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勇者パーティー その4
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「次にアリエスのことです」
アイラは呆けるライルを余所に、次の話に進みだした。
「まだ何かあるのか!?」
これ以上問題があるのかとライルは焦り、ハッと正気に戻る。
法術師アリエス。
『光の戦士達』の中でも抜きん出た回復能力を持つ少女だ。
ただ回復魔法を使うだけなら、勇者であるライル、賢者アイラ、果ては追放したシュウとて使うことが出来る。だが、アリエスの回復魔法は群を抜いて効果があった。
彼女の回復魔法は、他のメンバーよりも素早く、そして広範囲に傷を治すことが出来るのだ。
普通の回復魔法なら右腕の骨折を治療してから左腕の骨折を治療するまでに30秒はかかるが、アリエスならば両方同時に治療して十秒ほどで終わらせることができる。
それでいて魔力は高く、何度も回復魔法を使ったところでそうそう簡単に打ち止めにはならない。
ちなみに神官という法術師と少しかぶる職についているシュウの回復魔法は、回復速度はまぁまぁ速いが、回復範囲が狭いうえに魔力が少なく、あまり連発できないという欠点があった。
元は顔と法術師であるというだけで勢いでパーティーにスカウトされたアリエスだったが、加入当初は簡単な治療魔法ですらモタモタしていてあまりパーティーに貢献出来なかった。
「やっぱ顔だけで選ぶものじゃないかぁ」
とライルは最初後悔したのだが、やがて少し時間こそかかったが、飛躍的にアリエスは回復魔法の腕を上げて『光の戦士達』に必要不可欠な回復役となった。
「大器晩成型だったか」
とライルはやはり自分の選定眼に狂いは無かったと確信したのだが・・・
さて、そんな頼りになる回復役であるアリエスだが、一体何の問題があったのだろうとライルは首を傾げた。
「法術師アリエス。彼女はええかっこしいです」
「え・・・AカッコC・・・?」
「ええかっこしい。好きな男の前でだけやる気と結果を出します。となると…もうお分かりですね?」
アイラに問われ、ライルはキョトンとした。
「好きな男・・・も、もしかして僕の前で力を発揮してくれるということか?それなら問題はないじゃないか」
「ジーザス」
ライルのすっとぼけに、呆れ返ったのかアイラは口を『△』の形にしてジト目になって嘆いた。いつも反応に乏しいアイラが珍しい表情とリアクションをしているが、今のライルは必死でそれを堪能する余裕はない。
「なんでそうなる。アリエスの懸想する相手はシュウです。アリエスはシュウの前だから良いところを見せようとこれまで結果を出してきたのです。シュウがパーティーからいなくなった今、彼女はポテンシャルの半分も発揮できるかどうかわからないところではないでしょうか。いずれにせよ、彼女にこれまでのような活躍はとても望めません。今やポンコツです」
アイラは早口でそう捲し立てると「この男・・・アホだ馬鹿だとは思っていましたが、まさかこれほどとは」と小声で呟き、ポットに残った紅茶を自分のカップに注いだ。
「シュウ、シュウって・・・どちらもシュウさんのお手付きってことなのか!?」
「私が知る限り、シュウは特にそういった関係は彼女らとはないかと。ただの二人のシュウに対する一方的な片思いです」
「嘘だっ!!」
戦いでも自分よりはるかに活躍していない、開いてるんだか閉じてるんだかわからないような糸目のおっさんで、神官のくせに夜な夜なこっそり飲みに行ったり博打やったり、娼館で女買うようなやつに!
勇者で顔も良い、将来性もある自分が男として負けるわけがない!!
ライルの男としてのプライドが、アイラの言ったことを認めることを拒否した。
「僕はシュウさんの(内定)婚約者のレーナを寝取った男だよ?僕がまだ射止められていないサーラ達を、シュウさんが既に射止めていたなんてそんなことあるわけがないだろう?」
勇者らしからぬ内容であるが、ライルは必死に自分に言い聞かせるように言った。
「本気で言っているのですか?サーラやアリエスがシュウに懸想していることは、前から見ていて露骨にわかるほどでしたが、勇者様はお気づきになられなかったのですか?」
「えっ・・・」
真顔でそうアイラに言われ、ライルは少しばかり心当たりがないか記憶を探ってみた。
「まさか・・・二人とも僕とは行かないのにシュウさんとはサシ飲み行ったり、僕には決してしないのにスキンシップをやたらしたり、僕にはそうじゃないのにシュウさんのことを見つめていることが多かったのは・・・まさか・・・まさか・・・」
思い起こしてみると、ライルの頭の中にそれらしい心当たりがどんどん湧いて出てきた。
「そこまで見ておきながらどうして気付かなかったんですかね」
アイラは呆れたような・・・いや、実際に眉を顰めて呆れた顔をしてライルを見ていた。激レアなアイラの表情だが、やはりショックに打ちのめされているライルにはそんな彼女を見る余裕は無かった。
「結論を言いますと、シュウがいない今・・・この『光の戦士達』はこれまでの半分すら力を発揮することが出来ません。魔王城強襲など夢のまた夢であると言えます」
