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崩壊の危機 2
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ライルが高級レストランで待ちぼうけをしていた頃、『光の戦士達』の剣士サーラは動き出していた。
打ち上げへ呼びに来たアイラには既に不参加の旨を伝え、『光の戦士達』の拠点のサーラの部屋で手早く旅支度を済ませる。
打ち上げの不参加の意志を伝えたときにアイラは「ですが勇者様が張り切って計画した打ち上げですので参加しませんと彼の機嫌が」と食いついてきたが、「料理私の分も食べていいから」とサーラが返すとあっさりと引き下がった。
「これで良し・・・待ってろよシュウ」
出発の準備の出来たサーラは手早く書き綴った置き手紙をテーブルの上に乗せ、颯爽と部屋を飛び出した。
すぐそこにお出かけ・・・といった風ではなく、装備品から荷物袋からしっかり揃え、どう見てもこれから旅に出るといった出で立ちだ。
サーラはもうこの『光の戦士達』の拠点に戻ってくるつもりはなかった。
今日『光の戦士達』を追放されたシュウと合流し、今後も行動を共にするためだ。
サーラはシュウに深く恋慕していた。それこそ彼を追うためなら、今属している超一流の冒険者パーティー『光の戦士達』を抜けても問題ないというくらいに。
ならばなぜサーラは「シュウを追放しようと思う」とライルが相談を持ち掛けたときにそれに反対しなかったのか?
それは「あえてシュウをパーティーから外させ、ライバルであるアリエスやレーナから引き剥がしたところを自分が恋人としていただく」ためである。
シュウはレーナの婚約内定者であるが、シュウが『光の戦士達』を追放されればレーナの父であるレウスの判断で二人の関係は白紙になるだろうことは確信していた。これでライバルは一人減。
アリエスもサーラと同じようにシュウに懸想していることを知っていたが、流石にパーティーを追放された落伍者を追いかけるほどではないだろうと高を括っていた。
こうしてサーラの皮算用上ではライバルはさらに一人減。
こうして最も脅威だった身近なライバルはひとまずいなくなり、フリーになったシュウに迫れば・・・などと考えていたのだ。
サーラ一人が反対したところでいずれライルは強引な手段を用いてでもシュウを追放するように仕向けるだろうし、それならばいっそこの機会を利用してやろうと考えた。
そのためにも追放されたシュウにまずは合流しなければならない。
シュウは『光の戦士達』の一員であったが、正確にはパーティーに派遣されていた聖神教会の神官である。ならば追放されたシュウが戻ることになるのは聖神教会・・・今すぐにそこへ向かえば彼に会えるはずだ。
しかし、そこにはサーラが知る上で最後に立ちはだかるライバルがいる。それがシュウの後輩教徒であり、聖女であるフローラだ。サーラはシュウの交友範囲についてはしっかり調べてあり、教会にシュウに懸想する人間がいることは突き止めていた。
容姿端麗でかつ聖女という強大な地位に立つフローラが失意のシュウに迫れば、あっさり彼女に靡いてしまうかもしれない。
よってそうなる前にと、より迅速にサーラはシュウと合流すべきと彼が属する教会へ向かう。
一応アリエスに動きを悟られないために、シュウが追放されて拠点を出て行ってからの行動となったが、後からでも必死に追いかければシュウの動きに追いつくはず。
そうして拠点を出たサーラがせかせかと早歩きしていると、見知った顔が先を歩いていることに気が付いた。
「あっ!」
「え?・・・あっ」
思わず声を上げたサーラに反応し、その見知った顔もサーラの方を振り返って声を上げる。
サーラが出会ったのは、彼女と同じような旅人の出で立ちをしたアリエスだった。
『お前もか!』
両者互いの装いを見て察し、同じことを思った。
実はアリエスもサーラと全く同じことを考え、そして同じ行動をしようとしていたのだ。
打ち上げへ呼びに来たアイラには既に不参加の旨を伝え、『光の戦士達』の拠点のサーラの部屋で手早く旅支度を済ませる。
打ち上げの不参加の意志を伝えたときにアイラは「ですが勇者様が張り切って計画した打ち上げですので参加しませんと彼の機嫌が」と食いついてきたが、「料理私の分も食べていいから」とサーラが返すとあっさりと引き下がった。
「これで良し・・・待ってろよシュウ」
出発の準備の出来たサーラは手早く書き綴った置き手紙をテーブルの上に乗せ、颯爽と部屋を飛び出した。
すぐそこにお出かけ・・・といった風ではなく、装備品から荷物袋からしっかり揃え、どう見てもこれから旅に出るといった出で立ちだ。
サーラはもうこの『光の戦士達』の拠点に戻ってくるつもりはなかった。
今日『光の戦士達』を追放されたシュウと合流し、今後も行動を共にするためだ。
サーラはシュウに深く恋慕していた。それこそ彼を追うためなら、今属している超一流の冒険者パーティー『光の戦士達』を抜けても問題ないというくらいに。
ならばなぜサーラは「シュウを追放しようと思う」とライルが相談を持ち掛けたときにそれに反対しなかったのか?
それは「あえてシュウをパーティーから外させ、ライバルであるアリエスやレーナから引き剥がしたところを自分が恋人としていただく」ためである。
シュウはレーナの婚約内定者であるが、シュウが『光の戦士達』を追放されればレーナの父であるレウスの判断で二人の関係は白紙になるだろうことは確信していた。これでライバルは一人減。
アリエスもサーラと同じようにシュウに懸想していることを知っていたが、流石にパーティーを追放された落伍者を追いかけるほどではないだろうと高を括っていた。
こうしてサーラの皮算用上ではライバルはさらに一人減。
こうして最も脅威だった身近なライバルはひとまずいなくなり、フリーになったシュウに迫れば・・・などと考えていたのだ。
サーラ一人が反対したところでいずれライルは強引な手段を用いてでもシュウを追放するように仕向けるだろうし、それならばいっそこの機会を利用してやろうと考えた。
そのためにも追放されたシュウにまずは合流しなければならない。
シュウは『光の戦士達』の一員であったが、正確にはパーティーに派遣されていた聖神教会の神官である。ならば追放されたシュウが戻ることになるのは聖神教会・・・今すぐにそこへ向かえば彼に会えるはずだ。
しかし、そこにはサーラが知る上で最後に立ちはだかるライバルがいる。それがシュウの後輩教徒であり、聖女であるフローラだ。サーラはシュウの交友範囲についてはしっかり調べてあり、教会にシュウに懸想する人間がいることは突き止めていた。
容姿端麗でかつ聖女という強大な地位に立つフローラが失意のシュウに迫れば、あっさり彼女に靡いてしまうかもしれない。
よってそうなる前にと、より迅速にサーラはシュウと合流すべきと彼が属する教会へ向かう。
一応アリエスに動きを悟られないために、シュウが追放されて拠点を出て行ってからの行動となったが、後からでも必死に追いかければシュウの動きに追いつくはず。
そうして拠点を出たサーラがせかせかと早歩きしていると、見知った顔が先を歩いていることに気が付いた。
「あっ!」
「え?・・・あっ」
思わず声を上げたサーラに反応し、その見知った顔もサーラの方を振り返って声を上げる。
サーラが出会ったのは、彼女と同じような旅人の出で立ちをしたアリエスだった。
『お前もか!』
両者互いの装いを見て察し、同じことを思った。
実はアリエスもサーラと全く同じことを考え、そして同じ行動をしようとしていたのだ。
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