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勇者パーティー 争奪戦
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「あれ、アリエスどうしたんだ?打ち上げの会場とは正反対の方向じゃん」
直感でアリエスがどこへ行こうとしているか気付いてはいるが、それでもあえてサーラはすっとぼけてそう訊ねた。
「あ~、今日は何だか体調悪いんでパスするってアイラには言ってきたっす。サーラさんこそどうしてこんなところにいるっすか?」
全然体調不良には見えないアリエスがあからさまにしらばっくれた。
ちなみにアリエスはシュウの前とそれ以外では口調が変わる。
「私?あぁ、私は急用があるんで断った。そんなわけだから先を急がせてもらうわ」
あえてお互いの装いについては降れないず、手を振ってサーラはアリエスの横を素通りして教会を目指そうと再び早歩きで進みだす。
するとそれに抜かされまいと、アリエスも同方向へ向かって同じスピードで歩き出した。二人して横に並び、互いに睨みあいながら肩をぶつけ合うようにして競歩する。異様な雰囲気に道行く人は海が割れるかのように二人を避けていった。
「体調が悪いんじゃなかったのか?帰って休んだほうがいいぞ」
頬をひくひくさせながらサーラが言った。
「間違えました。体調不良じゃなくて本当は私も急用があるんすよ。私もこっちの方向なんでっ」
アリエスも顔を引き攣らせながらそう返す。
狐とタヌキの化かし合い・・・というにはあまりにも互いの意図は分かりきっている。それでも一応は体裁を保ちつつ、二人はどうやって目の前の相手を出し抜いてシュウの元へ駆けつけようか互いに考えを巡らせていた。
「今日の打ち上げは奮発して有名な高級レストランらしいぞ。高位貴族じゃなければ利用できないところだけど、どうにかライルの力で予約を取り付けたらしい。一生に一度のチャンスかもしれないぞ?急用のほうは一旦後回しにしてでも、すぐにライルのところへ行ったほうがいいんじゃないか?」
「あ~、急用もあるんすけど、体調不良もあるんでご飯はいいっすわ。サーラさんこそ私の分は差し上げますから、急用は後にして行って来たらどうっすか?」
「急用は急用なんだよ。アリエスこそ戻りなって!」
「それはこっちの台詞っす!」
ズンズンズンズンと、異様な圧を放ちながら両者全く先手を譲らずに進んでいく。
しかしあるところで二人して息を合わせたかのように、ピタッと二人同時に立ち止まった。
それはシュウが属する教会支部の敷地の前でのことであった。
「このままじゃ埒があかねー。腹を割って話そうじゃん」
「そうっすね。もうここまで来た以上はしらばっくれるのはナシで」
サーラとアリエスは二人して向かう合う。
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・
まるで決闘するかのような威圧感を放ち、他者が介入できない二人だけの世界を築いていた。
周囲のギャラリーはそんな異様な二人を遠巻きに眺めているが、決して関わろうとはしない。憲兵ですらゴクリと生唾を飲むばかりで、二人に声も手も出そうとはしなかった。
「私はシュウが目的だ。アリエスもそうだってことでいいな?」
「ええ、もちろん。そして時間があまりない状態っす」
「フローラのことだな。そこまで意見が一致しているなら話は早い」
「『光の戦士達』を追放になったシュウ先輩は、教会に戻っても叱責されて居場所が無くなるか、追放されるのどちらかになると予想してるっす。どちらにせよ、きっと今頃は失意に打ちひしがれてるはず・・・」
「レウス司教は強欲な上にヒステリックらしいからな。確かにその可能性は高い」
「ひとまずはフローラと引き離すために、シュウ先輩を私達で回収するっす。後のことはそれから決めるってことでどうっすか」
「・・・わかった。今のところはそれでいこう」
サーラ達は二人して同時に頷く。
二人は抜け駆けして争奪戦を制するつもりだったが、一旦は方針を変えて互いに休戦し、まずはシュウを自分達の元に留めることを優先したのだ。目下の脅威はフローラという存在だからだ。