「わあぁぁぁぁぁぁ」
ライルは頭を抱えて叫び、蹲った。
アイラは呆けるライルを余所に、次の話に進みだした。
「まだ何かあるのか!?」
これ以上問題があるのかとライルは焦り、ハッと正気に戻る。
法術師アリエス。
『光の戦士達』の中でも抜きん出た回復能力を持つ少女だ。
ただ回復魔法を使うだけなら、勇者であるライル、賢者アイラ、果ては追放したシュウとて使うことが出来る。だが、アリエスの回復魔法は群を抜いて効果があった。
彼女の回復魔法は、他のメンバーよりも素早く、そして広範囲に傷を治すことが出来るのだ。
普通の回復魔法なら右腕の骨折を治療してから左腕の骨折を治療するまでに30秒はかかるが、アリエスならば両方同時に治療して十秒ほどで終わらせることができる。
それでいて魔力は高く、何度も回復魔法を使ったところでそうそう簡単に打ち止めにはならない。
ちなみに神官という法術師と少しかぶる職についているシュウの回復魔法は、回復速度はまぁまぁ速いが、回復範囲が狭いうえに魔力が少なく、あまり連発できないという欠点があった。
元は顔と法術師であるというだけで勢いでパーティーにスカウトされたアリエスだったが、加入当初は簡単な治療魔法ですらモタモタしていてあまりパーティーに貢献出来なかった。
「やっぱ顔だけで選ぶものじゃないかぁ」
とライルは最初後悔したのだが、やがて少し時間こそかかったが、飛躍的にアリエスは回復魔法の腕を上げて『光の戦士達』に必要不可欠な回復役となった。
「大器晩成型だったか」
とライルはやはり自分の選定眼に狂いは無かったと確信したのだが・・・
さて、そんな頼りになる回復役であるアリエスだが、一体何の問題があったのだろうとライルは首を傾げた。
「法術師アリエス。彼女はええかっこしいです」
「え・・・AカッコC・・・?」
「ええかっこしい。好きな男の前でだけやる気と結果を出します。となると…もうお分かりですね?」
アイラに問われ、ライルはキョトンとした。
「好きな男・・・も、もしかして僕の前で力を発揮してくれるということか?それなら問題はないじゃないか」
「ジーザス」
ライルのすっとぼけに、呆れ返ったのかアイラは口を『△』の形にしてジト目になって嘆いた。いつも反応に乏しいアイラが珍しい表情とリアクションをしているが、今のライルは必死でそれを堪能する余裕はない。
「なんでそうなる。アリエスの懸想する相手はシュウです。アリエスはシュウの前だから良いところを見せようとこれまで結果を出してきたのです。シュウがパーティーからいなくなった今、彼女はポテンシャルの半分も発揮できるかどうかわからないところではないでしょうか。いずれにせよ、彼女にこれまでのような活躍はとても望めません。今やポンコツです」
アイラは早口でそう捲し立てると「この男・・・アホだ馬鹿だとは思っていましたが、まさかこれほどとは」と小声で呟き、ポットに残った紅茶を自分のカップに注いだ。
「シュウ、シュウって・・・どちらもシュウさんのお手付きってことなのか!?」
「私が知る限り、シュウは特にそういった関係は彼女らとはないかと。ただの二人のシュウに対する一方的な片思いです」
「嘘だっ!!」
戦いでも自分よりはるかに活躍していない、開いてるんだか閉じてるんだかわからないような糸目のおっさんで、神官のくせに夜な夜なこっそり飲みに行ったり博打やったり、娼館で女買うようなやつに!
勇者で顔も良い、将来性もある自分が男として負けるわけがない!!
ライルの男としてのプライドが、アイラの言ったことを認めることを拒否した。
「僕はシュウさんの(内定)婚約者のレーナを寝取った男だよ?僕がまだ射止められていないサーラ達を、シュウさんが既に射止めていたなんてそんなことあるわけがないだろう?」
勇者らしからぬ内容であるが、ライルは必死に自分に言い聞かせるように言った。
「本気で言っているのですか?サーラやアリエスがシュウに懸想していることは、前から見ていて露骨にわかるほどでしたが、勇者様はお気づきになられなかったのですか?」
「えっ・・・」
真顔でそうアイラに言われ、ライルは少しばかり心当たりがないか記憶を探ってみた。
「まさか・・・二人とも僕とは行かないのにシュウさんとはサシ飲み行ったり、僕には決してしないのにスキンシップをやたらしたり、僕にはそうじゃないのにシュウさんのことを見つめていることが多かったのは・・・まさか・・・まさか・・・」
思い起こしてみると、ライルの頭の中にそれらしい心当たりがどんどん湧いて出てきた。
「そこまで見ておきながらどうして気付かなかったんですかね」
アイラは呆れたような・・・いや、実際に眉を顰めて呆れた顔をしてライルを見ていた。激レアなアイラの表情だが、やはりショックに打ちのめされているライルにはそんな彼女を見る余裕は無かった。
「結論を言いますと、シュウがいない今・・・この『光の戦士達』はこれまでの半分すら力を発揮することが出来ません。魔王城強襲など夢のまた夢であると言えます」
「わあぁぁぁぁぁぁ」
ライルは頭を抱えて叫び、蹲った。
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