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賢者リノア

頼もしく、そして

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「あぁ・・・やっぱりな。ビッシリ仕掛けがしてあるぜ」


館に突入するに辺り、スミレはそこまでの道に罠が仕掛けられていないかを調べ出したが、罠の専門家とも言える忍者であるスミレは、すぐにそれを見破ることが出来た。


「あのまま突入してたら、お前今頃ハリネズミみたいになってたぜ。自重しろよな」


スミレがゴウキにそう言いながら解除した罠は、巧妙に隠され見えないようにされているスイッチ式の罠である。踏めば無数の毒針が飛んできて、全身が針で刺されてしまうというものだ。
これを食らえばいかにゴウキと言えどもダメージは避けられない・・・というか、異様にタフなゴウキ以外の人間なら大体死んでいる。
ゴウキがスミレに制止されず突っ込んでいれば、今頃は大事になっていただろう。

ゴウキは「お、おぅ・・・」と気まずそうに返事をし、突入したい気持ちを抑え込んでスミレが罠を調べるのを見守っていた。


「・・・すげぇな。まだまだ罠がありやがる。少し待ってくれ」


スミレは庭に仕掛けられた罠が想像以上にあることに驚愕する。
いずれもが高度に偽装化され、かつ効果的なものであった。


「これ、罠のプロが仕掛けてあるやつだぜ。トマスって野郎が自分でやったんじゃなくて雇って仕掛けさせたのだとしたら、かなりの金を使ってると思う。ゴウキだって、力づくで突破できたか・・・怪しいんじゃねぇか?」


スミレはブチブチとゴウキに言い聞かせながら、淡々と罠を解除していく。
罠のプロが仕掛けたものではあるが、スミレの知識の範疇の罠であったし、彼女の腕ならば解除はギリギリ可能であった。逆に言えば、この場にスミレがいなければ進撃は難航しただろう。


それほどの時間をかけることなく、スミレは罠を次々と無力化していく。
ゴウキは熱くなって勢いに乗って突入しそうになったことを恥じ、そしてスミレに感謝の気持ちを抱いた。

ゴウキには今、スミレに対して強い感情を抱いていた。
罠を解除する能力を持つ頼もしさからくる信頼もそうだが、何よりリノアが誘拐されたことで自分と変わらぬ怒りを持ってくれるスミレに、友情を越えたある感情を強く抱いていた。


「良し・・・これで多分・・・全部終わったぜ」


ゴウキはハッとして我に返る。
これでリノアのところへ突っ込める。

全部終わったら、これまで自分が後回しにしていた全てに蹴りをつけよう・・・そう考えていた。
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