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勇者パーティー その5
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「聞いてない聞いてない!そんなの聞いてないよ!」
子供が駄々をこねるように頭を振って喚くライルを、アイラは冷めたような目で見下ろしていた。
「私も保留にしていた『魔王城強襲計画』を勇者様が実行するつもりだとは聞いておりませんでした。聞いておりましたら、シュウの追放について相談されたときに反対したことでしょう」
ライルは『魔王城強襲計画』の確度を上げるためにシュウを追放するのだということはアイラに話していなかった。自分で考え、自分で決めた結果がこのザマである。
だが、ここで一つライルはあることに気付く。
「・・・待て。サーラとアリエスがシュウさんのことを好きだというのなら、どうして二人は追放に賛成したりしたんだ?」
シュウの追放を独断でやると、後に問題が起きるかもしれないと思ったライルはパーティーメンバー全員に賛否を問うている。
もしシュウのことが好きだというのなら、シュウの追放に賛成するのは矛盾しているので、シュウのことを好きなのはきっと何かの間違いなのではとライルは思った。
「確かなところはわかりませんが、メンバーを追放した他パーティーのデータを参考にしますと、いくつか理由を推測することはできます。例えばシュウがこの『光の戦士達』に属すること自体が彼にとって不利益であるとサーラ達が考えた可能性。あるいはあえてシュウを追放させることで、自分がそれを後追いしてちゃっかり二人きりのパーティーを組む・・・といった可能性もあります」
「はっ」
アイラが可能性について語ると、ライルはそれを鼻で笑った。
「このパーティーは世界一と言われている『光の戦士』だよ?全冒険者の憧れなんだよ?わざわざこのパーティーを抜けたり、抜けたほうが利益になるなんてそんなことを考える人なんていると思うかい?他のパーティーならともかく、うちでそんなこと考える人間は正気とは思えないね。冗談はやめてくれよ」
ケラケラと笑うライルだが、アイラはただただそんな彼を無表情で見つめていた。
笑い続けていたライルも、やがてジッとそんなアイラに見つめられ続けるうちに、笑うのをやめる。
どれだけ笑い飛ばしたところで、ライルの言う世界一のパーティーが今崩壊の危機にあるという現実は変わらないからだ。
「これからは僕がシュウさんの代わりになればいい・・・それだけのことだろう?」
苦笑いを浮かべながらそう言うライルに、アイラは即座に否定する。
「荷が勝ちすぎています勇者様。サーラやアリエスのことを、シュウに任せっきりで何一つ自分で気付かなかった貴方にシュウの代わりは務まらないと思います。今取れる現実的な手段は、追放を撤回し、シュウをパーティーに戻すことです」
「そこまで言わなくても・・・やってみなくちゃわからないだろう!?」
「シュウを追放するとき、ご自身も娼館を利用しておきながら、娼館通いについてシュウを咎めました。そのときに『卑怯者』というイメージも着いてしまっているので、まずはそれを払拭するところから始めましょう・・・と言うレベルですよ?」
「ぐっ・・・」
ライルは悔しそうに顔を歪めて俯く。
シュウはレウスの命令通り、パーティーが和を乱さずに機能するよう心を砕いてきたことをアイラは知っていた。サーラやアリエスのことを有能で魅力的な女だとしか見ずに、その実彼女達にきちんと向き合ってこなかったライルには、シュウの代わりを務めるなど到底無理だとアイラは思っている。
いや、ライルでなくても無理だろう。
このパーティーはシュウを追放した時点で、避けようもなく機能不全に陥ることをアイラは確信していた。
「大丈夫だ!今からでも僕がきちんとサーラ達と向き合えば問題なくなる。待っていなよ・・・サーラ達が戻ってきたら、一対一できちんと話し合うんだ」
「わかってねぇなコイツ」と言いたげにジト目になるアイラに背を向け、ライルは『光の戦士達』の拠点に戻った。
(使うまいと思っていたが、こうなれば仕方がない)
ライルには秘策があった。
メンバーの女達を落とすために、極力使うまいとした奥の手を持っている。それを使い、今夜にでもライルはサーラとアリエスを自分の物にし、パーティーの機能不全を防ごうと躍起になっていた。
