勇者の処分いたします

はにわ

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キラの裏側では

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一方、キラがシン達に詰められているとき、マリアの部屋に訪れてきていたのはキラと決別したばかりのバットンだった。


「バットン・・・?」


部屋に入ってきたバットンは仏頂面で、何やら威圧的なオーラを出していた。


(もしかして・・・)


バットンもずっと自分に思うところがあって、追放を機にぶちまけるつもりなのだろうか?と、マリアは思い身構えた。キラだけでなく、そこそこ付き合いのあるバットンにも詰られたら耐えられないかも・・・そんな風に考えていた。


「マリア、追放のことは・・・俺はさっき知った」


「えっ」


キラはバットンには知らせずに自分を追放したのか?どうしてそんなことを・・・
マリアは訳が分からずにいた。


「到底納得できるものではなかったのでな、俺もさっきパーティーを抜けてきたんだ」


「ええっ!?」


勇者キラのパーティーは四人だった。
それが二人も一気に抜けて大丈夫なのだろうか。・・・いや、自分は元々大した存在じゃないが、それでもバットンの抜けた穴は大きいはずだ。強力な剣士で、付き合いもあるから息も合う、代わりは簡単には埋まらないはずだ。
それはバットンにしても同じこと。波に乗っているキラのパーティーから抜けるメリットはないはずだ。


「どうして!?」


「マリアのことを追放したのが我慢ならなかったからだ!あんな薄情なやつだとは思わなかった」



バットンの表情は怒りに満ちていた。
マリアは彼が本気で言っていることを察する。


「マリア!」


バットンは突然マリアの両肩を掴む。


「キラとじゃなくて、今度は俺とパーティーを組んでほしい!」


悪鬼羅刹のような気迫ある表情のまま、バットンはマリアにそう叫んでいた。
表情は恐ろしいが、顔は真っ赤で声はやや上ずっている。それは緊張と恥ずかしさによるものであった。


「俺はずっとマリアが好きだった!パーティーのために身を削って頑張る君が輝かしく見えていた。だがキラと想い合っていると思い、この気持ちは我慢していたんだ」


「え・・・その・・・」


突然のことだかけで頭が追い付かないマリアだったが、それでも自分が愛の告白をされていることだけは理解できた。


「冒険者をやめて普通に暮らそうというのならそうしよう。冒険を続けたいというならそれでもいい。とにかく、俺と・・・二人だけのパーティーを組んでほしい」


「そ、そんな私なんて・・・」


元から自分に自信の持てない性格な上、キラによって更に心をへし折られたマリアはすっかり卑屈になっていた。


「私なんてなんて言うな!君は自分が思っているよりずっと素晴らしい人だ!俺には君が、マリアがいいんだ!」


卑屈になっていたマリアの心にずかずかと踏み込んでいくバットンの言葉に、マリアは瞳からこぼれるものを抑えきることが出来なかった。


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