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白金の壁

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「うわあああああああ来るなぁぁぁ!!」


「おかあちゃーーーん!!」


ホワイトキングに乗って逃走中のシュウ達に、聖神教会聖騎士団はその仰々しい名前とは裏腹に情けない姿を見せていた。
大岩が転がってくるのに正面から立ち向かう者などいないのと同じで、圧倒的なまでの威圧感と破壊力を持って突撃してくる悪魔のような白馬を取り押さえようなどという勇気を持つ騎士はろくにいなかった。


「こ、このぉぉっ!!」


しかし中にはここで武勲を立ててやろうと言う無謀者もいた。
ある一人の兵士は槍を構えて突撃したが、槍はホワイトキングの筋肉にろくに刺さることもなく弾かれ、そのまま踏みつぶされて鎧ごとあばら骨を砕かれる。


「二人の邪魔をするな!!」


「ざまぁみろ!!」


そんな騎士達を帝都民は労わるどころか詰る。
『真実の愛を貫こうとしているシュウ達』を応援しよう、という空気がアッという間に帝都民の間には広まっており、今この帝都では聖騎士達は『敵』扱いである。

捕縛命令の出ているシュウ達は狂暴な馬に乗っているし、帝都民からは詰られっぱなしで流石に騎士達の士気も地の底を這っているしで、もはや騎士の中にはまともに職務を全うしようなどと考える者はいない。


「シュウ様。見てください!帝都の方々が温かい声援を送ってくださいますわ」


帝都民の声援を受け、笑顔を振りまきながらフローラが言った。


『ぎゃああ!!』

『ぐふっ』


「私達の門出を、皆様祝福して下さっているのですね」


『ギャース!』

『うぼあーっ』


帝都民の声援に交じってホワイトキングに踏まれた騎士の悲鳴が聞こえてくるので、シュウはドン引きしてしまい、フローラのように声援に浸ることが出来ないでいた。


「いくら何でも帝都民に私達のことが広まる速度が早すぎる気がするのですが」


シュウ達はホワイトキングに乗り、凄まじい速度で帝都内を移動している。
噂が流れるのは早いと言っても、行く先々の帝都民に自分達のことが知られているのは明らかに異常だと思っていた。


「さぁ?たまたまではないですか?」


シュウが訝しむも、フローラは軽く流す。


(嘘だ。絶対何かやったんだ・・・)


フローラにそう疑うをかけるも、帝都民の応援ムードのお陰で騎士達の士気は低く、ホワイトキングに乗っての逃走は拍子抜けするくらいに順調だった。

立ち塞がる騎士は踏みつぶし、バリケードがあれば飛び越え、門が閉ざされれば蹴りで破壊する・・・腕利きの冒険者顔負けの働きを見せるホワイトキングの機動力に、
なんて切り札を持っていたんだフローラは!とシュウは恐れおののいた。

このままホワイトキングに乗ってさえいれば、楽々と帝都を脱出することが出来るだろう・・・シュウもフローラもそう思っていた。

だが、もう少しで帝都の郊外へ出ようというそのとき、ホワイトキングは急にその動きを止めた。


「なっ・・・なんですか!?」


思わずつんのめって落馬しそうになるシュウが顔を上げると、そこには想像だにしていなかった光景が広がっていた。


「白金の騎士団・・・」


通常の騎士と違う、白金の鎧を身に纏った騎士が横一列に並んでシュウ達の前に立ち塞がっている。
彼らは聖神教会の法王直属の騎士団・・・通称『白金の騎士団』。
あえて光り輝いてどこにいても目立つ白金の装備を全身に身に着けている、聖神教会のとっておきの切り札とされる世界最強と言われる騎士団である。

彼らは聖神教会の法王の直属の組織であり、法王以外の命令には従わない。無論、レウス司教などがどれだけ出動を懇願しても、どこ吹く風である。
しかし逆に彼らが必要であると判断すれば、どこへでも何の法的拘束も受けることなく出動する、神出鬼没な騎士団としても有名であった。


「まさか・・・そんな・・・」


これまで余裕のあった態度だったフローラの表情が固まる。
ホワイトキングも白金の騎士団相手ではこれまでのようにたやすく通過することは出来ないと、本能で感じ取っていた。


「聖女様。お戯れはそこまでにしていただきたいのであります」


ガシャリと金属音を立て、白金の騎士達の中で一際背の高い騎士が前に出た。
白金の騎士団の団長スコーン・・・
勇者ライル以外で、人類最強と噂される騎士の一人であった。
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