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賢者リノア
終わらせない男
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ゴウキが日和ってリノアへの態度を曖昧にしてしまった頃・・・
一人残されたトマスは、茫然とつっ立ったままリノア達が去った方向をただ見つめていた。
「・・・あれ?」
ここに来て、まだデニスは先ほどまでの出来事について正確に把握しきれていなかった。
リノアにフラれた。
新しい男が出来ていた。
入り込む余地は到底無さそうだった。
大きく分けてこの三つなのだが、そのいずれも放心のあまりトマスは理解できないでいたのだ。
「え・・・あれ?」
トマスは愚かにも考えていなかった。
ああまで徹底的にフラれる可能性について、微塵も考えていなかったのだ。
リノアは優しい性格だった。
だからトマスのことも、誠意を見せつけ続ければ最後には許して元鞘になるだろうと高をくくっていたのである。
しかし結果は違った。
完膚なきまでにトマスはフラれたのだ。
新しい男との仲睦まじさを、目の前でこれでもかというほど見せつけられたのだから、これ以上ないくらいのフラれっぷりと言えるだろう。
「嘘だろ・・・?リノア・・・」
時間をおいて、ようやくトマスは自分がもうどうしようもないレベルまで拒絶されていることを自覚した。
絶対に自分を最後には許してくれるという身勝手極まりない妄想は、ゴウキと何よりリノア自身の手で粉々に打ち砕かれたのだ。
その事実がトマスに与えたショックは非常に大きなものだった。
「おぅ、勘違い君。これでわかったろ?もう諦めな」
成り行きを見守っていたギャラリーが野次を飛ばす。
「ゴウキさんとは男としての格が違うんだよ。もう何があっても逆転することはないから、さっさと次行ったほうがいいぜ」
ギャラリー達はそう吐き捨てて、ゲラゲラ笑いながら解散していった。
残されたトマスは悔しさに表情を歪め、ただ俯き体を震わせる。
「・・・いいわけないだろう・・・こんなことがあって、いいわけないだろう」
これまで平身低頭、リノアに謝っていたトマスはどこへやら。
トマスの心に湧き上がるのは、身勝手に想像したリノア像に裏切られたことによる激しい怒りだった。
「これで終わると思うなよ」
一人残されたトマスは、茫然とつっ立ったままリノア達が去った方向をただ見つめていた。
「・・・あれ?」
ここに来て、まだデニスは先ほどまでの出来事について正確に把握しきれていなかった。
リノアにフラれた。
新しい男が出来ていた。
入り込む余地は到底無さそうだった。
大きく分けてこの三つなのだが、そのいずれも放心のあまりトマスは理解できないでいたのだ。
「え・・・あれ?」
トマスは愚かにも考えていなかった。
ああまで徹底的にフラれる可能性について、微塵も考えていなかったのだ。
リノアは優しい性格だった。
だからトマスのことも、誠意を見せつけ続ければ最後には許して元鞘になるだろうと高をくくっていたのである。
しかし結果は違った。
完膚なきまでにトマスはフラれたのだ。
新しい男との仲睦まじさを、目の前でこれでもかというほど見せつけられたのだから、これ以上ないくらいのフラれっぷりと言えるだろう。
「嘘だろ・・・?リノア・・・」
時間をおいて、ようやくトマスは自分がもうどうしようもないレベルまで拒絶されていることを自覚した。
絶対に自分を最後には許してくれるという身勝手極まりない妄想は、ゴウキと何よりリノア自身の手で粉々に打ち砕かれたのだ。
その事実がトマスに与えたショックは非常に大きなものだった。
「おぅ、勘違い君。これでわかったろ?もう諦めな」
成り行きを見守っていたギャラリーが野次を飛ばす。
「ゴウキさんとは男としての格が違うんだよ。もう何があっても逆転することはないから、さっさと次行ったほうがいいぜ」
ギャラリー達はそう吐き捨てて、ゲラゲラ笑いながら解散していった。
残されたトマスは悔しさに表情を歪め、ただ俯き体を震わせる。
「・・・いいわけないだろう・・・こんなことがあって、いいわけないだろう」
これまで平身低頭、リノアに謝っていたトマスはどこへやら。
トマスの心に湧き上がるのは、身勝手に想像したリノア像に裏切られたことによる激しい怒りだった。
「これで終わると思うなよ」
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