『濁』なる俺は『清』なる幼馴染と決別する

はにわ

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賢者リノア

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トマスは勉強が嫌いではない。
女性には不真面目な性格であるが、自分が興味を持った分野に関しては、寝食を惜しんで研究に没頭する一面を持っている。

今のトマスはリノアを確実に手に入れ、連れ戻すことを目的としていた。
そのため、トマスはじっくりと時間をかけてゴウキ・ファミリーについて調べ上げていた。


「ゴウキは異様に勘が良く、身体能力に優れている」


「スミレは胸は小さく、口は悪いが非常に優れたニンジャ。超一流の盗賊や斥候に引けを取らない能力・・・か」


「デニスは並外れた剣豪。剣を振るうときは五月蠅くなる。なんだそりゃ・・・?けど、それだけだね。これならゴウキとそれほどタイプとしては変わらないかも」


今、ゴウキ・ファミリーは多くのメンバーを揃えて王都の治安維持に貢献しているが、ほとんどは舎弟のようなもの。メインはあくまでリノアを含めた四人であることは簡単に突き止めた。
そして、そのメインメンバーについてもしっかりと研究を重ねる。


「そして・・・リノア。前情報の通り、本当に賢者になったみたいだ。良かったね・・・君の願いが叶ったじゃないか・・・」


トマスは目を細めて資料を見つめる。
その目には純粋な愛しみの色があり、今のトマスには本当にリノアへの愛情があるのが見て取れるほどだった。
とはいえ、それは実に身勝手な感情である。
自分に残された最後の女がリノアであり、しかもその彼女が偉業を成し遂げたことで価値を見出し、気持ちを入れ込むようになっただけに過ぎない。


「これなら、すぐにでも村に戻って僕と結婚することができるね。待ってなよリノア」


トマスはリノアの気持ちなど全く考えていない。故に確かめるつもりもない。
あくまで彼女の心は今も自分に向いていると思っている。頑なに思い込んでしまっている。
自分が迎えに行けば、リノアは喜んで受け入れてくれると信じているのだ。

障害があるとすれば、それはゴウキの存在。
ゴウキが無理矢理にリノアに言う事を聞かせているというのであれば、それをどうにか排除・・・もしくは、妨害が入る前に決着をつけなければとトマスは考えていた。


「やはり・・・最悪は多少手荒くなっちゃうかな・・・すんなりいくのが一番いいんだけどなぁ」


トマスは借りている宿屋の一室でいろいろと魔道具を作りながら、ぼそりと呟く。

今、身勝手な愛を拗らせたトマスが行動をしようとしていた。
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