6 / 54
キラからの『勇者』の剥奪
しおりを挟む
「お取込み中大変申し訳ありませんでした」
部屋に入ってきたのはローブを身に纏った二人組だった。
一人は30代前半ほどの痩せ顔の男で、もう一人で20代半ばの、地味だが見ると美人かなと思える女だった。
やはり王都の女は違うなと、こんな状況でありながらもキラの頭にはろくでもないことが一瞬ではあるが過ぎっていた。
「私は王室調査室のシンと申します。同じくこちらはレイ」
男の名乗りとともにレイも頭を下げる。
「我々は王室より遣わされた・・・まぁ、なんと言いますか、なんでも屋みたいなものと言いましょうか?まぁ、それほど大したものではありませんので」
ペコペコと頭を下げながらそう言うシンを見て、何だ大したものじゃないのかとキラは内心ホッとする。
「それで、急ぎの用事とは何でしょうか?こちらもあまり長く時間は取れないのですが」
いいところでお預けをくらっているキラはやや苛立たし気に問う。すぐにでも用件を聞いてしまい、一刻も早く続きがしたいと思っていた。
王室の呼び出しがあれば勇者はただちにそれに応じる義務があるので、本来ならキラの都合などどうでもいいのだが。
「これは失礼しました。用件さえ済ませれば、我々はただちに失礼させていただきますので」
キラの心情を察したようにシンが苦笑いをしながら言った。
余計なことは言わなくて良い!早く用件を言え。キラのイライラは頂点に達しようとしていた。
だが、この後シンが口を開いてから状況は一変する。
「まずはキラ様。貴方は先ほどを持ちまして『勇者』の称号を剥奪されたということをお伝えいたします。こちら既に王室からの許可も取り付けておりまして、決定が覆ることはございません」
「「・・・え?」」
シンの言葉の意味を理解するのに数秒。
キラとリリアナはほぼ同時に声を洩らしていた。
「それに伴いまして『勇者』として貴方に与えられていた特権の全てが廃止となっております。今連泊なされている宿の宿泊費につきましては、本日分までは補助の対象となりますが、明日以降は補助金が出ませんので通常料金での宿泊とな」
「・・・ま、待ってください!」
茫然とするキラ達に構わずシンは続けようとするが、そこでようやく我に返ったキラが待ったをかける。
無表情であるシンに対し、キラは顔面蒼白だった。
「どういうことですか?どうして僕が『勇者』の称号を剥奪されるんですか!?何もミスはしていないはずだ!」
勇者として王室からの依頼はこなしていたし、ダンジョン攻略もそつなくこなしている。勇者としての地位を剥奪されるような失敗はしていないと断言できるキラにとって、これはまさに青天の霹靂であった。
「確かに大きなミスはしていませんが、キラ様は小さな失点が積み重なっておりまして。それが『剥奪』の対象となる20点に達したものですから、このたびの処分となったわけでございます」
詰め寄られたシンはまるで動じず、淡々とそう言った。
部屋に入ってきたのはローブを身に纏った二人組だった。
一人は30代前半ほどの痩せ顔の男で、もう一人で20代半ばの、地味だが見ると美人かなと思える女だった。
やはり王都の女は違うなと、こんな状況でありながらもキラの頭にはろくでもないことが一瞬ではあるが過ぎっていた。
「私は王室調査室のシンと申します。同じくこちらはレイ」
男の名乗りとともにレイも頭を下げる。
「我々は王室より遣わされた・・・まぁ、なんと言いますか、なんでも屋みたいなものと言いましょうか?まぁ、それほど大したものではありませんので」
ペコペコと頭を下げながらそう言うシンを見て、何だ大したものじゃないのかとキラは内心ホッとする。
「それで、急ぎの用事とは何でしょうか?こちらもあまり長く時間は取れないのですが」
いいところでお預けをくらっているキラはやや苛立たし気に問う。すぐにでも用件を聞いてしまい、一刻も早く続きがしたいと思っていた。
王室の呼び出しがあれば勇者はただちにそれに応じる義務があるので、本来ならキラの都合などどうでもいいのだが。
「これは失礼しました。用件さえ済ませれば、我々はただちに失礼させていただきますので」
キラの心情を察したようにシンが苦笑いをしながら言った。
余計なことは言わなくて良い!早く用件を言え。キラのイライラは頂点に達しようとしていた。
だが、この後シンが口を開いてから状況は一変する。
「まずはキラ様。貴方は先ほどを持ちまして『勇者』の称号を剥奪されたということをお伝えいたします。こちら既に王室からの許可も取り付けておりまして、決定が覆ることはございません」
「「・・・え?」」
シンの言葉の意味を理解するのに数秒。
キラとリリアナはほぼ同時に声を洩らしていた。
「それに伴いまして『勇者』として貴方に与えられていた特権の全てが廃止となっております。今連泊なされている宿の宿泊費につきましては、本日分までは補助の対象となりますが、明日以降は補助金が出ませんので通常料金での宿泊とな」
「・・・ま、待ってください!」
茫然とするキラ達に構わずシンは続けようとするが、そこでようやく我に返ったキラが待ったをかける。
無表情であるシンに対し、キラは顔面蒼白だった。
「どういうことですか?どうして僕が『勇者』の称号を剥奪されるんですか!?何もミスはしていないはずだ!」
勇者として王室からの依頼はこなしていたし、ダンジョン攻略もそつなくこなしている。勇者としての地位を剥奪されるような失敗はしていないと断言できるキラにとって、これはまさに青天の霹靂であった。
「確かに大きなミスはしていませんが、キラ様は小さな失点が積み重なっておりまして。それが『剥奪』の対象となる20点に達したものですから、このたびの処分となったわけでございます」
詰め寄られたシンはまるで動じず、淡々とそう言った。
0
お気に入りに追加
44
あなたにおすすめの小説
俺は先輩に恋人を寝取られ、心が壊れる寸前。でも……。二人が自分たちの間違いを後で思っても間に合わない。俺は美少女で素敵な同級生と幸せになる。
のんびりとゆっくり
恋愛
俺は島森海定(しまもりうみさだ)。高校一年生。
俺は先輩に恋人を寝取られた。
ラブラブな二人。
小学校六年生から続いた恋が終わり、俺は心が壊れていく。
そして、雪が激しさを増す中、公園のベンチに座り、このまま雪に埋もれてもいいという気持ちになっていると……。
前世の記憶が俺の中に流れ込んできた。
前世でも俺は先輩に恋人を寝取られ、心が壊れる寸前になっていた。
その後、少しずつ立ち直っていき、高校二年生を迎える。
春の始業式の日、俺は素敵な女性に出会った。
俺は彼女のことが好きになる。
しかし、彼女とはつり合わないのでは、という意識が強く、想いを伝えることはできない。
つらくて苦しくて悲しい気持ちが俺の心の中であふれていく。
今世ではこのようなことは繰り返したくない。
今世に意識が戻ってくると、俺は強くそう思った。
既に前世と同じように、恋人を先輩に寝取られてしまっている。
しかし、その後は、前世とは違う人生にしていきたい。
俺はこれからの人生を幸せな人生にするべく、自分磨きを一生懸命行い始めた。
一方で、俺を寝取った先輩と、その相手で俺の恋人だった女性の仲は、少しずつ壊れていく。そして、今世での高校二年生の春の始業式の日、俺は今世でも素敵な女性に出会った。
その女性が好きになった俺は、想いを伝えて恋人どうしになり。結婚して幸せになりたい。
俺の新しい人生が始まろうとしている。
この作品は、「カクヨム」様でも投稿を行っております。
「カクヨム」様では。「俺は先輩に恋人を寝取られて心が壊れる寸前になる。でもその後、素敵な女性と同じクラスになった。間違っていたと、寝取った先輩とその相手が思っても間に合わない。俺は美少女で素敵な同級生と幸せになっていく。」という題名で投稿を行っております。
冤罪をかけられ、彼女まで寝取られた俺。潔白が証明され、皆は後悔しても戻れない事を知ったらしい
一本橋
恋愛
痴漢という犯罪者のレッテルを張られた鈴木正俊は、周りの信用を失った。
しかし、その実態は私人逮捕による冤罪だった。
家族をはじめ、友人やクラスメイトまでもが見限り、ひとり孤独へとなってしまう。
そんな正俊を慰めようと現れた彼女だったが、そこへ私人逮捕の首謀者である“山本”の姿が。
そこで、唯一の頼みだった彼女にさえも裏切られていたことを知ることになる。
……絶望し、身を投げようとする正俊だったが、そこに学校一の美少女と呼ばれている幼馴染みが現れて──
勇者のハーレムパーティを追放された男が『実は別にヒロインが居るから気にしないで生活する』ような物語(仮)
石のやっさん
ファンタジー
主人公のリヒトは勇者パーティを追放されるが
別に気にも留めていなかった。
元から時期が来たら自分から出て行く予定だったし、彼には時期的にやりたい事があったからだ。
リヒトのやりたかった事、それは、元勇者のレイラが奴隷オークションに出されると聞き、それに参加する事だった。
この作品の主人公は転生者ですが、精神的に大人なだけでチートは知識も含んでありません。
勿論ヒロインもチートはありません。
そんな二人がどうやって生きていくか…それがテーマです。
他のライトノベルや漫画じゃ主人公になれない筈の二人が主人公、そんな物語です。
最近、感想欄から『人間臭さ』について書いて下さった方がいました。
確かに自分の原点はそこの様な気がしますので書き始めました。
タイトルが実はしっくりこないので、途中で代えるかも知れません。
親友に彼女を寝取られて死のうとしてたら、異世界の森に飛ばされました。~集団転移からはぐれたけど、最高のエルフ嫁が出来たので平気です~
くろの
ファンタジー
毎日更新!
葛西鷗外(かさい おうがい)20歳。
職業 : 引きこもりニート。
親友に彼女を寝取られ、絶賛死に場所探し中の彼は突然深い森の中で目覚める。
異常な状況過ぎて、なんだ夢かと意気揚々とサバイバルを満喫する主人公。
しかもそこは魔法のある異世界で、更に大興奮で魔法を使いまくる。
だが、段々と本当に異世界に来てしまった事を自覚し青ざめる。
そんな時、突然全裸エルフの美少女と出会い――
果たして死にたがりの彼は救われるのか。森に転移してしまったのは彼だけなのか。
サバイバル、魔法無双、復讐、甘々のヒロインと、要素だけはてんこ盛りの作品です。
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
彼女の浮気相手からNTRビデオレターが送られてきたから全力で反撃しますが、今さら許してくれと言われてももう遅い
うぱー
恋愛
彼女の浮気相手からハメ撮りを送られてきたことにより、浮気されていた事実を知る。
浮気相手はサークルの女性にモテまくりの先輩だった。
裏切られていた悲しみと憎しみを糧に社会的制裁を徹底的に加えて復讐することを誓う。
■一行あらすじ
浮気相手と彼女を地獄に落とすために頑張る話です(●´艸`)ィヒヒ
学校ごと異世界に召喚された俺、拾ったスキルが強すぎたので無双します
名無し
ファンタジー
毎日のようにいじめを受けていた主人公の如月優斗は、ある日自分の学校が異世界へ転移したことを知る。召喚主によれば、生徒たちの中から救世主を探しているそうで、スマホを通してスキルをタダで配るのだという。それがきっかけで神スキルを得た如月は、あっという間に最強の男へと進化していく。
妻を寝取ったパーティーメンバーに刺殺された俺はもう死にたくない。〜二度目の俺。最悪から最高の人生へ〜
橋本 悠
ファンタジー
両親の死、いじめ、NTRなどありとあらゆる`最悪`を経験し、終いにはパーティーメンバーに刺殺された俺は、異世界転生に成功した……と思いきや。
もしかして……また俺かよ!!
人生の最悪を賭けた二周目の俺が始まる……ってもうあんな最悪見たくない!!!
さいっっっっこうの人生送ってやるよ!!
──────
こちらの作品はカクヨム様でも連載させていただいております。
先取り更新はカクヨム様でございます。是非こちらもよろしくお願いします!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる