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勇者エクスの封印
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「急げ!魔術師団は今より準備を開始。勇者を搬入し次第、ただちに処置を行う」
勇者エクスを騎士が担架で運ぶ横で、シンが支持を飛ばす。その後ろには数十人の騎士が控えていて万が一の備えている。
彼らが向かっているのはラダーム国のとある施設である。
「ラダーム国の騎士団長ボリスです。この度はよくぞやり遂げてくれました。まずは陛下に代わって礼を言わせていただきたい」
そこへ駆けつけたラダームの騎士団長ボリスが陣頭指揮を行うシンに頭を下げた。
「まだ終わってはおりません。・・・さすが始祖の血統の勇者エクス。あの毒が回ってもなお抵抗する素振りを見せました」
「なんですと!?まさかそんな・・・」
「むしろ今こうして眠ってくれているのが奇跡です。いつ目覚めるかもわかりません。時間との勝負です」
歩みを止めることなくシンは語る。
エクスは今眠っている。それだけでなく拘束の魔術もかけられている。
しかし、もしエクスの目が覚めれば、そんなものは意に介すことなく彼の意志により拘束は解除されてしまうだろう・・・シンにはその確信があった。
目的地である施設まで来ると、そこでは数百の騎士が既に控えていた。まるで戦でもするかのような厳重体制である。魔王軍と戦うような緊迫した空気が現場には流れていた。
「後のことはお任せください」
施設に入口にいる魔術師がシンにそう言い、エクスを内部へと運び入れた。
シンはそれを見送って、ふぅとため息をついて額の汗を拭う。
「大がかりですね」
横にいたレイが言った。
その言葉を聞いてシンは頭を振った。
「大がかりなものか。これでも有事の際には足りないくらいじゃないかな」
これはエクスの力を目の当たりにしたシンの本心だった。最初はシンもこれだけの人数を揃えれば万全も万全だと考えていたが、既にエクスの力を知ったシンからするとこれでも物足りない。この先はエクスが目の覚まさぬようにと神に祈るような時間が続く。
「でも、これでようやく終わるんですよね」
「だといいな」
シンの顔は晴れない。
「相手はあくまで始祖の血統の勇者様だ。人間と考えてはいけない」
「それって・・・そんなにすごいんですか?」
「誰一人仲間を連れずして、魔王軍を一人で蹴散らして魔王を倒したんだ。そんなことができるのは人間じゃない。国家認定の養殖勇者のような紛い物と違う、血統と才能からして正真正銘本物の勇者なんだ。道を違えれば魔王となり得るだけの恐ろしい存在だ」
シンがそう言って視線を向けるのはエクスが運び入れられた施設。
(頼むうまくいってくれ)
シンは強く念じていた。
これから始まるのは、「勇者エクスの連れ戻し計画」の一部、有事の際の最終手段・・・人道を外れた処置「勇者の封印」であった。
勇者エクスを騎士が担架で運ぶ横で、シンが支持を飛ばす。その後ろには数十人の騎士が控えていて万が一の備えている。
彼らが向かっているのはラダーム国のとある施設である。
「ラダーム国の騎士団長ボリスです。この度はよくぞやり遂げてくれました。まずは陛下に代わって礼を言わせていただきたい」
そこへ駆けつけたラダームの騎士団長ボリスが陣頭指揮を行うシンに頭を下げた。
「まだ終わってはおりません。・・・さすが始祖の血統の勇者エクス。あの毒が回ってもなお抵抗する素振りを見せました」
「なんですと!?まさかそんな・・・」
「むしろ今こうして眠ってくれているのが奇跡です。いつ目覚めるかもわかりません。時間との勝負です」
歩みを止めることなくシンは語る。
エクスは今眠っている。それだけでなく拘束の魔術もかけられている。
しかし、もしエクスの目が覚めれば、そんなものは意に介すことなく彼の意志により拘束は解除されてしまうだろう・・・シンにはその確信があった。
目的地である施設まで来ると、そこでは数百の騎士が既に控えていた。まるで戦でもするかのような厳重体制である。魔王軍と戦うような緊迫した空気が現場には流れていた。
「後のことはお任せください」
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「でも、これでようやく終わるんですよね」
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シンがそう言って視線を向けるのはエクスが運び入れられた施設。
(頼むうまくいってくれ)
シンは強く念じていた。
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