しかし、そんなライルの知らぬ間にも既に事態はいろいろと動いていた。
子供が駄々をこねるように頭を振って喚くライルを、アイラは冷めたような目で見下ろしていた。
「私も保留にしていた『魔王城強襲計画』を勇者様が実行するつもりだとは聞いておりませんでした。聞いておりましたら、シュウの追放について相談されたときに反対したことでしょう」
ライルは『魔王城強襲計画』の確度を上げるためにシュウを追放するのだということはアイラに話していなかった。自分で考え、自分で決めた結果がこのザマである。
だが、ここで一つライルはあることに気付く。
「・・・待て。サーラとアリエスがシュウさんのことを好きだというのなら、どうして二人は追放に賛成したりしたんだ?」
シュウの追放を独断でやると、後に問題が起きるかもしれないと思ったライルはパーティーメンバー全員に賛否を問うている。
もしシュウのことが好きだというのなら、シュウの追放に賛成するのは矛盾しているので、シュウのことを好きなのはきっと何かの間違いなのではとライルは思った。
「確かなところはわかりませんが、メンバーを追放した他パーティーのデータを参考にしますと、いくつか理由を推測することはできます。例えばシュウがこの『光の戦士達』に属すること自体が彼にとって不利益であるとサーラ達が考えた可能性。あるいはあえてシュウを追放させることで、自分がそれを後追いしてちゃっかり二人きりのパーティーを組む・・・といった可能性もあります」
「はっ」
アイラが可能性について語ると、ライルはそれを鼻で笑った。
「このパーティーは世界一と言われている『光の戦士』だよ?全冒険者の憧れなんだよ?わざわざこのパーティーを抜けたり、抜けたほうが利益になるなんてそんなことを考える人なんていると思うかい?他のパーティーならともかく、うちでそんなこと考える人間は正気とは思えないね。冗談はやめてくれよ」
ケラケラと笑うライルだが、アイラはただただそんな彼を無表情で見つめていた。
笑い続けていたライルも、やがてジッとそんなアイラに見つめられ続けるうちに、笑うのをやめる。
どれだけ笑い飛ばしたところで、ライルの言う世界一のパーティーが今崩壊の危機にあるという現実は変わらないからだ。
「これからは僕がシュウさんの代わりになればいい・・・それだけのことだろう?」
苦笑いを浮かべながらそう言うライルに、アイラは即座に否定する。
「荷が勝ちすぎています勇者様。サーラやアリエスのことを、シュウに任せっきりで何一つ自分で気付かなかった貴方にシュウの代わりは務まらないと思います。今取れる現実的な手段は、追放を撤回し、シュウをパーティーに戻すことです」
「そこまで言わなくても・・・やってみなくちゃわからないだろう!?」
「シュウを追放するとき、ご自身も娼館を利用しておきながら、娼館通いについてシュウを咎めました。そのときに『卑怯者』というイメージも着いてしまっているので、まずはそれを払拭するところから始めましょう・・・と言うレベルですよ?」
「ぐっ・・・」
ライルは悔しそうに顔を歪めて俯く。
シュウはレウスの命令通り、パーティーが和を乱さずに機能するよう心を砕いてきたことをアイラは知っていた。サーラやアリエスのことを有能で魅力的な女だとしか見ずに、その実彼女達にきちんと向き合ってこなかったライルには、シュウの代わりを務めるなど到底無理だとアイラは思っている。
いや、ライルでなくても無理だろう。
このパーティーはシュウを追放した時点で、避けようもなく機能不全に陥ることをアイラは確信していた。
「大丈夫だ!今からでも僕がきちんとサーラ達と向き合えば問題なくなる。待っていなよ・・・サーラ達が戻ってきたら、一対一できちんと話し合うんだ」
「わかってねぇなコイツ」と言いたげにジト目になるアイラに背を向け、ライルは『光の戦士達』の拠点に戻った。
(使うまいと思っていたが、こうなれば仕方がない)
ライルには秘策があった。
メンバーの女達を落とすために、極力使うまいとした奥の手を持っている。それを使い、今夜にでもライルはサーラとアリエスを自分の物にし、パーティーの機能不全を防ごうと躍起になっていた。
しかし、そんなライルの知らぬ間にも既に事態はいろいろと動いていた。
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