『濁』なる俺は『清』なる幼馴染と決別する

はにわ

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賢者リノア

リノアのカンスト

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ゴウキが登場したとき、リノアは絶望していた。
ついにゴウキにトマスといるところを見られてしまった!と。

リノアにとってトマスはゴウキに見せたくない過去の一つだった。
何しろまだ世間知らずだった頃の話で、口約束的なものだったとはいえ、彼は一応リノアの婚約者だった男だからだ。

懸想する相手に元婚約者を見られたくないリノアは、ゴウキに知られる前にどうにか穏便にトマスを排除したいと考えていたのだが、当のゴウキにトマスと会っているところに出くわしてしまうという最悪の事態に直面してしまった。

いや、むしろこれまでが良くそういった状況にならなかったと考えるべきであろう。その頃はリノアもわかっていた。

だからゴウキの姿を最初に見つけたとき、リノアは「あぁ、こんなことなら多少リスクを負ってでもトマスを力づくでどうにかしておくんだった」と己の迂闊さを嘆く。

そして混乱している最中でも、リノアは考えた。
今からでもゴウキにわからないようなやり方で、トマスを排除できないかと。

突然突風が吹き荒れて都合良くトマスだけ吹き飛んだことにしようか?とか、自然発火でトマスが突然燃え出す、とか・・・などと唐突な修羅場に思考もテンパっていたリノアだったが、事態は彼女が想像だにしていなかった局面へと動き出す。


「え・・・?」


リノアは最初、ゴウキが何を言ったのか理解できなかった。
いや、正確には何を言ったのかはわかっているが、その意味を理解するまでに時間を要してしまう。
それほどにゴウキが発した言葉が彼女の思考の枠を超えたものだったからだ。


「な・・・何だって?今、何て言った?」


リノアも聞きたい一言は、皮肉にもトマスが代弁した。
トマスとてゴウキの放った言葉は想定の外を行くものだったからだ。


「あぁ?言ってる意味がわからねぇか?ならもっかい言うわ」



「えっ?」


ゴウキは呆けるリノアの肩をグッと抱き寄せると、もう一度、はっきりと言い放つ。


「リノアは俺の女だ。これ以上手を出すようなら、俺が容赦しねぇ」


ぽーっとゴウキの顔を見つめたまま固まっていたが、やがて言葉の内容を時間差で理解すると、リノアは歓喜のあまり感情ゲージが振り切ってしまい、「あっ」と甘い声を上げて失神してしまった。
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