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賢者リノア

リノアの挑発

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「リノア。ちょっとバタバタしちゃって悪いけど、そろそろこの家からお引越ししようか?」


トマスはリノアの監禁されている部屋に現れると、いきなりこう切り出した。
それを聞いたリノアは、フッと微笑を浮かべ、挑発するように返した。


「あれ?もしかしてもうすぐそこまで助けが来たのかなぁ?」


「さぁ、どうだろうね?」


「うーん、そうだとしたら私は動きたくないなぁ。助かりたいし、これ以上トマスと一緒だなんて嫌だもの」


リノアの口から容赦なく放たれた拒絶の言葉を聞いた瞬間、トマスは僅かに口元を歪めたが、それでもそれは一瞬のこと。すぐに気を取り直したのか、トマスから微笑が絶えることまではなかった。


「そんなこと言わないでよ。これから面白いものを見せてあげるつもりだからさ・・・それを見ればリノアだってきっと心変わりをすると思うよ?」


「面白いもの?」


「見てのお楽しみだよ。けど、それを見せるためにはここから離れないといけないんだ。悪いけど、聞き分けが悪くても多少強引にしてでも連れ出させてもらうよ?」


「やだ、気持ち悪い」



ピクリ、とここまで先ほどより大き目にトマスが口元を歪める。
二度に渡る明らかな拒絶の言葉に、余裕のあったトマスの態度に乱れが広がった。

リノアは微笑を浮かべているが、トマスに対して融和の心は1ミリも芽生えていない。それがわかり、トマスにも苛立ちと焦燥が抑えきれないほどに湧き上がる。

そして、そんなトマスの心に追い打ちをかけたのがリノアだった。


「あれ?もしかしてショック受けた?私が昔と違って酷いこと言うようになったことに。昔と同じなままないじゃん。それもずっと放置してきたくせに、気が変わったからまたヨリを戻したい~なんて馬鹿なこと言ってくる相手に、私が好意的に接すると思う?気持ち悪い妄想しないでよ。子供じゃないんだから」


リノアの言葉の刃は深くトマスの心に突き刺さり、そのままぐしゃぐしゃに傷口をかき乱す。


「魔道具の開発で身を立てられるようになったのかもしれないけどさ、それ、ゴウキ先輩の凄さに比べたらカスみたいなものだから。今はゴウキ先輩を出し抜いてるつもりかもしれないけど、で既に先輩に勝ててないの。そんな人、私が見直すと思う?」


そこまで言い切ってリノアが鼻で笑うと、ついにトマスの抑えていた感情が爆発した。
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