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怖い後輩
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「この金額でしたら、今この場で現金でお支払いできます」
フローラはいつの間にかシュウのツケの請求書を手に取っており、それを見ながらなんてことないようにそう言ってのけた。
それを聞いた娼館の男は、フローラを見て営業スマイルを浮かべる。
「こちらとしては金さえ出していただけるならどちらでも構いませんよ。まぁ、この場で金を出してもらったほうがこちらも楽で良いのですがね」
娼館の男はチラリとシュウを見やった。
「・・・で、どうされます?」
娼館の男、フローラ、ギャラリー、全員の視線がシュウに集まる。
あまりの急展開にシュウは一瞬だけ思考が停止したが、改めて考えても選択肢は一つしかないような気がした。
しかしその答えを口に出すのは理性が咎める。
フローラの申し出を受けるのが一番の安泰に決まっている。
体と心を壊しながら強制労働に励むか、男色の貴族の愛人になるか、可愛い後輩の厚意に甘えるか。こんなもの選ぶまでもない。
だがどういうわけか、シュウの頭の中には「その選択をしてはダメだ」という警鐘が鳴り響いていた。何となくの直感だが、安易にその選択をするととんでもないことになる・・・そんな気がしてならなかったのだ。
「シュウ様悩んでおられますね?まぁ、確かに何も言わぬまま選択を迫るというのもフェアではありませんね」
悩んでいるシュウに近寄り、フローラが彼の肩にそっと手を置いた。
「私に立て替えさせることに対して、後ろめたさを考えていらっしゃるのでしたら、そこは気になさらないでください。私は私の意思でシュウ様の債権を買うに過ぎないのです。ただの善意だけではないのです。よって、シュウ様が私の援助を受け入れた瞬間から、シュウ様は私の物になります。けど難しいことをお願いするつもりはありません。私が付いていくことを許可だけしてくれれば、それで良いのです」
そっと置かれたフローラの手が、シュウの肩をグッと掴んだ。
これにはシュウも思わず「ひっ」と声を漏らしそうになる。
これは「捕食」だ。
金という触手を使って、シュウを絡め捕ろうとしているのだ。それが理解できているシュウには、今のフローラには恐怖すら感じていた。
「私が『聖女』であることの柵でしたら本当にご心配なく。それでシュウ様にご迷惑をおかけすることはほとんどありません。程なくしてその問題は解消しますから」
ほとんど、ってなんだよ・・・やっぱりあるんじゃないか。
シュウはそんなことを考えたが、そんなシュウの肩を掴むフローラの手の力が強まった。
「さぁ、シュウ様どうされるのですか?このまま好きもの貴族(♂)の肉布団になってあれこれ開発されたいんですか?それとも私と何の柵のないセカンドライフを過ごすのですか?さぁ、どうするんですか?さぁ、さぁ、さぁ!」
フローラはぐるぐる目になってシュウに詰め寄った。
あまりの彼女の迫力に、気圧されてごくりと唾を飲みこむシュウ。まさか可愛い後輩だと思っていた女の子にこんな怖い一面があったとは・・・
それでも結局シュウは、プライドも頭の中の警鐘のことも隅に置き、フローラの申し出を受け入れることにした。
「どうか・・・よろしくお願いします」
絞り出すようにシュウがそう言うと、フローラは弾けるような笑顔で「ハイ!」と答えたのだった。
フローラはいつの間にかシュウのツケの請求書を手に取っており、それを見ながらなんてことないようにそう言ってのけた。
それを聞いた娼館の男は、フローラを見て営業スマイルを浮かべる。
「こちらとしては金さえ出していただけるならどちらでも構いませんよ。まぁ、この場で金を出してもらったほうがこちらも楽で良いのですがね」
娼館の男はチラリとシュウを見やった。
「・・・で、どうされます?」
娼館の男、フローラ、ギャラリー、全員の視線がシュウに集まる。
あまりの急展開にシュウは一瞬だけ思考が停止したが、改めて考えても選択肢は一つしかないような気がした。
しかしその答えを口に出すのは理性が咎める。
フローラの申し出を受けるのが一番の安泰に決まっている。
体と心を壊しながら強制労働に励むか、男色の貴族の愛人になるか、可愛い後輩の厚意に甘えるか。こんなもの選ぶまでもない。
だがどういうわけか、シュウの頭の中には「その選択をしてはダメだ」という警鐘が鳴り響いていた。何となくの直感だが、安易にその選択をするととんでもないことになる・・・そんな気がしてならなかったのだ。
「シュウ様悩んでおられますね?まぁ、確かに何も言わぬまま選択を迫るというのもフェアではありませんね」
悩んでいるシュウに近寄り、フローラが彼の肩にそっと手を置いた。
「私に立て替えさせることに対して、後ろめたさを考えていらっしゃるのでしたら、そこは気になさらないでください。私は私の意思でシュウ様の債権を買うに過ぎないのです。ただの善意だけではないのです。よって、シュウ様が私の援助を受け入れた瞬間から、シュウ様は私の物になります。けど難しいことをお願いするつもりはありません。私が付いていくことを許可だけしてくれれば、それで良いのです」
そっと置かれたフローラの手が、シュウの肩をグッと掴んだ。
これにはシュウも思わず「ひっ」と声を漏らしそうになる。
これは「捕食」だ。
金という触手を使って、シュウを絡め捕ろうとしているのだ。それが理解できているシュウには、今のフローラには恐怖すら感じていた。
「私が『聖女』であることの柵でしたら本当にご心配なく。それでシュウ様にご迷惑をおかけすることはほとんどありません。程なくしてその問題は解消しますから」
ほとんど、ってなんだよ・・・やっぱりあるんじゃないか。
シュウはそんなことを考えたが、そんなシュウの肩を掴むフローラの手の力が強まった。
「さぁ、シュウ様どうされるのですか?このまま好きもの貴族(♂)の肉布団になってあれこれ開発されたいんですか?それとも私と何の柵のないセカンドライフを過ごすのですか?さぁ、どうするんですか?さぁ、さぁ、さぁ!」
フローラはぐるぐる目になってシュウに詰め寄った。
あまりの彼女の迫力に、気圧されてごくりと唾を飲みこむシュウ。まさか可愛い後輩だと思っていた女の子にこんな怖い一面があったとは・・・
それでも結局シュウは、プライドも頭の中の警鐘のことも隅に置き、フローラの申し出を受け入れることにした。
「どうか・・・よろしくお願いします」
絞り出すようにシュウがそう言うと、フローラは弾けるような笑顔で「ハイ!」と答えたのだった。
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