『濁』なる俺は『清』なる幼馴染と決別する

はにわ

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賢者リノア

幼馴染に無関心

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「あー・・・ま、そのなんだ、お疲れさん」


ゴウキの発言を受け、しおしおになったリノアはフラフラと一人で拠点に帰ってきたが、いろいろな情報網から事の顛末を知っているスミレは、気まずそうに腫物を扱うようにそう言った。


「・・・いえ、まぁ、いろいろと段階をすっ飛ばしているのは事実ですし」


死んだような目で、口から魂が抜け出そうなほどヘロヘロになっているリノアは掠れた声でそう返す。
思わず一瞬気絶してしまうまでに超絶に持ち上げられてから、急に絶望の淵まで突き落とされたようなものなので、それなりにメンタル的にタフになってきたリノアとて今回ばかりは堪えた。

スミレはスミレでリノアの恋敵と言える立場であるので、なんと言って良いのかわからなかったが、それでも何か言葉をかけてあげたいくらいのはリノアは憔悴していた。



「・・・そういえば、幼馴染の男・・・トマスだっけ。アイツのことはもういいのか?」


スミレが思い出したかのように聞くと、リノアは「えっ」とキョトンとした後、あぁそういえばと思い出したかのようにハッとした表情になった。


「もういいも何も、トマスとは元から何も無かったようなものですし、本当にもうどうでもいいですよ」


今しがたゴウキと起きたことを考えれば、トマスとのことはリノアにとってもはや本当に微塵も気にかけるまでもないゴミのような事案だった。

過去は過去。今は今。
ゴウキ・ファミリーとしてそれなりに濃い日々を送っているリノアにしてみれば、王都に来るまでの思い出など本来振り返る機会すらないほどの取るに足らないものである。

リノアの反応を見て、スミレは小さく頷いてから言った。


「ふぅん・・・そんならいいんだけどよ。トマスってやつ、もしかしたら王都で犯罪に手をかけてかもしれねぇからさ。もしかしたら、近いうちに捕まる可能性もあるかなって」


「・・・犯罪?え、トマス何やってんだろ・・・?へぇ、そうなんですか」


スミレは独自の情報網でトマスが王都入りしてすぐに人を手にかけた情報を掴んでいた。
今の機能不全に陥った憲兵にトマスを逮捕する余力があるかは不明だが、それでもリノアの幼馴染の一大事なので一応は耳に入れておこうと思ってスミレは話した。

ショックを受けるかと心配したが、リノアは本当にどうでも良いようで、犯罪の詳細についてすら確認してこなかったことで、スミレは本当に彼女がトマスのことを振り切ったことを知って安堵した。
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