442 / 508
賢者リノア
下準備
しおりを挟む
トマスは勉強が嫌いではない。
女性には不真面目な性格であるが、自分が興味を持った分野に関しては、寝食を惜しんで研究に没頭する一面を持っている。
今のトマスはリノアを確実に手に入れ、連れ戻すことを目的としていた。
そのため、トマスはじっくりと時間をかけてゴウキ・ファミリーについて調べ上げていた。
「ゴウキは異様に勘が良く、身体能力に優れている」
「スミレは胸は小さく、口は悪いが非常に優れたニンジャ。超一流の盗賊や斥候に引けを取らない能力・・・か」
「デニスは並外れた剣豪。剣を振るうときは五月蠅くなる。なんだそりゃ・・・?けど、それだけだね。これならゴウキとそれほどタイプとしては変わらないかも」
今、ゴウキ・ファミリーは多くのメンバーを揃えて王都の治安維持に貢献しているが、ほとんどは舎弟のようなもの。メインはあくまでリノアを含めた四人であることは簡単に突き止めた。
そして、そのメインメンバーについてもしっかりと研究を重ねる。
「そして・・・リノア。前情報の通り、本当に賢者になったみたいだ。良かったね・・・君の願いが叶ったじゃないか・・・」
トマスは目を細めて資料を見つめる。
その目には純粋な愛しみの色があり、今のトマスには本当にリノアへの愛情があるのが見て取れるほどだった。
とはいえ、それは実に身勝手な感情である。
自分に残された最後の女がリノアであり、しかもその彼女が偉業を成し遂げたことで価値を見出し、気持ちを入れ込むようになっただけに過ぎない。
「これなら、すぐにでも村に戻って僕と結婚することができるね。待ってなよリノア」
トマスはリノアの気持ちなど全く考えていない。故に確かめるつもりもない。
あくまで彼女の心は今も自分に向いていると思っている。頑なに思い込んでしまっている。
自分が迎えに行けば、リノアは喜んで受け入れてくれると信じているのだ。
障害があるとすれば、それはゴウキの存在。
ゴウキが無理矢理にリノアに言う事を聞かせているというのであれば、それをどうにか排除・・・もしくは、妨害が入る前に決着をつけなければとトマスは考えていた。
「やはり・・・最悪は多少手荒くなっちゃうかな・・・すんなりいくのが一番いいんだけどなぁ」
トマスは借りている宿屋の一室でいろいろと魔道具を作りながら、ぼそりと呟く。
今、身勝手な愛を拗らせたトマスが行動をしようとしていた。
女性には不真面目な性格であるが、自分が興味を持った分野に関しては、寝食を惜しんで研究に没頭する一面を持っている。
今のトマスはリノアを確実に手に入れ、連れ戻すことを目的としていた。
そのため、トマスはじっくりと時間をかけてゴウキ・ファミリーについて調べ上げていた。
「ゴウキは異様に勘が良く、身体能力に優れている」
「スミレは胸は小さく、口は悪いが非常に優れたニンジャ。超一流の盗賊や斥候に引けを取らない能力・・・か」
「デニスは並外れた剣豪。剣を振るうときは五月蠅くなる。なんだそりゃ・・・?けど、それだけだね。これならゴウキとそれほどタイプとしては変わらないかも」
今、ゴウキ・ファミリーは多くのメンバーを揃えて王都の治安維持に貢献しているが、ほとんどは舎弟のようなもの。メインはあくまでリノアを含めた四人であることは簡単に突き止めた。
そして、そのメインメンバーについてもしっかりと研究を重ねる。
「そして・・・リノア。前情報の通り、本当に賢者になったみたいだ。良かったね・・・君の願いが叶ったじゃないか・・・」
トマスは目を細めて資料を見つめる。
その目には純粋な愛しみの色があり、今のトマスには本当にリノアへの愛情があるのが見て取れるほどだった。
とはいえ、それは実に身勝手な感情である。
自分に残された最後の女がリノアであり、しかもその彼女が偉業を成し遂げたことで価値を見出し、気持ちを入れ込むようになっただけに過ぎない。
「これなら、すぐにでも村に戻って僕と結婚することができるね。待ってなよリノア」
トマスはリノアの気持ちなど全く考えていない。故に確かめるつもりもない。
あくまで彼女の心は今も自分に向いていると思っている。頑なに思い込んでしまっている。
自分が迎えに行けば、リノアは喜んで受け入れてくれると信じているのだ。
障害があるとすれば、それはゴウキの存在。
ゴウキが無理矢理にリノアに言う事を聞かせているというのであれば、それをどうにか排除・・・もしくは、妨害が入る前に決着をつけなければとトマスは考えていた。
「やはり・・・最悪は多少手荒くなっちゃうかな・・・すんなりいくのが一番いいんだけどなぁ」
トマスは借りている宿屋の一室でいろいろと魔道具を作りながら、ぼそりと呟く。
今、身勝手な愛を拗らせたトマスが行動をしようとしていた。
0
お気に入りに追加
307
あなたにおすすめの小説

冤罪だと誰も信じてくれず追い詰められた僕、濡れ衣が明るみになったけど今更仲直りなんてできない
一本橋
恋愛
女子の体操着を盗んだという身に覚えのない罪を着せられ、僕は皆の信頼を失った。
クラスメイトからは日常的に罵倒を浴びせられ、向けられるのは蔑みの目。
さらに、信じていた初恋だった女友達でさえ僕を見限った。
両親からは拒絶され、姉からもいないものと扱われる日々。
……だが、転機は訪れる。冤罪だった事が明かになったのだ。
それを機に、今まで僕を蔑ろに扱った人達から次々と謝罪の声が。
皆は僕と関係を戻したいみたいだけど、今更仲直りなんてできない。
※小説家になろう、カクヨムと同時に投稿しています。

【完結】魔王を倒してスキルを失ったら「用済み」と国を追放された勇者、数年後に里帰りしてみると既に祖国が滅んでいた
きなこもちこ
ファンタジー
🌟某小説投稿サイトにて月間3位(異ファン)獲得しました!
「勇者カナタよ、お前はもう用済みだ。この国から追放する」
魔王討伐後一年振りに目を覚ますと、突然王にそう告げられた。
魔王を倒したことで、俺は「勇者」のスキルを失っていた。
信頼していたパーティメンバーには蔑まれ、二度と国の土を踏まないように察知魔法までかけられた。
悔しさをバネに隣国で再起すること十数年……俺は結婚して妻子を持ち、大臣にまで昇り詰めた。
かつてのパーティメンバー達に「スキルが無くても幸せになった姿」を見せるため、里帰りした俺は……祖国の惨状を目にすることになる。
※ハピエン・善人しか書いたことのない作者が、「追放」をテーマにして実験的に書いてみた作品です。普段の作風とは異なります。
※小説家になろう、カクヨムさんで同一名義にて掲載予定です
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった
ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます!
僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか?
『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です

僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた
黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。
その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。
曖昧なのには理由があった。
『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。
どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。
※小説家になろうにも随時転載中。
レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。
それでも皆はレンが勇者だと思っていた。
突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。
はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。
ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。
※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。

Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!
仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。
しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。
そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。
一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった!
これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる