『濁』なる俺は『清』なる幼馴染と決別する

はにわ

文字の大きさ
上 下
488 / 508
賢者リノア

反撃の糸口

しおりを挟む
リノアがトマスに魔法で反撃する少し前---


リノアはトマスがセントラルギルドと繋がっていると推測してから、萎みかかっていた闘志が再燃した。
ギルドが絡んでいるというのならば、トマスは自分だけでなくゴウキ・ファミリー全体に対して敵意を持っていることになる。
自分に執着するだけでなくゴウキの脅威になろうというのか?許せない!と。


与えられた個室の中で絶望するしかなかったリノアは、即座に思考を切り替えて自分にできることはないかと考えた。


(私に出来ることは、魔法で戦うことだけ・・・!)


まず始めたことは、自分に着けられた魔封の魔道具の特性について推理すること。
どのようにしてリノアは魔法を封じられたのかを突き詰めることで、どうにか魔道具の穴を突き突破口を見いだせないかと考えたのだ。

そして考え付いた結論は、魔道具はリノアの体内で練られる術式を無効化している、もしくは体内から体外への魔力の放出を抑制されているのではないか?の二点だった。

リノアは賢者と言われるほどの魔法使いであり、その体内には膨大な魔力が蓄えられている。その魔力を術式により魔法に変換して放出することで、強大な魔法が具現化される。
変換する際に必要な術式が阻害されているか、体内から体外へ放出される魔力がシャットダウンされてしまえば、魔法は使えないということだ。

そうだと仮定すると、一先ずどうすれば魔法を使えるようになるか。
魔道具の破壊をせずにそれを成す方法を考えた結果、リノアは「自分の中にある魔力が駄目なら、外にあるものならどうか」と思いついた。

魔力というものは人や魔物といった生物の体のみに宿るものではない。
自然界にも空気に交じるように漂っているものなのである。
むしろ魔道具の中には、そういった自然界にある魔力を集めて利用する物が多く存在しているのだ。

リノアは微々たる魔力を、少しずつ集めることに徹した。
空気中に漂う魔力は少ないし、普通取り置きなど出来るものではないとされていたが、鍛錬により微細な魔力の扱いの出来るようになったリノアには可能だった。
あまりに常識外のことである故に、こればかりはトマスも計算に入れていなかった。

ほんの少し、ほんの少し・・・と集めていくうちに、ある程度の魔力をリノアは体外に蓄えることに成功した。
集めた魔力で作り上げたコウモリを使い、トマスを含めた屋敷中の動向を探らせて機会を伺った。

そしてトマスが何か行動を起こすとコウモリにより察知したリノアは、残る全ての魔力をトマスへの攻撃に注ぎ込んだのだ。

しかし残念ながら、リノアのその攻撃は不発に終わった。
もう蓄えている魔力は無く、リノアに反撃の目はない。

トマスはリノアが魔法を使った道理こそまだ理解できてはいなかったが、直感で彼女が既に無防備な状態であることを察する。


「ふざけるなよ・・・お前ぇぇぇ!!」


自分の拒否するどころか、存在そのものを拒絶するようになったリノアに、トマスは憎悪を爆発させようとしていた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

冤罪だと誰も信じてくれず追い詰められた僕、濡れ衣が明るみになったけど今更仲直りなんてできない

一本橋
恋愛
女子の体操着を盗んだという身に覚えのない罪を着せられ、僕は皆の信頼を失った。 クラスメイトからは日常的に罵倒を浴びせられ、向けられるのは蔑みの目。 さらに、信じていた初恋だった女友達でさえ僕を見限った。 両親からは拒絶され、姉からもいないものと扱われる日々。 ……だが、転機は訪れる。冤罪だった事が明かになったのだ。 それを機に、今まで僕を蔑ろに扱った人達から次々と謝罪の声が。 皆は僕と関係を戻したいみたいだけど、今更仲直りなんてできない。 ※小説家になろう、カクヨムと同時に投稿しています。

【完結】魔王を倒してスキルを失ったら「用済み」と国を追放された勇者、数年後に里帰りしてみると既に祖国が滅んでいた

きなこもちこ
ファンタジー
🌟某小説投稿サイトにて月間3位(異ファン)獲得しました! 「勇者カナタよ、お前はもう用済みだ。この国から追放する」 魔王討伐後一年振りに目を覚ますと、突然王にそう告げられた。 魔王を倒したことで、俺は「勇者」のスキルを失っていた。 信頼していたパーティメンバーには蔑まれ、二度と国の土を踏まないように察知魔法までかけられた。 悔しさをバネに隣国で再起すること十数年……俺は結婚して妻子を持ち、大臣にまで昇り詰めた。 かつてのパーティメンバー達に「スキルが無くても幸せになった姿」を見せるため、里帰りした俺は……祖国の惨状を目にすることになる。 ※ハピエン・善人しか書いたことのない作者が、「追放」をテーマにして実験的に書いてみた作品です。普段の作風とは異なります。 ※小説家になろう、カクヨムさんで同一名義にて掲載予定です

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

今更気付いてももう遅い。

ユウキ
恋愛
ある晴れた日、卒業の季節に集まる面々は、一様に暗く。 今更真相に気付いても、後悔してももう遅い。何もかも、取り戻せないのです。

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた

黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。 その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。 曖昧なのには理由があった。 『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。 どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。 ※小説家になろうにも随時転載中。 レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。 それでも皆はレンが勇者だと思っていた。 突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。 はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。 ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。 ※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。

処理中です...