勇者の処分いたします

はにわ

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キラの歪な依存

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「キラ!宿の予約は私が取っておくから、先にギルドに行ってていいわよ」


「ちょっと懐が寂しいわね・・・私がギルドに行って効率の良い依頼をいくつか見繕ってくるわね」


「とても良い装備だけど、予算を大幅に超えているわね。・・・ちょっと私が交渉してみるわ」


「次に行く目的地はここがいいわね。まだ攻略されていないダンジョンがあるし、出てくる魔物の強さも今のキラには丁度良いと思うの」


「明日はいよいよあのダンジョンの攻略ね。キラは明日に備えてもう休んでおきなさい。私はこれからダンジョンの見取り図をもう一度見直してみるわ。万が一の間違いがあっちゃいけないからね」



駆け出し時代から勇者認定されるまで、マリアはキラの冒険のサポートを積極的に行っていた。
それはもはや献身と呼べるほどのもので、自分が苦労をしてもその分キラが戦い易くなるのならと、寝る間も惜しんで彼女は日々キラの冒険のサポート役に徹した。
その献身も何年も続くと、やはり最初は心苦しく思っていたキラもある程度は当たり前だと考えるようになってしまう。途中でパーティーに加入したバットンはそれに対して苦言を呈したが、当のマリアはそれを良しとしていた。

やがてキラは鍛錬と戦闘にだけ集中するようになった。キラからしてもマリアからしても、それがもはや当たり前となっていた。
それがキラの戦闘力を躍進させ、勇者認定されるまでの冒険者に育て上げることになったが、逆にいえばキラは戦闘以外のものについて怠惰になるようになっていた。






「マリア、この分厚い本を見てくれ。コイツをどう思う?これは僕が勇者であることを証明するための『冒険の書』というものなんだけど、僕がこれを全部読まないといけないらしいんだ。義務なんだって。最初の数ページ読んだだけですっかり頭が痛くなってきたよ」


「すごく・・・大きい本だね。うーん、キラが読むのが大変なら私が読もうか?」


「えっ?けど、これは僕が読まないといけないって・・・」


マリアの提案に、流石にこのときばかりはキラも一瞬戸惑った。


「勇者としては冒険の書の内容の把握が大事ということなんでしょきっと。だったら私が読んで内容を憶えておけばいいじゃない。いつも一緒にいるんだから、内容を覚えるのが私でもキラでも結果は変わらないわ。そうでしょう?」


「・・・それもそうだね。お願いしても・・・いいかな?」


「もちろんよ!」


マリアは勇者が読むべきという冒険の書の代読を、いつも自分がしているキラのサポートと同種としか考えていなかったため、快く引き受けた。
キラはすっかり戦闘馬鹿として育ってしまっていたため、分厚い小難しい本を読みたいとは思わなかったから、マリアの提案にホイホイと釣られてしまった。

それ故に、自分が勇者であり続けるために最低限蓄えておくべきだった規約を、ただの一つも頭に入れておくことができなかった。
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