妄想で心の安息を得るのである。
フローラはやり場のない激情を、過激な妄想をひたすらに頭の中で垂れ流すことでどうにか表に出ることを食い止めていた。
「フローラが祈っているわ。あんなことがあったばかりだというのに・・・」
「どのような時でも、神への祈りは欠かせない・・・まさに聖職者になるべくしてなった人ですね」
フローラの頭の中身など知るはずもない教徒達は、礼拝堂で余暇すらつぎ込んでひたすらに祈る彼女を見て感激すらしていた。
実際は人々が思っているような聖女に似つかわしいそれではなく、邪悪極まりない妄想をしている。
今のフローラの妄想は、突如フローラが巨大化し、口から火を吐き拳で建物を破壊し、帝都中を火の海にして壊滅して回っているといった痛いを通り越してワケの分からない内容なのだが・・・周囲からは聖職者としての理想の権化とすら見られている。
さしもの緊急事態に勇者パーティーがやってきて、巨大フローラと帝国の存亡をかけた最終決戦になる・・・といったところで、フローラの妄想は突如として終わりを迎えた。
「そうだわ・・・そうよ・・・」
フローラは何度ともわからぬ妄想の中で、一つのことに気が付いたのだ。
「権力。そうよ権力よ・・・」
数ある妄想の中で、フローラは自分が権力を手に入れ、力づくでレーナにざまぁするという陰湿な妄想を抱いていた。
結局その妄想の最後はシュウに断罪されるという結果になってしまったために即座に廃棄した妄想だったのだが、方向の持っていき方次第では現実にシュウを手に入れることが出来るのではないかと今更気が付いたのだ。
「権力・・・そうよ。聖女になって、権力さえ手に入れれば・・・!」
起きているのかいないのか、混濁した意識の中で彼女の耳に誰かの声が入ってくる。
ああ・・・彼の声だ。
待ちわびていた声。誰のそれよりも聞いていたい声。
フローラの意識はその声に引き寄せられるように覚醒した。
「フローラ・・・どうして・・・どうしてこのようなことをっ!」
意識が覚醒したフローラの耳に入って来たのは男の叫び。
目に飛び込んできたのは、ぐったりしている女と、それを抱きかかえている男・・・シュウの姿だ。
シュウに糾弾されていたのはフローラだった。
「フローラ・・・どうして・・・?」
どうして?
・・・ああ、そうか思い出した。
自分はシュウに糾弾されるだけのことをやったのだと、いくらかの間をもってようやくフローラは理解した。
シュウが抱きかかえている女・・・レーナの体からは多量の血が流れている。
フローラが聖魔法の攻撃によるものであった。
「どうして?ふふ、おかしなことを聞くのですねシュウ様」
腹を抱え、ケラケラと本当に可笑しそうにフローラは笑う。
「そんなの、シュウ様が私のものにならないこの世界が悪いんじゃないですか」
狂喜を笑みを浮かべながら言うフローラに、シュウは怒りのあまり叫びながら突撃して---
「あぁ、ダメダメ。そういうのナシ。例え妄想でもシュウ様に殺されるなんて駄目ゼッタイ」
先ほどまでの世界が一瞬にして消え失せ、場面は教会の礼拝堂に切り替わる。
シュウもレーナもこの場にはいない。いるのは数人の教徒と、手を組んで膝を折り、祈る姿勢を取っているフローラだけだ。
先ほどまでの光景は、全てフローラの妄想だ。
前日にシュウの同僚の神官に話を聞いてから、ずっと部屋でフローラは泣き明かした。泣いて泣いて泣いて、これでもかと言うほどに泣き通したら、今度は妄想をして鬱憤を晴らす方向にシフトした。
シュウを失った悲しみから闇落ちし、シュウの恋人となったレーナを自ら手にかけるといった妄想をしていたが、少しだけフローラの考えている理想の世界とかけ離れた方向へ進もうとしていたので一旦その妄想は打ち切り、今度はまた新しく違う妄想を開始する。
妄想しても現実は1ミリも変わらない。
わかってはいるが、わかるわけにはいかん。人は時として無意味とされる妄想で心の安息を得るのである。
フローラはやり場のない激情を、過激な妄想をひたすらに頭の中で垂れ流すことでどうにか表に出ることを食い止めていた。
「フローラが祈っているわ。あんなことがあったばかりだというのに・・・」
「どのような時でも、神への祈りは欠かせない・・・まさに聖職者になるべくしてなった人ですね」
フローラの頭の中身など知るはずもない教徒達は、礼拝堂で余暇すらつぎ込んでひたすらに祈る彼女を見て感激すらしていた。
実際は人々が思っているような聖女に似つかわしいそれではなく、邪悪極まりない妄想をしている。
今のフローラの妄想は、突如フローラが巨大化し、口から火を吐き拳で建物を破壊し、帝都中を火の海にして壊滅して回っているといった痛いを通り越してワケの分からない内容なのだが・・・周囲からは聖職者としての理想の権化とすら見られている。
さしもの緊急事態に勇者パーティーがやってきて、巨大フローラと帝国の存亡をかけた最終決戦になる・・・といったところで、フローラの妄想は突如として終わりを迎えた。
「そうだわ・・・そうよ・・・」
フローラは何度ともわからぬ妄想の中で、一つのことに気が付いたのだ。
「権力。そうよ権力よ・・・」
数ある妄想の中で、フローラは自分が権力を手に入れ、力づくでレーナにざまぁするという陰湿な妄想を抱いていた。
結局その妄想の最後はシュウに断罪されるという結果になってしまったために即座に廃棄した妄想だったのだが、方向の持っていき方次第では現実にシュウを手に入れることが出来るのではないかと今更気が付いたのだ。
「権力・・・そうよ。聖女になって、権力さえ手に入れれば・・・!」
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