シュウはこの時既にフローラの包囲網にほとんどかかった状態であったのだが、そのことをサーラ達が知る由もない。
直感でアリエスがどこへ行こうとしているか気付いてはいるが、それでもあえてサーラはすっとぼけてそう訊ねた。
「あ~、今日は何だか体調悪いんでパスするってアイラには言ってきたっす。サーラさんこそどうしてこんなところにいるっすか?」
全然体調不良には見えないアリエスがあからさまにしらばっくれた。
ちなみにアリエスはシュウの前とそれ以外では口調が変わる。
「私?あぁ、私は急用があるんで断った。そんなわけだから先を急がせてもらうわ」
あえてお互いの装いについては降れないず、手を振ってサーラはアリエスの横を素通りして教会を目指そうと再び早歩きで進みだす。
するとそれに抜かされまいと、アリエスも同方向へ向かって同じスピードで歩き出した。二人して横に並び、互いに睨みあいながら肩をぶつけ合うようにして競歩する。異様な雰囲気に道行く人は海が割れるかのように二人を避けていった。
「体調が悪いんじゃなかったのか?帰って休んだほうがいいぞ」
頬をひくひくさせながらサーラが言った。
「間違えました。体調不良じゃなくて本当は私も急用があるんすよ。私もこっちの方向なんでっ」
アリエスも顔を引き攣らせながらそう返す。
狐とタヌキの化かし合い・・・というにはあまりにも互いの意図は分かりきっている。それでも一応は体裁を保ちつつ、二人はどうやって目の前の相手を出し抜いてシュウの元へ駆けつけようか互いに考えを巡らせていた。
「今日の打ち上げは奮発して有名な高級レストランらしいぞ。高位貴族じゃなければ利用できないところだけど、どうにかライルの力で予約を取り付けたらしい。一生に一度のチャンスかもしれないぞ?急用のほうは一旦後回しにしてでも、すぐにライルのところへ行ったほうがいいんじゃないか?」
「あ~、急用もあるんすけど、体調不良もあるんでご飯はいいっすわ。サーラさんこそ私の分は差し上げますから、急用は後にして行って来たらどうっすか?」
「急用は急用なんだよ。アリエスこそ戻りなって!」
「それはこっちの台詞っす!」
ズンズンズンズンと、異様な圧を放ちながら両者全く先手を譲らずに進んでいく。
しかしあるところで二人して息を合わせたかのように、ピタッと二人同時に立ち止まった。
それはシュウが属する教会支部の敷地の前でのことであった。
「このままじゃ埒があかねー。腹を割って話そうじゃん」
「そうっすね。もうここまで来た以上はしらばっくれるのはナシで」
サーラとアリエスは二人して向かう合う。
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・
まるで決闘するかのような威圧感を放ち、他者が介入できない二人だけの世界を築いていた。
周囲のギャラリーはそんな異様な二人を遠巻きに眺めているが、決して関わろうとはしない。憲兵ですらゴクリと生唾を飲むばかりで、二人に声も手も出そうとはしなかった。
「私はシュウが目的だ。アリエスもそうだってことでいいな?」
「ええ、もちろん。そして時間があまりない状態っす」
「フローラのことだな。そこまで意見が一致しているなら話は早い」
「『光の戦士達』を追放になったシュウ先輩は、教会に戻っても叱責されて居場所が無くなるか、追放されるのどちらかになると予想してるっす。どちらにせよ、きっと今頃は失意に打ちひしがれてるはず・・・」
「レウス司教は強欲な上にヒステリックらしいからな。確かにその可能性は高い」
「ひとまずはフローラと引き離すために、シュウ先輩を私達で回収するっす。後のことはそれから決めるってことでどうっすか」
「・・・わかった。今のところはそれでいこう」
サーラ達は二人して同時に頷く。
二人は抜け駆けして争奪戦を制するつもりだったが、一旦は方針を変えて互いに休戦し、まずはシュウを自分達の元に留めることを優先したのだ。目下の脅威はフローラという存在だからだ。
シュウはこの時既にフローラの包囲網にほとんどかかった状態であったのだが、そのことをサーラ達が知る由もない。
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