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勇者エクスの身に覚えのないやらかし
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「や、やらかし・・・?」
エクスはシンの言葉を聞いて、一瞬思考が停止するほどに驚いた。
ラバース国には足を踏み入れたことがあるが、特に悪さをした記憶がないからだ。
ラバース国には腕のいい刀鍛冶がいた。
勇者エクスは今、魔王を倒した伝説の名剣エクスカリバーを持っているが、最初にそれを手に入れたとき、エクスカリバーは全身に錆が広がり、到底使えるような状態ではなかった。錆びるはずのない伝説の金属オリハルコンで作られたはずのエクスカリバーを蝕んでいたのは、魔族が放つ瘴気に長年晒されることでこびりついた『魔の錆』。錆びの一つ一つが小さな魔物そのものと言って良い、実に厄介な錆だった。
無論、伝説の剣すら蝕むほど強力な浸食性を持つ錆が通常の手段で祓えるはずはなく、また剣を打ち直す必要があった。だが、この打ち直すということが難しい。なにしろ伝説の金属オリハルコンなのだ。加減が分かる者がいないのである。
だが、オリハルコンすら打ち直せるという技術を持つ、『ゴッドハンド』と呼ばれる匠がラバースにいると聞き、エクスはラバース国へ足を運んだのだ。
そして何とか刀匠ヨシムラに再刃してもらい、エクスカリバーは元の強さを取り戻した。
エクスがラバース国を訪ねたのはそれだけのためだった。特に王族に謁見することもなければ、貴族に会った記憶もない。もちろん悪さなどしていないから、何かをやらかしたと言われても全く心当たりがなかったのだ。
「俺が一体何をしたというのですか?」
何かの間違いに違っている。もし誤解があるのなら、ここで否定してしまえばいい。そう願ってエクスはシンに問う。
シンは懐からスッと一枚の紙のようなものを取り出し、エクスに見えるように掲げてみせた。
それは写真と呼ばれる、非常に高価だが見たままを映し出せる魔法の写し絵であった。
写真には一人の女性が映っていた。顔立ちの綺麗な女性で、人目で高価だとわかるドレスを着ている。王族か高位貴族か、いずれにせよ高貴な身分の女性であることはすぐにわかった。
「この人に覚えはありませんか?」
シンの問いにエクスはまじまじと写真を見つめる。
はて、どこかで見たことがあっただろうか。見たような記憶はあるが誰だったか。記憶に残るような貴族令嬢などいなかった。ましてやラバース国では高位の者にあった記憶はない。刀匠ヨシムラに会うために工房に出向き、三日ほど町に滞在したのみだ。
「・・・え?」
だが、必死に思い出していく中で、エクスは一つの可能性にぶち当たる。
「いや、まさかまさか」
首を振ってそれを否定する。いやでもまさか、そんなはずは・・・
「・・・どうやらお心当たりがおありのようですね」
シンはエクスのそんな様子を見て確信した。
「彼女はジェシカ・カートレット公爵令嬢です。エクス様に会われたときは、町娘に扮していたそうですが」
エクスの顔が一気に青ざめた。
エクスはシンの言葉を聞いて、一瞬思考が停止するほどに驚いた。
ラバース国には足を踏み入れたことがあるが、特に悪さをした記憶がないからだ。
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無論、伝説の剣すら蝕むほど強力な浸食性を持つ錆が通常の手段で祓えるはずはなく、また剣を打ち直す必要があった。だが、この打ち直すということが難しい。なにしろ伝説の金属オリハルコンなのだ。加減が分かる者がいないのである。
だが、オリハルコンすら打ち直せるという技術を持つ、『ゴッドハンド』と呼ばれる匠がラバースにいると聞き、エクスはラバース国へ足を運んだのだ。
そして何とか刀匠ヨシムラに再刃してもらい、エクスカリバーは元の強さを取り戻した。
エクスがラバース国を訪ねたのはそれだけのためだった。特に王族に謁見することもなければ、貴族に会った記憶もない。もちろん悪さなどしていないから、何かをやらかしたと言われても全く心当たりがなかったのだ。
「俺が一体何をしたというのですか?」
何かの間違いに違っている。もし誤解があるのなら、ここで否定してしまえばいい。そう願ってエクスはシンに問う。
シンは懐からスッと一枚の紙のようなものを取り出し、エクスに見えるように掲げてみせた。
それは写真と呼ばれる、非常に高価だが見たままを映し出せる魔法の写し絵であった。
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「いや、まさかまさか」
首を振ってそれを否定する。いやでもまさか、そんなはずは・・・
「・・・どうやらお心当たりがおありのようですね」
シンはエクスのそんな様子を見て確信した。
「彼女はジェシカ・カートレット公爵令嬢です。エクス様に会われたときは、町娘に扮していたそうですが」
エクスの顔が一気に青ざめた。
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