『濁』なる俺は『清』なる幼馴染と決別する

はにわ

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賢者リノア

トマス、王都に立つ

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トマスは王都に近づくにつれ、ゴウキについてより精度の高い情報に触れるようになった。
その内容は、基本的にはゴウキの武勇伝である。

どのような凶悪な魔物も素手で叩き伏せ、その戦いっぷりも容赦がなく、どちらが魔物がわからなくなるレベルのものだとトマスには伝わった。
だが、トマスはその情報から「乱暴な性格」「情け容赦ない」「倫理観などない」と彼の内面についてそう解釈をした。

実際噂のほとんどはそういった脚色があるのは確かだった。セントラルギルドが展開しているゴウキ・ファミリーのネガティブキャンペーンが、こうしたところで地味に作用していたのだ。


「これはもうなんとしてもリノアを連れ戻さないとな」


少々過剰なゴウキのネガティブキャンペーンだったが、元よりトマスはゴウキという人間に対して「リノアを強引に縛り付けている」という思い込みを抱いていたので噂をそのまま信じた。むしろトマスが考えていたゴウキ像を裏付けることになってしまってもいた。


「リノア・・・早く帰って、結婚しよう・・・」


もっとも、もしゴウキの人格に問題がないという判断をしたとしても、今の男として追い詰められたトマスでは何かしら歪んだ解釈をしてリノアを連れ出そうとしそうなものだったが。






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そして、トマスはようやく乗り合い馬車を乗り継いで王都へ到着した。
トマスが勉強していた町は流通の拠点だけあってかなりの大きさで華やかだったが、王都は別の意味で壮大な印象を受けた。トマスがいた町は商人や学生が多かったが、王都では冒険者が多い。一言で言えば、どことなく物々しい雰囲気があるとトマスは感じた。


「待て!貴様ら!!」


歩いていると、憲兵が犯罪者らしき者を追いかけているのが目に入る。
王都は今、憲兵やギルドの混乱により治安が一時的に悪くなっている箇所があるのだが、トマスはまさにそこに足を踏み入れていた。


(治安が悪いところだ・・・こんなところにいたなんて、リノアは大丈夫なのか?)


そう心配しながら、人通りの少ないところを歩いていた時だった。


「おぅ、待てよ兄ちゃん。ちょっと俺達に恵んでくれねぇか?」


治安の悪い王都に不慣れなトマスは、ガラの悪いゴロツキ共の屯しているエリアに踏み入ってしまい、絡まれることになった。
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