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賢者リノア

ストーカー

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「やぁ、リノア!」


ギルドを追い出されて以来、大人しくなると思われたトマスだったが・・・
残念なことにそんなことにはならなかった。

彼はフォースギルドに出入りするリノアを見つけては、毎日花束を手にやってくるようになったのである。


「ごめんよリノア。ずっと僕が寂しい思いをさせてきてしまったから、傷ついてしまっていたんだね。だから僕は、これからどれだけ君に詰られようと、君の心が癒えて許してくれるまではこうして花を送り続けるよ」


「いや・・・普通に迷惑なんですけど」


絶対零度の瞳でリノアに見つめられそう言われながらも、トマスは残念なことに全く堪えることはなかった。
リノアの心が深く傷つき、トマスを拒絶するようになった・・・だから、彼女の心が癒えるまで許しを乞う、そんなトマスの独りよがりの考えは半分までしか当たっていない。

確かにリノアの心はトマスが文通を途絶えさせたのが要因となって傷ついた。
だが、その傷ついたことで空いた心の隙間は、ゴウキという存在によってとっくに癒えているのだ。
むしろリノアの心はゴウキのよって「ニュー・リノア」になったことで、以前とは比較にならぬほど軽くなっていると言っていい。

こうなるとむしろトマスと関わっていた時期のことなど忘れていたいといった状況であり・・・というか忘れていた。
そんな過去の亡霊がいきなり現れて、リノアに関係を迫るというのは迷惑でしかないだろう。

いや、迷惑どころではない・・・このことがゴウキに知られることをリノアは物凄く懸念していた。
盲目だった頃の過ちとはいえ、ゴウキ以外の男と婚約を結んだなどと、そんな黒歴史など絶対に知られたくはなかったのだ。


だからリノアは力づくで排除して騒ぎにしないようにと、円満にトマスに離れてもらうように苦心した。
しかし・・・


「リノア。もう間違えないよ。何日だって、何年だって待つ。だからいつか僕を許してほしい。君を愛しているんだ」


囁かれたくない相手に、リノアは毎日愛を囁かれる責め苦を味わうことになる。
そんなことが毎日往来で行われてきて、噂にならないわけがない。


やがてリノアの懸念していたことが実際に起きるという、最悪の事態を巻き起こすこととなってしまった。
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