『濁』なる俺は『清』なる幼馴染と決別する

はにわ

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賢者リノア

猛獣と蛮勇

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ゴウキに肩を掴まれたトマスは戦慄した。


(こ、こいつは・・・!)


トマスはすぐにわかった。
相手が恋敵である「ゴウキ」であることに。


(なるほど、調べていた通り、コイツはとんでもない化け物かもしれない・・・)


まるで猛獣を目の前にしたかのような威圧感を、トマスは全身でピリピリと感じていた。
本来ならば関わってはいけないような部類の人間・・・だが、トマスは今の自分に全能感を感じてしまっていた。
愛のために動いている自分は、全ての障害の乗り越える必要があると、そして自分にはその力があると。


「誰だい?君は」


トマスは落ち着いた声で言った。
「ほぅ」とギャラリーが感嘆の声を上げる。圧倒的な圧を放つゴウキに正面から睨まれて、竦み上がらずに堂々と返答できるなど、そこそこ度胸がないと出来ないことだ。
あるいは相当な馬鹿か・・・だが。


「俺はゴウキってんだ。そんなことより、最近リノアにちょっかい出してくれてるみたいじゃねぇか」


普段から凄みのある物言いをすることがあるゴウキだが、今回ばかりは意識してそうしていた。
遠巻きに見ているギャラリーですら「おぉ・・・」と若干引き気味になっている。ゴウキが怒っていることが、彼の物言いとオーラから伝わってきているのだ。


「しつこい男は嫌われるぜ?そろそろいい加減にしときな」


そう言ってゴウキは、ぐいっと力づくでトマスの体をリノアから遠ざける。
だが、蛮勇も行くところまで行っているのか、トマスもまるで引く様子はない。


「僕とリノアの問題だ。君には関係ないだろう?君こそ他人事に頭を突っ込むのはどうかと思うが」


あくまで食ってかかるトマス。


「あいつは馬鹿だ」


周囲のギャラリーの誰かがボソッと言った。
ゴウキにここまで食って掛かることもそうだが、ゴウキは特に仲間の問題に対して熱くなりやすい。
それをスミレが襲われた一件で知っている連中は、リノアに絡むこの愚か者がこうまで粘着する以上、この後にどんな悲惨な目に遭うかを考えると身震いがする思いだった。


「他人事じゃねぇんだよな」


だがトマスに触発されて熱くなってか、この時のゴウキは手よりも口が出た。
そう、思わず口が出た。出てしまった。


「リノアは俺の女なんでな。手を出すというのなら、タダじゃ済まさねぇ」
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