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私の愛は狂暴です 8
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フローラはシュウから回復魔法を習う一方、別のものも教わっていた。
それは『喧嘩』である。
「フローラと私とでは普段いる場所が違います。私とていつだってフローラに対して害をなす者から、身を守ってあげられるというわけではありません。結局最後は自分でそういったものを撃退するだけの力が必要なのです」
「は、はい・・・!」
フローラの歳はまだ十代前半だ。
冒険者を目指すわけでもないそんな子供に戦う術を教えなければならないことは忌むべきことだが、悲しいことにこの教会においては必要なことであるということをシュウは嫌と言う程知っていた。
それに先輩達によるフローラへの虐めは根絶されたわけではない。シュウの一件があるから今は警戒しているだけで、時が経てば再び彼女らがフローラに害をなすようになるのは予想出来ていた。
「しかし、教会では暴力は絶対に振るってはいけないという決まりがあります・・・」
フローラは不安げな表情を浮かべてシュウにそう問う。
彼女を虐めていた修道女達も、それが表沙汰になると問題になるからこそ、普段は目につくことのない箇所を痛めつけていたのである。
尤も最後らへんはヒートアップし過ぎていて、シュウに見つからずともいずれは・・・といった感じになってしまってはいたが。
「フローラ。私がかつて属していた支部は、こことは比較にならぬほど乱れていました。私も酷い虐めをうけていたものです。誰一人として尊敬できるような人はそこにはいませんでしたが、それでもイソップ神父という人がいまして、その人が言ったある言葉だけは私はリスペクトしているのです」
「それは一体どのような・・・?」
「『暴力を振るって良い相手は異教徒と魔物《バケモノども》と、そしてムカツク相手だけです』と」
「あの、それはもう誰に対しても振るって良いということでは」
少し引いているフローラに対して、シュウは笑みを崩さず答える。
「そうです。自分に害をなす相手に対して、身を守ることに相手を選んだり躊躇する名分などないのです」
「なんと!」
「まぁ、極端なことをフローラにやれとは言いません。ですが、こちらが無抵抗では相手はどこまでも図に乗ります」
シュウの言葉にフローラは耳が痛く感じた。
実際に虐めを行って来た修道女達に無抵抗でいたところ、彼女らの攻撃はどこまでもエスカレートしていったのだから。
シュウが止めに入らなければ、どこまで危険なことになっていたのかと考えるだけで身震いしそうになっていた。
「だから、害をなして来る相手の出鼻をくじかねばなりません。そのために最低限の反抗くらいはするべきなのです。そしてそれは早ければ早いほど良い。噛みつかれるとわかっている相手にちょっかいを出す馬鹿はそうそういない」
「はい!」
「ただ守られるだけの存在でいてはいけません。この腐った組織では自分で自分の身を守る術を持たないといけないのです」
シュウの言葉にフローラは両拳を握って力強く返事をした。
人に対して反抗・・・それも力を振るうなどこれまで考えもしなかったフローラだったが、シュウの言葉にはあっさりと頷く。
シュウが「やれ」と言えば「はい」と答える。フローラの中ではシュウは自身の絶対的な指導者であり、そして世界で唯一存在する愛を注ぐ対象だからだ。
そしてそれからしばらくして、フローラにちょっかいを出した修道女の小指が彼女に折られるという騒動が起きた。
人畜無害なサンドバッグだと思った少女が、獰猛な野犬に豹変したことで虐めを行っていたグループの間で動揺が広がった。
フローラが手傷を負うこともあったが、それ以上に自分が怪我をさせられるとわかってからは、フローラに手を出す人間は激減することになる。
ただ助けてくれるだけでなく、スパルタだが自立する道を示してくれたシュウにフローラはますます傾倒していった。
それは『喧嘩』である。
「フローラと私とでは普段いる場所が違います。私とていつだってフローラに対して害をなす者から、身を守ってあげられるというわけではありません。結局最後は自分でそういったものを撃退するだけの力が必要なのです」
「は、はい・・・!」
フローラの歳はまだ十代前半だ。
冒険者を目指すわけでもないそんな子供に戦う術を教えなければならないことは忌むべきことだが、悲しいことにこの教会においては必要なことであるということをシュウは嫌と言う程知っていた。
それに先輩達によるフローラへの虐めは根絶されたわけではない。シュウの一件があるから今は警戒しているだけで、時が経てば再び彼女らがフローラに害をなすようになるのは予想出来ていた。
「しかし、教会では暴力は絶対に振るってはいけないという決まりがあります・・・」
フローラは不安げな表情を浮かべてシュウにそう問う。
彼女を虐めていた修道女達も、それが表沙汰になると問題になるからこそ、普段は目につくことのない箇所を痛めつけていたのである。
尤も最後らへんはヒートアップし過ぎていて、シュウに見つからずともいずれは・・・といった感じになってしまってはいたが。
「フローラ。私がかつて属していた支部は、こことは比較にならぬほど乱れていました。私も酷い虐めをうけていたものです。誰一人として尊敬できるような人はそこにはいませんでしたが、それでもイソップ神父という人がいまして、その人が言ったある言葉だけは私はリスペクトしているのです」
「それは一体どのような・・・?」
「『暴力を振るって良い相手は異教徒と魔物《バケモノども》と、そしてムカツク相手だけです』と」
「あの、それはもう誰に対しても振るって良いということでは」
少し引いているフローラに対して、シュウは笑みを崩さず答える。
「そうです。自分に害をなす相手に対して、身を守ることに相手を選んだり躊躇する名分などないのです」
「なんと!」
「まぁ、極端なことをフローラにやれとは言いません。ですが、こちらが無抵抗では相手はどこまでも図に乗ります」
シュウの言葉にフローラは耳が痛く感じた。
実際に虐めを行って来た修道女達に無抵抗でいたところ、彼女らの攻撃はどこまでもエスカレートしていったのだから。
シュウが止めに入らなければ、どこまで危険なことになっていたのかと考えるだけで身震いしそうになっていた。
「だから、害をなして来る相手の出鼻をくじかねばなりません。そのために最低限の反抗くらいはするべきなのです。そしてそれは早ければ早いほど良い。噛みつかれるとわかっている相手にちょっかいを出す馬鹿はそうそういない」
「はい!」
「ただ守られるだけの存在でいてはいけません。この腐った組織では自分で自分の身を守る術を持たないといけないのです」
シュウの言葉にフローラは両拳を握って力強く返事をした。
人に対して反抗・・・それも力を振るうなどこれまで考えもしなかったフローラだったが、シュウの言葉にはあっさりと頷く。
シュウが「やれ」と言えば「はい」と答える。フローラの中ではシュウは自身の絶対的な指導者であり、そして世界で唯一存在する愛を注ぐ対象だからだ。
そしてそれからしばらくして、フローラにちょっかいを出した修道女の小指が彼女に折られるという騒動が起きた。
人畜無害なサンドバッグだと思った少女が、獰猛な野犬に豹変したことで虐めを行っていたグループの間で動揺が広がった。
フローラが手傷を負うこともあったが、それ以上に自分が怪我をさせられるとわかってからは、フローラに手を出す人間は激減することになる。
ただ助けてくれるだけでなく、スパルタだが自立する道を示してくれたシュウにフローラはますます傾倒していった。
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