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賢者リノア
勝ちを確信している者
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ゴウキが倒したスライムは、ギルドが量産に入る前の試作スライムだった。
かなりの開発費がかけられた人工スライムはまだ試作段階で未知なる部分があったが、こと「絶対に倒されない」と言い切れるほどにタフな構造になっていることだけは太鼓判が推せるものだった。
だからゴウキの逃走防止に試験も兼ねて配置したのだが、そのスライムが恐ろしいほどの脳筋的な手法によって倒されてしまい、ギルド職員達は発狂した。
「お、おい・・・!あれ、今度貴族向けに行うデモンストレーションに使うやつだったんだぞ!どうすんだよ!!」
「あ、あいつ自体の開発費だけでも・・・お、俺達の給与数十年分はあるぞ・・・それにデモ中止の損失を合わせると・・・?」
「・・・・・・(気絶してる)」
ゴウキを倒すことが目的だった彼らだが、もはやそれどころではなくなった。
長い目で見ればここでゴウキを倒せれば元を取れるだけの損失だが、今のセントラルギルドは経済的にひっ迫している状況だ。「長い目で見る」ことすら出来るかどうかわからぬ瀬戸際にいるのである。
ギルド職員が発狂しているのを別室で映像装置を使って見ていたトマスは、それを見て鼻で笑っていた。
「ま、そう上手くいくとも思っていなかったけど、随分あっけなくやられちゃったんだねアレ」
トマスはギルドが用意した檻もスライムも、ゴウキの動きを封じるには十分ではないかもしれないと考えていた。
そして実際、トマスの考え通り突破されてしまっている。
予想の内に入っていることだったので、トマスはゴウキが逃げ出したこの状況においても心を乱すことはなかった。
実はトマスの頭の中にあるプランには、ギルド職員に話している以上に先に踏み込んだ別のものが用意されている。だからトマスはこの状況化でも笑っていられた。
最後に勝つのは自分であると信じて疑っていない。
冒険者でも何でもない、実戦経験の無い素人故に、ある種の怖いもの知らずになっているのが今のトマスだ。
「さてさて、ゴウキがやってくる前に、愛しの姫君のところへ行こうか。物語は終焉に向かい出した」
トマスはそう言って部屋を後にした。
そんな彼を視ている存在があることを知らずに。
かなりの開発費がかけられた人工スライムはまだ試作段階で未知なる部分があったが、こと「絶対に倒されない」と言い切れるほどにタフな構造になっていることだけは太鼓判が推せるものだった。
だからゴウキの逃走防止に試験も兼ねて配置したのだが、そのスライムが恐ろしいほどの脳筋的な手法によって倒されてしまい、ギルド職員達は発狂した。
「お、おい・・・!あれ、今度貴族向けに行うデモンストレーションに使うやつだったんだぞ!どうすんだよ!!」
「あ、あいつ自体の開発費だけでも・・・お、俺達の給与数十年分はあるぞ・・・それにデモ中止の損失を合わせると・・・?」
「・・・・・・(気絶してる)」
ゴウキを倒すことが目的だった彼らだが、もはやそれどころではなくなった。
長い目で見ればここでゴウキを倒せれば元を取れるだけの損失だが、今のセントラルギルドは経済的にひっ迫している状況だ。「長い目で見る」ことすら出来るかどうかわからぬ瀬戸際にいるのである。
ギルド職員が発狂しているのを別室で映像装置を使って見ていたトマスは、それを見て鼻で笑っていた。
「ま、そう上手くいくとも思っていなかったけど、随分あっけなくやられちゃったんだねアレ」
トマスはギルドが用意した檻もスライムも、ゴウキの動きを封じるには十分ではないかもしれないと考えていた。
そして実際、トマスの考え通り突破されてしまっている。
予想の内に入っていることだったので、トマスはゴウキが逃げ出したこの状況においても心を乱すことはなかった。
実はトマスの頭の中にあるプランには、ギルド職員に話している以上に先に踏み込んだ別のものが用意されている。だからトマスはこの状況化でも笑っていられた。
最後に勝つのは自分であると信じて疑っていない。
冒険者でも何でもない、実戦経験の無い素人故に、ある種の怖いもの知らずになっているのが今のトマスだ。
「さてさて、ゴウキがやってくる前に、愛しの姫君のところへ行こうか。物語は終焉に向かい出した」
トマスはそう言って部屋を後にした。
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